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1 後継者

右手に付けた腕時計を見ると針は夜中の11時を指していた。博士が住んでいたアパートの居室は彼の丁寧な性格を表すかのようにきれいに整頓されていた。葬儀の後、涼介に場所を教えてもらって訪れたのだった。もちろん、博士を殺害した犯人を特定するのに役立つ物品を探すためだ。


部屋を回っているとリビングに凹の字を上下逆さまにしたかのような棚を見つけた。そのへこんだ部分にはテレビが置いてあった。棚の上には複数の写真立てがあった。近寄って覗いてみる。写真には笑顔の博士が移っていた。1人のものもあれば、正晴の知らない誰かとのツーショットもある。


ふと、写真の一枚に目が止まった。どこかの室内、木製のデスクの前でほとんど少年といってもいいほど若い博士と中年の男性が2人とも笑顔で立っている。この人には見覚えがある。僕の父さんだ。死ぬ間際に博士が語ったことは本当だったのか。


棚の前にあったソファーに横たわった。博士が僕にやたらとこだわっていた理由がやっと分かった。あの人は僕を後継者にしようとしていたのだ。もちろん、本人の意思はきちんと尊重した上で。少し前の正晴なら断っていただろう。しかし、博士亡き今、大きな決断を迫られている。


どちらにせよ、博士を殺した犯人を見つけるという決意は変わらなかった。思い出すんだ。僕は犯人をこの目で見たんだぞ。銃撃犯は頭頂部からつま先まで黒色の衣類で覆っていたため、人相や人種は分からなかった。


尤も、相手の身体的な特徴は覚えている。身長は正晴より少し低いくらい、肥満でもなく痩せ型でもない体型だった。他に何か思い出せないか?そうだ。犯人は拳銃を右手で握っていた。ということは右利きの可能性があるということだ。


ソファーの上で寝返りを打つ。それはともかく、犯人がこの街で発生していた連続殺人事件と同一人物である可能性は高い。凶器が同じ拳銃だからか。博士を殺した銃の口径と他の被害者におけるそれを比べればいいのだろうが、どうやってそれを入手するか。涼介にでも頼もうか。


もう少し思索を深めると様々なことが推測できた。そもそも、銃撃犯はどうして博士を殺したのか。自身の正体が暴かれるのをおそれたのか?ということは犯人は連続殺人の捜査に博士が関わっているのを何らかの方法で知っていたということになる。


お読みいただきありがとうございます。正晴の師匠的な存在であった博士が死に、今回から正晴が探偵として本格的に活躍していきます。ご感想。ご質問等がございましたらお気軽に作者まで送ってください。

お知らせ。今回から一話ごとに数字だけでなくタイトルも付けたいと思います。

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