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「とにかく、もっと深く調べないと結論は出ない。藤崎君、出来ればそちら側の捜査の進捗を教えてもらいたい。」
「署に来てもらった方が手っ取り早い。丁度、今捜査員がだいぶ出払っている頃だしな。」
「ありがたい。では行こう。」
正晴としては家屋窃盗事件の際に警察署を宿代わりに使わせてもらった苦々しい記憶がよみがえった。
20分後、3人は警察署の前で車を降りた。以前見たときと同じく年季が入り派手さが微塵も無い白色の建物だ。入り口に1人の女性が立っていて3人に笑顔を向けた。涼介が右手で彼女を指し示した。
「紹介しよう。我々の捜査チームの一員、北村望だ。」
見た感じショートカットでスタイルもよく美人という訳ではないが整った顔立ちをしている。絵に描いたような女性警官だ。正晴は流石に尋ねはしなかったが20代後半からどんなに年を食っていても30代前半だと推し量った。
博士が前に出て握手をした。
「お久しぶりです。最後に会ったのは2年前でしたね。」
「はい。あのときの雨島さんの捜査は未だに忘れていませんよ。またお会いできて光栄です。」
「僕にはもったいないお言葉です。ところで」
博士は声のボリュームを近くの正晴と涼介が聞こえないくらいに落とした。
「涼介君と仕事をするのは辛いことでしょう。」
望はいたずらっぽく笑い返した。
握っていた手を離した望は正晴の方に顔を向けた。
「初めまして。透望正晴です。」
先に挨拶をした。
「以前、自宅を盗まれたんですよ。」
「思い出したわ。犯人を自力で見つけ出したのよね。」
「はい。」
「ところで、一体なぜ雨島さんと一緒にいるのか教えてもらってもいいかしら。」
「複雑な話じゃありません。あの人のバイトになったんですよ。」
「雨島さんは良い助手をもったものね。」
望から微笑みを向けられて思わず口角が上がりそうになってしまった。
「おい、そろそろ中に入ってもいいか。」
涼介が話を切り上げた。
捜査室は3階にあった。おそらく元は会議室かなにかだったのだろう。部屋に入った時、涼介の言ったように人は殆ど出払っており2人の私服警官が部屋の真ん中に置かれた長机に腰掛けプリントの束をめくっていた。
長机の一方の端、部屋の東に面した側に1台のホワイトボードが置いてあった。テレビドラマなどで見るように関係者達の顔写真が磁石で貼り付けてありそれぞれがマーカーで引かれた線で結ばれている。
ボードの真ん中に被害者の松下の写真が貼ってあった。見た限り平凡な41歳の中年女性だ。正晴の母の少し年下くらいの年齢だ。
ホワイトボードを横に涼介が話を始めた。
「これは松下の人間関係を表した図だが皆周知のようにこの中に犯人が存在する確率は低い。全員被害者との間で重大なトラブルを抱えていた形跡がないからな。」
「本当にそうか?」
博士が疑問を挟む。
「もしも松下のことを恨んでいる人間がいるのなら彼のことだろうな。」
全員の視線が涼介の指の先に向かった。そこには1人の中年男性の顔写真があった。
「誰だ?」
「松下の元婚約者だ。過去にゴタゴタあったらしい。だが殺意があるかと言われると...どうかな。」
「聞き込みは?」
「もうやったさ。だが彼にはアリバイがある、犯行当時はぐっすり寝ていたらしい。」
正晴が顔を上げるともう外は暗くなってしまっていた。だが彼は興奮もしていた。望んでもこういう状況に遭える訳では無い。
「出来れば捜査資料をコピーでいいから一通り僕にもらえないかな。」
「もちろんだ。そう言うと思って既に用意してあるぞ。」
博士は感謝の言葉を述べた。
「熱が入ってる所申し訳ありませんが雨島さんに透望君も、もう遅いですし帰ってはどうでしょうか。」
望に合わせて正晴も頷いた。
「そうだな。この件は事務所に戻ってじっくり考えた方が良いな。」
投稿遅れてしまい申し訳ありません!
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