連続UFO誘拐事件
こんにちは透雨小黒です。はじめましてという言い方は正しくありません。なぜなら私がこのアカウントで投稿する小説としてはこれが最初ですが以前も別のアカウントで作品を投稿していたからです。
それはそうとこれを第一話としてシリーズものの小説を連載していく予定ですのでお付き合いしていただければ幸いです。飽き性ではありますができるところまで頑張ります!
朝、学校でその恐ろしい知らせを聞いたとき透望正晴は具合が悪くなった。
一週間ほど前から耳にしていた高校生の連続行方不明事件。まさか友人の広谷祐までもが行方不明になってしまうとは。
午前中の授業が終わり昼休みになると教室に少女が入ってきて正晴の隣にやってきた。
なんてことはない、正晴の幼なじみの金沢明子金沢明子だ。「祐君のこと聞いたわ。なんだか最近治安が悪くなってるみたい。」
「全くだ。まあこれまで行方不明になった7人が遺体で見つかっていないだけマシだね。」彼は答えた。「みんなはUFOにさらわれたんじゃないかって言ってるけど。」正晴は顔をしかめた。最近、行方不明事件と並行して正体不明の飛行物体、つまりUFOの目撃が街で多発しているのは事実だがそんな戯言とより現実的で深刻な事件を不合理にも結びつけないでほしい。そのとき明子がスマホを取り出し正晴に見せつけてきた。「なるほど、それか。」動画のようだ。おそらく夕方、薄暗い空を背景にして赤い不気味な光点が飛び回っている。「誰が撮影したんだ?」「友達の部活の先輩。学校からの帰り際に撮ったって。」
放課後、安全のため生徒はいつもより早く帰らせられた。といっても正晴は部活などには入っていないのでいつもと変わらない。
実はあと一週間後には大学入試の結果を左右するほどの大事な模試が控えている。だから皮肉にも行方不明事件の多発により学校を早々と下校せざるを得なくなったことで生徒はより多くの勉強時間を持つことが出来るようになった。とはいえ、やはり祐の行方は気がかりだ。友達がそう多くない正晴と気の合う友人だった。自室で椅子に座って机に向かいながら彼は思索を深めた。
事件の始まり、つまり一番最初にいなくなったのは誰だ?確か3年生の男子だった気がする。その次は誰だろう。明子に訪ねることが望ましい。あいつは僕よりもいろんな人の知り合い、あるいは友人だからな。通信アプリで明子宛にテキストを送信すると少しして返事が来た。これで7人分のリストを入手できたことになる。行方不明者のうちほとんどが正晴と同じ2年から3年だ。そのなかで3年が4人と飛び抜けて多い。残り2人が2年で1人が1年だ。そのとき正晴は何か落ち着かない気分になった。すぐにこれは彼の直感が告げる違和感だと気づいた。傍の引き出しからプリントされた用紙を取り出す。携帯の画面と紙面を見比べる。その用紙は以前の模試の成績上位者名簿だ。思わぬことに行方不明になった生徒達のほとんどが学校の中でも特に成績のよい者達だったのだ。もちろん祐もだ。
さらに例のUFO事件も気になる。UFOが目撃され始めたのは行方不明事件が始まるよりさらに前、具体的には今から二週間ぐらい前だ。UFOの外見はどれも同じく光点で色は赤や青などバリエーションがある。
もちろん正晴は冷ややかな目で事態を見つめていた。しかしただの下らない与太話として片付けるわけにもいかなかった。UFOが目撃されたのは大抵夕方、さらに目撃者は高校生が多い。そして前述のようにUFOと並行して生徒が行方不明になり始めた。このことからUFOと行方不明事件が何か関係していると正晴は考えた。
しかしその日はそれ以上考えずいつも通りの日課に戻った。
翌日の放課後、正晴は明子と帰っていた。「昨日はお前の送ってくれたメッセージのおかげで思索がはかどったよ。」すると明子が笑顔で正晴の顔を見つめて言った。「そういえばさ、昨日、思い出したんだけど例の7人、確か5人くらいが同じ塾に通ってたらしいよ。」正晴は思わず目を見張った。
「それは何てとこだ?」返ってきた説明は祐も通っている難関校向けの塾に関する説明だった。
「みんな戻ってくるかもしれないぞ!」聞き終えた後、正晴は声を大きくして言った。
街の校外、すっかり日が沈んでしまいあたりは真っ暗だ。広谷祐は誰もいない空き地の真ん中で手に持った箱を地面に置いた。箱の蓋を開けた時、不意に誰かから肩を掴まれた。思わず叫んで飛び跳ねた。
しかし相手の正体が分かると動悸もほんの少し落ち着いた。
「正晴か?どうしてお前に俺の場所が分かった。」「いや、僕はただ向こうを突き止めただけでお前を見つけたのはただの偶然さ。」正晴の指はすぐ近くの廃ビルを指してあった。今は暗闇の中でおぼろげにシルエットだけが浮かび上がっている。「塾長の後を尾行したんだ。」正晴は祐の足下の箱を見つめた。「なるほど。これがUFOの正体か。」箱の中にはマルチコプターのドローンが収まっていた。祐は頭を押さえた。
「お前、どうやって見抜いた?」
「消えた生徒の詳細を見たらすぐに全員が好成績だと分かった。しかも2年、3年の割合がなぜか高い。さらに祐、お前も含めてその多くが同じ塾に通っていた。これは誰が見ても怪しいだろう。
ところで今から一週間後には大事な模試が控えている。こう言ったら不謹慎だが事件のおかげで僕たち生徒は勉強時間を普段より確保できた。でも一番時間を持てたのは行方不明になった奴らじゃないか。」
落ち着いたはずの祐の動悸がまた上昇し始めた。
「結論を言わせてもらうとお前達、成績のために失踪をでっち上げたな。そしてUFOのせいにしようとしたんだ。」
祐はもう観念した様子だった。
「そうだよ。確か最初に思いついたのは同じ塾に通っている3年の先輩だった。俺がドローンを持ってるってことに目を付けてさ。面白いと思ってやったんだ。でも考えてもいなかったことにみんなあれが本物だと騒いだんだ。おかげで他の可能性を考えなかった。後は塾長の手引きであそこの廃ビルに隠れて、模試の勉強に勤しんだ。俺が一番最後だったけどね。」
「それで模試が始まる前日に姿を現してUFOに連れ去られたと言うつもりだったんだな。しかもよくあるパターンで失踪中の記憶が無いなどと主張するつもりだったんだろう。」
正晴は一呼吸置いた。
「なあ、祐、できれば他のやつも連れて表に出ないか、親も心配してるしこれ以上失踪が続くとさらに事態が深刻になりかねないぞ。」
「ちょっと待ってくれよ。模試の結果は本当に大事なんだ。お前だって少しは分かるだろ。もう二度とこんなことはしない。今回だけだからどうか黙っていてくれないか。」
確かに祐は努力家でこれまで学業に力を尽くして頑張ってきた。その努力は当然報われるべきだ。
だがこのように失踪を仕組むというのはやり過ぎだとも思う。しかし正晴は友人の言葉を信じることにした。全く、僕もずいぶんと不真面目な人間だ。
結局、模試が実施される2日前にすべての生徒が郊外の田園地帯で発見された。戻ってきたという言い方の方が正しかった。本人達の思惑通り全員が模試で良い成績をとった。正晴は友人が幸せそうだったのでそれでいいとした。
最後までお読みいただきありがとうございます。なるべくコンパクトに話をまとめようと思ったのですが字数が多くなってしまいました。まあそれでも短いと思いますが。
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