②導かれし者は西へ向かう
「魔王軍………本当に魔王が復活したのなら、この国を本気で攻めるはずがないわ。母が言っていた事を信じるならば、魔王はこの国を………ウィンフォス王国を愛していたのだから」
フォースィは一つ前の本に手を伸ばす。そこにはまだ魔王となる前の人間と思われる事について書かれている。名前は伏せられているが、焦点を合わせて読み込んでいけば、その者の事であろうという真実がいくつも記されていた。
「魔王………その存在に担ぎ出された謎の人間………」
彼か、それとも彼女か。性別すら分かっていない存在。フォースィはその存在をずっと追いかけていた。
「それにしても、本の依頼といい、騎士団内部の権力争いといい、余りにも事件が重なり過ぎているのね………これは偶然?」
フォースィは、これらが一つに繋がる可能性を捨てきれずにいた。
魔王軍と魔王、そして王国の内部で何が起きているのか。フォースィは少ない情報を頼りに自分のすべき事を考えながら元来た道を上がっていった。
「まずは、あの子と合流しないと」
あの戦いで別れてしまった少女。だが、必要な物資や食料、そして移動手段。最低限調達する物だけでも、手持ちの路銀だけでは足りない。
フォースィはデルの言葉を思い出し、息を吐く。
「しばらくは、冒険者として働くしかなさそうね」
目指すは西。ゲンテの街、そして大都市ブレイダスへと続く。元来た道を戻る事もあるが、歩く先は未来へと続いている。
そう彼女は、信じてこの百数十年を生きてきたのである。
to be continued 第三部 紅と蒼 に続く




