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Lost19 銀龍の正義  作者: JHST
最終章 勝利か死か
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⑨事後処理

「まずは街の物資を全て破棄する」

 デルは小休止を終えた騎士達に敵が残していった物資、そして元々この街にあった物資を処分し、再度攻めてきた敵に補給を行わせないよう対処する必要があった。最も効率的な事は街そのものを破壊してしまう方法だが、今のデル達にそれを実行するだけの力がない。


 デルは保存のきく物資や食料、医薬品等を街に残っていた馬車に積み込ませると、洞窟の入口へ運ぶよう騎士達に指示する。

「敵はしばらくここに戻ってこない。バルデック、先行して馬車と共に二名程馬に乗せて洞窟に戻らせろ。集落で待機しているフェルラント達に状況の報告と可能であれば荷物運搬の応援を要請してくれ」

「分かりました」

 バルデックは走り出した。


「食料と医薬品、予備の武具を中心に持っていく。敵が再びここを占領しても、得る物が何もない空城にしておくんだ」

 デルは東西南北の大通りが交差する中央に立ち、物資を分別する騎士や馬車に積み込む騎士達に、声を上げる。


「団長! 領主の城に大量の金品が見つかりましたが………いかがしましょうか」

 栄えある王国騎士団が火事場泥棒の真似事かと、報告してきた騎士が一緒に来た他の騎士に小突かれていたが、それを余所にデルは顎に手を当てたまま真剣に考えていた。

「そうだな、金貨と銀貨だけ持っていく………馬鹿者、変な顔をするんじゃない。あくまでも領主の財産の一時保護だ。それと騎士団の屯所の貨幣は有効活用させてもらう。混ざらないように運んでおけ………馬鹿! フリじゃないぞ!」

 貴族達はお金と地位に人生を賭ける程にこだわる習性がある。しかもここは金竜騎士団に所属する貴族が管轄している土地。後々街を奪還しておいて、貴族の金品を放置したと難癖をつけられては堪らない。

逆にある程度保管しておけば、いくらでも後で弁解が出来る。恩が売れれば儲けものである。


「団長」

 指示を出し終えたバルデックが戻って来た。

「領主の館に布陣図らしき紙を、騎士達が見つけてきました」

 これです、と持っていた大きい巻紙を広げて見せる。書かれた文字を読む事ができない時点で、魔王軍の資料だと証明できた。そして文字の配列と模様から、デル達には騎士団の本隊と戦う敵の本隊の布陣だと想像できた。

「いいぞ。他にも奴らが残した資料が残っていないか調べてくれ」

「分かりました」

 バルデックは近くにいた騎士に声をかけ、領主の館を再度調べるよう指示する。


 騎士達が慌ただしく動く中、傍に立つバルデックが布陣図を眺めているデルに小声で尋ねた。

「これから、どうなさるのですか? 申し訳にくいのですが、この数では―――」

 銀龍騎士団は壊滅。奪還した街を守る力もなく、王都に戻ろうにも行く先には敵の本隊が待ち受けている。このまま例の集落に戻って、態勢を整える事しか思いつかないとバルデックは心の不安を明かした。

 しかし、それは同時に騎士団の本隊の危機を放置する事を意味する。


 先程の布陣に書かれていた読めない文字の集まりを見るに、77柱と呼ばれる別次元の力を持った魔物が少なくとも十体以上いる計算になる。魔王軍とその核となる77柱の存在を知らないまま騎士団の本隊は戦う事になれば、初手で大きな損害を受ける事はほぼ確定する。

 バルデックは自分達にできる事と本隊への心配を天秤にかけ、どちらにも見捨てる事ができないとデルに打ち明けた。


「………どちらも見捨てるつもりはない」

 デルは腕を組んだまま、地平線から上がる太陽に顔を向け、目を細める。

「バルデック、作業はあとどのくらいで終わりそうだ?」

「この人数だと、早くてあと二時間といったところです」

 一刻も早く本隊と合流したい気持ちはあるが、これ以上部下達に無理をさせる事は出来ない。デルは焦る気持ちを抑えつつ、二時間後に街にいる騎士達を屯所に集めるよう、バルデックに声をかけた。

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