表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost19 銀龍の正義  作者: JHST
最終章 勝利か死か
87/98

②ゲンテの戦い ―鉄壁の赤鎖―

「残念。それ以上だ」

 アイムが振り下ろした先にあったのは二本目の短剣。加えて、デルの声が彼女の右隣から聞こえてくる。

 最初にデルが投げた短剣が彼女の振り下ろしで弾かれる。そして僅かな差でアイムの正面、二本目の短剣は鎖の盾が発動した。

「………ほぉ」

 本命は、アイムの右側面に回り込んだデルの片手剣による突き。だがこれも、二枚目の赤い鎖が自動的に壁を作り、彼女への攻撃を許さななかった。


「複数の壁も作れるのか。随分と反則じみた道具だなぁ、おぃ!」

「無駄よ。この『紅蓮のアイギス』はあらゆる攻撃から私を守るわ」

 先程と同様に、デルの剣を受け止めた鎖の壁が光を放ち、爆炎を生じさせる。

 デルは爆発する前に後ろに飛び退け、アイムとの距離を取る。

 

 アイムを守っていた二枚の壁は、糸が切れた人形のように解けると、重力に従った鎖として地面に落ちた。


「今度はこちらの番」

 アイムは爪先だけで器用に立つと、白銀の斧を持ちながら体を回転させ、半周を回った所から急激に速度を上げる。

「やっば!」

 デルが気が付いた時には、彼女の手から白銀の斧が離れていた。彼は、超重量の斧を紙一重で避けると、斧が背後にあったレンガ造りの建物を貫通させる。


「まだまだ。これからよ!」

 さらにアイムは斧と結ばれている赤い鎖を握るとそれを左に払い、糸のように張った白銀の斧を連動させた。

 デルは側面から迫る赤い鎖を飛び越えるが、彼女はそのまま鎖を上に払うとそれをすぐに引き、赤い鎖の波を作り出す。まるで鞭のようにしなった赤い鎖は、デルの右の脛当てに当たり爆発した。

「くっ!」

 デルもそれに怯まず、左の大腿部に取り付けた短剣を引き抜くと、黒煙を纏って落下する途中で投げ放った。


「器用な奴。でも無駄よ」

 放たれた短剣は、アイムが握っている鎖によって弾かれ、そのまま足元へと短剣を落とす。

 デルは空中で態勢を立て直し、右足で着地の衝撃を緩和させる。爆発を受けた脛当ては吹き飛んで無くなっていたが、幸い足そのものは無事であった。


「さぁて………いよいよ参ったぞ」

 赤い鎖の突破口が見当たらない。

 デルは息を少しずつ整えた。


 一方のアイムも赤い鎖を強く引き、建物の残骸から飛び上がった斧を手元に戻す。

 

 赤い鎖の防御が破れない。デルが隙を突いても、連続で攻撃しても、赤い鎖はどこからともなくこちらの攻撃に気付き、必要があれば複数の鎖の壁を作り出す。

「何がきっかけになっているのかさえ分かれば」

 アイム本人の意思でも命令でもない、さらに手数でも速さでもない。赤い鎖は何を基準にして防御をしているのか、その鉄壁にデルは思わず昔からの相方の事を思い出した。


「………もしもあいつが相手だったら、か」

 剣で斬る事も矢で射る事も受け付けない相方にして、『鉄壁』の二つ名を持つタイサに対抗できる手段を考えると、デルは剣を片手にアイムに飛びかかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ