④決起の集い
デルは諦めて覚悟を決めた。
「そこまで言うのならば好きにしろ。ただし、ついてくる以上は俺の命令に従え、いいな」
「はい! ありがとうございます!」
バルデックがもう一度深々と頭を下げる。デルは彼の頭頂を見下ろすと、もう一度溜息をついてからフェルラントに顔を向け『そういう訳だ』と申し訳なさそうに声をかける。
「フェルラント。済まないがここでの指揮の一切を任せる」
「仕方ないですな。年長者としては、情熱的な若者に機会を譲る事にしましょう」
フェルラントは苦笑しながら、残留を引き受けた。
話がまとまった所で、騎士の一人が出発の準備が終わった事を報告しに来る。
「どうかご無事で! 我々銀龍騎士団はデル団長達の帰りをお待ちしています!」
フェルラントは胸の前で拳をつくり、堂々とした笑みでデルとバルデックを見送った。
「フォースィ、後のことを頼む」
すぐ傍で立っているフォースィに、デルがすれ違いざまに声をかける。
「構わないけれど、依頼は日当制だから早く帰ってきた方が良いわよ?」
「分かった。事務屋に怒られる前には戻ってくる」
軽口を叩くデルが不敵な笑みを見せているフォースィと目を合わせる。そして、そのまま何事もなかったかのように彼はバルデックを連れて倉庫の中、階段を下りて洞窟へと向かった。
デル達が隠し扉を抜けて大きな空洞に足を踏み入れると、そこには選抜された三十名の騎士が傷ついた鎧を身に纏い、整然と並んで団長の到着を待っていた。
「団長、戦える者達は全員集まっています」
「分かった」
先頭に立っていた騎士の言葉を受け、デルは集まった騎士達の表情をぐるりと見回した。古参、新参に関わらず、いずれもあの激戦を潜り抜け、誰もが一騎当千の強者の表情を滲ませている。
デルは小さく頷くと、騎士達の先頭に立った。そして背中で両手を組み、腹の底から声を上げる。
「銀龍騎士団、その中でも強者中の強者達よ! お前達はどんな状況においても蛮族達との戦いに生き残り、仲間と共に戦い抜いた一騎当千の騎士である。私は、そんな君達と共に戦える事を誇りに思う!」
拳を見せるように強く握りしめた。
広大な洞窟に声が響き渡る。その声を間近で聞く騎士達の鎧も震え、また彼らの心も奮えていた。




