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Lost19 銀龍の正義  作者: JHST
第五章 魔人姉妹
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④五 対 四

 先に仕掛けたのは二匹のバステト姉妹。二人は白銀の戦斧で地面を削るギリギリの角度と深さを維持したまま飛び込み、正面からオセが振り上げ、ハウラスは横に薙ごうと手首を捻った。

 対するデルも臆する事なく二人に向かって駆け出し、僅か三歩で最大速度に達すると、風を率いて二人の間をすり抜ける。

 互いの走り込みから通過まで瞬き一つ。周囲を囲むゴブリン達には何が起きたのか分からず、気が付けばデルとバステト姉妹の位置が入れ替わっていた。


「速ぇ速ぇ! さっきの奴よりも何倍も歯ごたえがあるぜ!」

「えぇ、確かに速いわ」

 高揚するオセに対して、冷静を装うハウラスは、自分の首元に付けられた指の長さ程の切り傷を軽く親指で拭う。


「………くそ、仕留められなかったか」

 デルは構えを解くと、二人に体を向き直しながら剣を持つ右手を何度か握り直す。

 すれ違いに撃ち合った彼の斬撃は五回。それをバステト姉妹は互いの連撃で四回分を相殺させた。辛うじて、デルが最後に狙ったハウラスの首への一撃は彼女達の攻撃をすり抜けたが、それでも首を横に寝かせて躱されている。

 デルは右腕を軽く振り、何度も指を握り直した。

「馬鹿力め」

 体格のいい大人の重量に匹敵する武器を、まるで木枝の様に振り回す彼女達の腕力は、その攻撃を受け止めるだけで、体力を奪われる。

 デルは再び走り込んだ。そして、目標をオセに絞る。


「へぇ、俺とやろうってのかい!」

「オセ。支援(サポート)に回るわ」

 構えるオセに、ハウラスが後方に大きく飛ぶ。

 オセは腰を低くさせると、腰を回して戦斧を後ろへと両手を広げて構え、相手を迎え撃つ姿勢を整えた。

 手数の多さなら自分の方が有利と判断したデルは、ずしりと構えたオセの間合いの中へ瞬時に潜ると、上下左右の斬撃を放つ。

 だが、デルの攻撃はオセの手前に現れた半透明な白い障壁によって高い金属音と共に遮られる。白い障壁はオセの体が斬られる代わりに砕け散り、四度全ての攻撃で同じ枚数の障壁が空気中に四散した。

 

 デルの視線がオセの背後に向けられると、ハウラスが相手を小馬鹿にする笑みで、ぼんやりと光る右手を突き出している。

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