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Lost19 銀龍の正義  作者: JHST
第四章 蛮族の軍団
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⑦突破

―――自分よりも賢い敵だと思うべき。


「団長! 指示を!」

 フェルラントがデルの肩を揺すった。

 我に返ったデルは、すぐさま相手をゴブリンだと思わない考え方に切り替える。


「全軍! 全速力でここを突破する!」

「団長!? まさかゴブリンから逃げるんですか!」

「あぁ、そうだ!」

 当然の反応を見せる騎士にデルは大声を上げると、多くの騎士が何も言えなくなった。


「頭を切り替えろ! 奇襲と挟撃、普通に考えればこちらが不利だろうっ! 相手をゴブリンだと思うな、同じ人間の戦い方だと考えれば、奴らの目的が見えてくるはずだ!」

 何故ここで敵が待ち受けてきたか、何故集落に辿り着く前に襲って来たのか。敵が仕掛けてきた意味が自然とデルには見えてくる。

「これは前線に我々を合流させまいとする一種の遅滞戦術だ! このまま戦えば戦う程、前線が不利になる!」

 今頃敵の総攻撃を受けているに違いない。ならば敵の策に乗らずに、突破して味方と合流すべきだとデルは騎士達に発破をかけた。


「フェルラント! 俺は騎馬隊と共に前線へと駆け抜ける。お前は馬を失った騎士達で殿を執れ! 今度は逆にこちらが奴らと合流させないよう仕掛けてやるんだ!」

「了解しました! 団長、ご武運を!」

 フェルラントは馬を失った騎士達の傍まで馬を走らせると、すぐに隊列を作り直し、デル達の後方に展開するよう陣取った。その間にデルは生き残った騎馬と共に丘を駆け下り、挟撃されているであろう範囲を駆け抜ける。


「邪魔だっ!」

 草むらから飛び出して来たゴブリンを先頭のデルが切り払い、道を開く。フェルラント達とは次第に距離が開いていくが、下り坂と加速する馬の速さにゴブリン達は追いつく事ができない。デル達はすぐに挟撃されていた範囲を突破した。

 それでも馬の速度は落とせない。この先また挟撃される可能性が捨てきれない以上、デル達は馬の体力が続く限り、走り抜けることを強要される。


「各自、必要なら荷を捨てて少しでも身軽になれ! 途中で脱落したら奴らに襲われるぞ!」

 デルの言葉を合図に、後続の騎士達が毛布や魔導ランプなど、野営用の荷物を解き、馬から投げ捨てていく。中には食料を投げ捨てる者もおり、驚く事に隠れていたゴブリン達が姿を現し、地面に落ちた食料を巡って喧嘩を始めた。

 それを見た騎士達が、草むらにまだ敵が潜んでいる事を確信し、次々と出し惜しみしていた荷物を捨て始める。


 馬を走らせる事、三十分。騎士団用に訓練された馬も、流石に昨夜の行軍と相まって涎を撒き散らし、息を切らし始めた。

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