表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Lost19 銀龍の正義  作者: JHST
第四章 蛮族の軍団
43/98

⑤丘を越えて

「斥候が戻ってきたようです」

 フェルラントが丘の上を指さすと、最初に彼が放った二人の斥候が馬を駆けて戻って来た。


「団長! 前線の集落で黒煙が上がっています! 遠目ではありましたが、単なる小火(ボヤ)ではないと思われます!」

 斥候の報告を聞いたフェルラントがデルに視線を送る。デルもその報告の意味を察し、静かに頷いて見せる。戦闘が始まっているという最悪の展開が的中してデルが顔をしかめるが、一方でまだ騎士団が無事だという事も意味していた。


 戦局こそ分からないものの、無理をして出発した事は間違いではなかったと、手綱を握るデルの力が自然と強まる。

「後から向かった斥候はどうした?」

 フェルラントの言葉に、斥候の騎士は荒れた息を飲み込み、無理に呼吸を整えて答えた。

「はい! 副長達に団長らの到着を伝えに行きました!」

「それと、途中で馬の死骸も発見しました」

 別の斥候が恐らく定期的に街へ情報を届けに行っていた早馬ではないかと報告する。負傷したまま伝令に向かったのか、それとも途中で敵に襲われたのか、。今のデルに、そこまで判断できる材料はなかったが、とにかくカッセル達と合流する事が優先されると、後ろの騎士に見えるように右手を大きく掲げた。


「既に戦いは始まっているようだ! 全軍行軍を速めるぞ!」

 目の前の丘を越えた所から見えたとなると、急いでも目的地まで二時間強を要する。

 ここから全速力で向かっては馬がもたない。デルは一秒でも助けに向かいたい気持ちを抑え、馬の速度に気を配りながら可能な限り速度を上げた。

 

 部隊が丘を越え終えた所で、デルは報告にあった馬の死骸が目に留まる。馬は草原と街道のちょうど境に倒れ込んでおり、すでに表皮の水分が抜けて腐敗が始まっていた。羽虫も飛び交い、風に乗って運ばれる匂いが、デル達の鼻を刺激する。


「………妙だな」

「どうしました?」

 籠手で鼻を塞ぎつつ、デルは干からびた馬のもとへと自分の馬を近付けた。フェルラントも、眉をひそめながら近付くと、デルの言葉を理解する。

「騎士の遺体がありませんな」とフェルラント。

「ああ」

 本当に早馬ならば、乗っていた騎士も一緒に転がっていなければ話が合わない。


 デルが周囲を見渡していると、別の騎士が草むらの中を指さし、何かが光ったと叫んだ。

「確認してきます」

 見つけた騎士が自ら馬の手綱を引いて方向を変え、草むらの中へと入っていく。街道から五歩も進めば大人の腰ほどの草むらが生い茂っており、馬が草を分けて入っていく様を見るだけで、体がむず痒くなりそうになる。


 その時、様子を見に行った馬がいきなり転倒し、その勢いから馬上の騎士は前のめりになって地面へと落下した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ