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Lost19 銀龍の正義  作者: JHST
第四章 蛮族の軍団
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④まどろみから覚めて

――――――――――


「団長、起きてください」

 体を揺すられ、デルは目を覚ました。

 目の前にはタイサよりも深い彫りで白髪の入った老けた顔、もといフェルラントの顔が視界に入る。


「………済まない。かなり深く寝入っていたようだ」

 体を揺すられるまで起きられなかったのは久々だと、デルは目覚めの悪い頭を左右に振りながら起き上がり、団長としての自覚が足りないと自分を恥じる。

「いえ、始めから体を揺らしたので。団長はすぐに起きましたよ」

 だから気にしないでくださいとフェルラントに声をかけられる。

 気遣いか、それとも事実か。デルには分からない事だが、確認しても仕方がないとデルは小さく笑って誤魔化した。


―――ゲンテの街を出発してから十時間。

 小休止を挟んで移動してきたが、夜明けを迎えた所で馬の疲労が見え始めてきた為、デルは視界が十分に確保できる場所を見つけると、思い切って全員に六時間の休息を命じていた。

「で、もう二時間か?」

 二時間の三交代制を敷き、デルもその一枠の中で休息を取っていた。


「いえ、三時間ですね」

 どうやら先の彼の言葉は気遣いだったらしい。だが起きれなかった自分が問題なのだと、デルはフェルラントを責める訳にもいかず、複雑な感情を抑え込みながら無言を貫いた。


「状況を報告してくれ」

「はい。今休息をとっている者達以外は、出発の準備を既に終えています。周囲に敵の気配はなし。先程、斥候二名一組を出しましたので、何かあればすぐに報告が来るでしょう」

 フェルラントの手際の良さに、デルは何も付け加えられずに頭を掻いた。そして他の部下が持ってきた冷たい珈琲を受け取ると、それを一気に飲み干す。

 どこに敵がいるか分からない状況で、火は使えない。昨夜の水筒に入れてきただけあって味は抜群で、舌を歯で擦る程の苦みに、デルの目は一気に覚めた。


「一時間後に部隊を出発させる。フェルラント、十五分後にもう一組の斥候を先発させろ。人選は任せる」

「分かりました」

 ここから先は前線と目と鼻の先、逐一更新される情報が重要になってくる。

 部下には申し訳ないが、十分な休息を取る事ができたデルは、率先して部下の下へと足を運び、疲れや不安を見せている騎士を優先しながら声をかけて回った。



―――1時間後。


 短い時間で野営を撤収させると、デルは部隊を整えて出発の号令をかけた。

 周囲は一面の平原。やや勾配があり、遥か東には互いに競い合うかのように突き上げる白い山脈が南北横にそびえ立ち、極東から降りて来る寒気を堰き止めている。


 今進んでいる街道は王都付近のような石畳の舗装ではなく、単なる均された土の道である。道としては心もとないが、そこから少しでも外れれば、背の高い草原が続いていた。

 太陽が天頂を越える。

 デル達はゆっくりと上り坂になっている丘をまもなく越えようとしていた。

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