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Lost19 銀龍の正義  作者: JHST
序章
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④惨劇

 まるでデルの意図を汲んだかのように、集落の左右から二十を越える騎馬が奇襲をかけた。静かな森の中から急に響き渡った馬の声と騎士の雄たけびに驚き、ゴブリン達は左右どちらかに顔を向けた。


「突撃ぃぃぃぃ!」

 デルは腰の剣を抜くと勢いよく立ち上がり、剣先を正面に向けて号令をかけた。同時に十人以上の騎士達が大声を上げながら剣と盾を構えて突撃し、次々とゴブリンの集落に飛び込んでいく。

「バルデック、後を頼む!」

「はい! 弓兵隊、構えぇ!」

 デルも集落に飛び込んだ。目指すは焚火の前にいる二人の村娘。


 左右に正面と、三方向から攻められたゴブリン達は視線が定まらず、首や体を左右に振りながら次々と騎士達に打ち倒されていった。動物の革と木材で組まれた粗末な家から出てきたゴブリンは、バルデックが率いる矢によって次々と貫かれ、敵の増援を防ぎ続ける。

 デルは先に突撃した騎士達を瞬時に追い抜き、焚き火の周囲にいる五匹のゴブリン達の間を抜けるように一回転。二人の村娘の前に立つように足を止めると、後から追いついてきた風がゴブリン達を襲うかの様に、五つの首がほぼ同時に飛び跳ね、地面に落ちていく。


「焚き火周りの村人は確保した! 残りの蛮族を殲滅しろ、一匹も逃がすな!」

「まだ村人がいるかもしれん! 各自、家の中での戦闘は十分に気を付けろ!」

 デルの命令に副長のカッセルが補足する。騎士達は二人の指示に従い、目に見えるゴブリン達を剣で排除し、小さく貧相な家屋には盾を持った騎士を先頭にして突入。奇襲に備えながら一つ一つ確認を行った。


 奇襲から僅か五分。四十匹近いゴブリンの死骸が地面に散乱しているデルの下に、副長が馬を降りて駆け寄ってくる。

「団長。残りの村人を発見しました」

「見つかったか!」

 良かったと笑顔で振り向いたデルに対し、副長の表情は険しかった。デルはその意味をすぐに察すると、自らもまた表情を硬くし、視線を僅かに下げる。


「こちらです」

 案内された蛮族の家屋は、他のものよりも大きく作られていた。恐らく長の様な立場の住居だろう、腰をかがめてデルが中に入ると、すぐに血と肉の匂いが鼻に襲い掛かった。


「………酷いものです」

 大きな部屋に入ると、そこには大人の半分程の大きさの人間が服を着たまま解体されていた。腹は大きく縦に裂かれ、臓物がいくつか残っているが、人にとって必要な物が足りない。また手足も引きちぎられ、食べ残しのように骨の先に手首から先が残っていた。

 副長が報告する。

「恐らくこれで二人分かと、さらに隣の部屋にも同じような遺体がありました」

 合わせて三人。助けた二人の村人の娘と合わせれば、報告の通りとなる。

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