②出撃
東の大正門では、銀龍騎士団が出発するという情報を聞きつけた民衆達が、騎士の家族達と混ざりながら道沿いや建物の窓から手を振っていた。
騎士に憧れる少年少女が馬を歩かせるデル達に並走し、出発する騎士の妻や夫、その家族達の祈りが七百人の騎士達を囲んでいる。
大通りを抜け、大正門前の広場に入ると、小隊長の騎士達や騎士団長であるデルを迎える歓声が、一際大きくなった。そして、デルも他の騎士達と同じように手を振って応える。
そこに、民衆の隙間を縫って妻のエルザが近付いてきた。
「あなた、気を付けて!」
「………分かっている。帰った時の為に葡萄酒を用意しておいてくれ。今度は寝る前に話を終えてみせるよ」
馬から体をかがめたデルは、エルザから頬への口づけを受けると、そうだと思い出した彼女が小さな手紙をデルに手渡した。
「先程、ギュードさんがこの手紙をあなたへと」
「ギュードが?」
デルは手紙を受け取ると、それを裏表に返しながら宛名を確認するが、何も書かれていない。取り合えず手紙を鎧の中にしまい込むと、デルは小さく手を振り、騎士団の先頭へと馬を進めていった。
「各自、準備はできたか!?」
「「「「「はっ」」」」」
騎士団長の声に騎士達は一斉に声を合わせる。
「よし、銀龍騎士団出発する!」
デルが手綱を叩き、馬をゆっくりと走らせた。




