⑤親友 -同期として-
共に冒険者として生活費を稼ぎ、ついには騎士の道に進んだ旧知の仲であるタイサは、周囲から『色なし』と呼ばれる下位騎士団『盾』の団長を務めている。周囲からは、『色なしのさらにその中での底辺の騎士団』などと揶揄され、蔑まされている。
彼の攻撃や速度は、通常の騎士とそれほど変わらないが、彼の打たれ強さは異常と言っていい程の硬さを誇る。デル自身も、冒険者時代から彼が大怪我をした所を一度も見た事がない。
故に彼は、王族から『鉄壁』の二つ名を拝命されている。
王国騎士団内において、彼の騎士団は偏見に満ちた評価が多いが、事情をよく知るデルにとっては、それがいかに的外れで馬鹿げているかを知っている。
タイサは、騎士団の中でも実力がありながら内外で問題を起こした騎士を積極的に採用して育て直し、他の騎士団に異動できるよう積極的に活動していた。その証拠に、タイサが育て直した騎士は、小隊長として既に通用する能力をもち、中には『色付き』の騎士団としても抜擢される事もあった。
実際にデルの銀龍騎士団でも、他の騎士団経由ではあるものの、十名程の騎士がタイサの下にいた経験がある。
だがそれでも目の前の男は、それを自慢する事はしなかった。彼に師事された騎士達も、それを大きく喧伝する事をしなかった。
本来ならば、タイサ自身が『色付き』の騎士団長を務めてもおかしくはない。それだけの実力があるはずなのにと、デルは答えの見えない問題に苦悶していた。
「それで、半月の遠征の方はどうだったんだ?」
タイサからの問いにデルは気持ちを切り替えると、眉をひそめてゆっくりと答えた。
「………酷いものだ。国境に近い東の集落がいくつも襲われ、住民達が攫われていた」
「そうか………それは酷いな」
自分の事のようにタイサも言葉を詰まらせ、短い時間だが目を閉じる。
デルは銀龍騎士団が潰した集落の事に触れながら、今後について自分なりの持論を述べた。
「これ以上放置すれば、それなりの規模の村々だけでなく、大きな街に被害が出るのも時間の問題だ。今回の会議はその件に関する事になるだろう」
本当は会議の内容は分かっていたが、あえてデルは口にしなかった。




