4話 3/5 パンツ、別れ
「う… 頭痛ぇ…」
窓から射し込む日の光で目が覚める。
「………やべっ!! 今何時だ!?」
焦りのあまり部屋のどこに時計を置いていたか一瞬忘れるが、どうにか壁に掛けてある時計を見つけ、確認する。
時刻は8時を指していた。
「遅刻だぁぁぁぁぁぁ!!!!」
昨日の格好のまま寮を飛び出す。
「(いやいや寝すぎでしょ!?!? 昨日帰ってきたのお昼前だよ!? どんだけ疲れてたんだよ!)」
この時間まで目が覚めなかった自分に驚きつつ、腹を立てる。
「(あ〜 実力試験の始まる時間聞いておけば良かった! そうしたら身支度できたかもしれないのに!)」
10分程してようやく教室にたどり着く。
「ハァ…ハァ…(校舎広すぎんだよ! 教室遠すぎんだよ!)」
後ろ側の扉からゆっくり中に入る。
「遅れてすみません…」
教室中の視線がディノへと向く。
「(あ〜この感じ… いつになっても嫌だな…)」
「体調は大丈夫ですか?」
先生から優しい質問が飛んでくる。
「は、はいっ! 元気です!」
「それなら良かったです。 次からは気をつけて下さいね」
「はい… すみません…」
意外と怒られなかったことに安堵しながら席に着く。
「おはようディノ、大丈夫か?」
シモンが心配そうにディノに話しかける。
「いっぱい寝たからもう大丈夫。 ところで実力試験って何時からなんだ?」
「9時かららしいぜ」
「それは良かった…」
ディノとシモンが話していると、先生が口を開く。
「それでは試験の説明をします。 試験では、使える魔法の種類、魔法の技術を見ます。 特に難しく考える必要はありません。 今、皆さんのできる精一杯を見せて下さい」
その後、暫く先生の説明が続き、ようやく試験の準備の為、更衣室に向かい、着替え始める。
「そういえば、ディノはなんか準備とかしたのか?」
ディノが運動着に着替えているとシモンが話しかけてくる。
「準備? いや、特に? シモンは何かしたの?」
「実はとっておきのやつを準備してきたんだ! 後でディノにも見せてやるからな!」
「お、おう(シモンの奴、何持ってきたんだ?)」
着替え終わり、校庭へと向かう。
「お〜! こうしてみるとめっちゃ広いな〜!」
そこには校庭と呼んでいいのか分からないくらいの大きさのものが広がっていた。
「ディノは昨日見る前に帰ったもんな」
「皆さん、こっちです」
先生の声のする方へ集まる。
「全員集まりましたね。 試験は席順で1人ずつ見ていきます。 それでは、1番のバルム・ニューア君、コチラへ」
「はい!」
1人の少年が先生に手招きされ、少し離れた所へ行く。
「それでは、ニューア君。 使える魔法を全て見せて下さい」
そう言われると少年が、手を前に構える。
「(さて、同世代の子達がどのくらい魔法を使えるのか、楽しみだ)」
ディノが期待を膨らませていると少年が魔法を放ち始める。
「はぁー!!」
しかし、それはディノの期待に応えるものでは無かった。
「(なんか… ちっさい…)」
まだ幼き少年の手から放たれる魔法はどれも弱々しく、ディノがこれまで使ってきた魔法に比べるとどれも取るに足らないものだった。しかし、周りの反応を見ると意外と悪く無さそうだった。
次の子も次の子も、やはりどれもディノの期待に応えられる魔法を出せなかった。
「(あぁ… これが普通なのかな…)」
ディノが少し落ち込んでいるとシモンが横で何かを始める。
「ん? シモン何やってんだ?」
手元を見てみるとシモンは小袋を持っていた。よく見ると少し動いているように見える。
「お、ディノもいるか!?」
そう言いながらシモンが小袋の中身をディノに見せる。
「何が入って…」
ディノが中身を覗いた瞬間、全身に一気に鳥肌が立つ。
「うぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!! ななななんだこれ!?!?!?」
「何って… 魔吸虫の幼虫だけど?」
シモンが一匹取り出し、ディノに見せる。
それは、イモムシのように細長く、全身が黒い毛に覆われ、不気味な脚が生え、巨大な複眼が付いている。
「キッッッッッモ!!!! 無理無理無理無理!!!
」
目を逸らしても、あまりにも気持ち悪すぎる姿が脳裏に焼き付き、離れない。
「はぁ〜 情けねぇな〜 全力出すには魔吸虫が1番。 常識だろ?」
シモンが呆れた表情でディノを見つめる。
「え、そうなの… (あれ、俺が常識無いだけなのかな…) ところでそれ、どうするんだ…? まさか食べるなんて…」
「食べる以外に何があるんだよ?」
「え…」
ディノが絶句しているとシモンが早速口へと運びだす。
「おいおいおいマジで食べんのかよ!?!?」
ディノが驚いているのをよそに、魔吸虫の幼虫がシモンの口へ吸い込まれていった。
「マジで食いやがった…」
「だから普通だろ? それに味は意外と悪く無いんだよ」
「いや、味の問題じゃないだろ…」
ディノが周囲を見てみると、コチラを見ながら何かコソコソ話している。
「アイツ… 虫食いやがったぞ…」
「気持ち悪い… 関わらないようにしよう…」
「(オイ… 全然常識でも普通でも無いじゃねぇかよ… やっぱりシモンがどうかしてるだけじゃん…)」
ディノがシモンに引いていると先生から名前を呼ばれる。
「それでは次、ディノ・ルブロ君。 使える魔法を全て見せて下さい。」
「はいっ!!(よし、やるぞ!!)」
先生の所まで行き、手を構える。
「(まずは炎魔法から〜っと…) オラァ!!!」
これまでの生徒達の放ってきた炎魔法の何十倍、何百倍もの大きさのものを放った後、水魔法、雷魔法、風魔法、様々な魔法を使ってみせた。 どれもが他の生徒とは天と地程の差がある規格外のものだった。
ディノがある程度魔法を撃ち終わると、周りには他のクラスの生徒まで集まり、大騒ぎになっていた。
「(き、気持ちぇぇぇ!!!! もっと褒めてくれぇぇぇぇ!!!!)」
ディノ・ルブロ 7歳 調子に乗る。
「(あれも見せとくかっ!!)」
今度は複数の魔法を同時に使ってみせる。
使える魔法を全て使い終わると、周りが黄色い声援で包まれていた。
「(オイオイ、こりゃ特別魔法科も余裕なんじゃねぇか!?)」
ディノが気持ち悪い笑みを浮かべていると周りに生徒達が駆け寄って来る。
「すごいね! ディノ君?だっけ? 誰からそんな魔法教わったの!?」
「ねぇ! 私にも魔法教えてよ!」
気持ち悪い笑みを手で覆い、表情を整える。
「まぁ、待ってくれよ。 1人ずつ、ね?(決まった…!!)」
騒いでいる生徒達を他所にシモンが試験の準備を始める。
「よしっ! 次は俺の番だ!」
ディノも横目でシモンの様子を見る。
「(そういえば、シモンってどんな魔法使うんだろ)」
「おい、アイツさっき虫食ってたやつだよな?」
「え? それ本当? やば…」
生徒達の声を一切気にせず、シモンが目を瞑り、集中する。
「それでは、シモン・ルーエル君。 始めてください。」
先生が声をかけた次の瞬間、シモンの全身が黒い霧に包まれる。
「(あれって…!!)」
シモンは黒い縄の様なものを振り回したり、地面から黒い針をようなものを生やして見せた。
シモンが魔法を使い終わると、他の生徒達の注目は完全にシモンへと向いていた。
「すっげぇぇ!!! あれ、黒魔法だよな!?」
「シモン君!! 私にも教えて!!」
ディノ・ルブロ 7歳 一瞬にして人気を持っていかれる。
「(シィィィモォォォン!!!! テメェは今日から敵だァァァァァァァ!!!!!!)」




