4話 2/5 パンツ、別れ
昨日の入学手続きの時に貰った校内地図を頼りにディノが自分の教室へとたどり着き、教室の中へと入る。
「(おいおい… 早いって…)」
ディノが教室を見渡すと、ある程度話すグループが出来上がっていた。
「(小学生のコミュ力恐るべし… いや、どっちかと元々仲良かった子の方が多いのかな… 俺だけ誰も全く知らない状態… 社会人生活の最初を思い出すな…)」
とりあえず自分の席を探し、座る。
「(さて、誰に話しかけようか。)」
ディノがグループを観察していると横から声が聞こえる。
「ようっ!」
声のする方を見てみるとどうやら、隣の席に座っている男児が声の主のようだった。
「お前も1人か?」
「そうだけど、その言い方、もしかして君も?」
「おう! 俺はシモン・ルーエル! シモンでいいぜ! 東の方の小さい村出身でさ、知ってる奴が居なくて」
「俺はディノ・ルブロ、ここから北の方にある山に住んでたんだ。 よろしく、シモン」
「おう! よろしくな! ディノ!」
そういうとシモンが手を差し出し、ディノと握手を交わす。
それから暫く話していると先生が教室に入ってくる。
「さぁ、皆さん。 席に着いてください」
綺麗な若い女性の先生だ。
「皆さんの28組の担任を務めます、マーシャ・カナーです。 これからよろしくお願いします。 話したい事が沢山ありますが、まずは入学式を終えてからです。 それでは皆さん、大集会ホールに移動しましょう」
先生について行き、大集会ホールへ向う。
「おぉ〜! 外から見ても大きいな!」
大集会ホールの前まで来ると、シモンが少し興奮した様子でホールを見つめる。
「さぁ、皆さん。 中へどうぞ」
先生に先導され、中へと入っていく。
自分達の席に着き、少し周りを見てみる。
「おぉ〜! やっぱり中も大きいな! ディノ!」
「だね! (凄いな… 一体何人入ってるんだココ… 下の会場に居るのは新入生、2階席に座ってるのは下級2年生以上の生徒達かな。 どこを見ても生徒でいっぱいだ…)」
しばらくすると、入学式が始まり、校長や偉そうな人達の話が始まる。
ディノが適当に聞き流していると、今度は生徒会長の話が始まる。
「こんにちは、新入生の皆さん。 ここ、第1中央総合学校の生徒会長を務めております。 シャルン・ロードと申します。 これからよろしくお願いします。 何か困ったことがあれば生徒会に遠慮なくご相談下さい。 どんなに小さなことでも大丈夫です。 生徒会は皆さんが学生生活を楽しく過ごせるように全力で支援させて頂きます。」
「(金髪、清楚、美人。 食堂の時はよく見えなかったけど、ザ・生徒会長って感じの人だ。 声も穏やかで、聞いてるだけで眠くな…る…)」
「お〜い、ディノ。 もう終わったぞ」
シモンに揺さぶられ目を覚ます。 どうやら途中で寝てしまっていたようだ。
「ありがとうシモン」
「おう。 俺達も教室に帰ろうぜ」
「そうだな、次は何するんだっけ?」
「教室に戻ってちょっと話聞いて、後は学校の自由見学らしいぜ」
「おぉ、それは楽しみだな」
シモンと共に大集会ホールから出る。
「まさか明日からいきなり実力試験とはな〜」
「え、そうなの?」
「寝てて聞いてなかったのか?」
「はは… まだ疲れが完全に取れて無かったのかも」
「大丈夫か? じゃあ、明日の為にも今日はしっかり寝ないとな」
「そうだな。 (おかしいな… しっかり寝たはずなのに… 明日の実力試験の為に今日はもう少し早く寝るか…)」
そうこう話している内に教室に着き、軽く明日の説明を聞いて、自由見学の時間になる。
「ディノはどこか回りたいところあるか?」
「う〜ん… あ、特別魔法科のクラスを覗いてみたいかも」
「ディノ! 特別魔法科の推薦狙ってるのか!? 凄いな!!」
「うん、まぁね。 推薦状貰えるかどうかまだ分からないけど」
「おいおい! 始まる前から弱気になってどうするんだ? じゃ、早速見に行こうぜ!!」
「お、おい! ちょっと!」
強引にシモンに連れられ、特別魔法科の教室の前まで来る。
「さ! 覗いてみろよ!」
シモンがゆっくり教室の扉を開けて、手招きする。
「授業中だろ? 迷惑になるんじゃ…」
ディノがそう呟くと、開いた教室の扉の隙間から、先生らしき老いた男性が顔を出す。
「君達、見学かな?」
優しい口調でシモンとディノに話しかけてくる。
「そうなんです! な! ディノ!?」
「え、えっと… 迷惑で無ければ少し覗いてもよろしいですか…?」
心配そうにディノが聞くと先生は優しく笑う。
「勿論だとも。 さぁ、後ろの開いた席に座って。 そこが一番よく見えるよ」
「ありがとうございます!」
「良かったな! ディノ!」
先生に案内され、ディノとシモンが教室に入る。 すると、見覚えのある顔がこちらに小さく手を振っていた。
「(メアリーさんだ! 副生徒会長って聞いてたけど、やっぱり特別魔法科だったんだ!)」
ディノも小さく手を振るとメアリーが優しく笑う。
頭の頂上まで駆け上がろうとせんばかりに上がる口角を、舌を噛んで必死に抑える。
「(あっぶねぇ… 油断した…)」
ディノとシモンが席に着き、授業が再開される。
「(このクラスは5人か。 各学年ごとに特別魔法科があるらしいから、このクラスの人数が普通だとしたらおよそ50人。 全校生徒が約1万人だから、大体200人に1人が特別魔法科の生徒って感じなのかな)」
「お〜い、ディノ」
考え事をしているディノをよそに、シモンが小声で話しかけてくる。
「どうかした?」
「やっぱり凄いな、特別魔法科って。 俺、授業の内容全然分かんねぇよ」
「まぁ、上級生の授業だから、下級生の授業ならもう少し簡単だと思う」
そうは言ったもののディノは正直退屈していた。
「(これ、俺できるんだよな… 異なる魔法の同時使用。 師匠なんて5つくらい同時に使ってたから誰でもできるもんだと思ってた… いや、それとも授業でしてるだけで誰でもできたりするのか?)」
久々の授業で眠くなるが、必死に目を開ける。
苦労の甲斐あって、どうにか眠らずに授業を乗りきる。
授業が終わるとメアリーがディノとシモンの所へやってくる。
「ディノさん、こんにちは。 そちらの方は?」
「今日友達になったシモン君です!」
「シモン・ルーエルです! こんにちは!」
「ふふ、こんにちはシモンさん。 私は生徒会副会長のメアリー・ハートです。 ところでお二人共、授業はどうでしたか?」
「いや〜 やっぱり難しかった!!」
「楽しかったです!」
「明日の実力試験、いい結果を修められる事を心から願っていますよ」
「「ありがとうございます!」」
メアリーに手を振り、教室を後にする。
「いや〜 超美人さんだったな!」
「はは、だよな(なんだ… 教室出たら急に身体が重く…)」
「よし、次行くか!」
「………おう…」
ディノの元気のない返事を聞いて、シモンがディノの顔を少し覗き込む。
「疲れたのか? 俺の事はいいから、疲れたなら気にせずに休んでくれ! 寝不足なんだろ?」
「ごめん、じゃあ俺先に帰るな… また明日…」
「おう! また明日!」
シモンと別れ、早々に寮へと帰る。
次第に疲れが増す身体に鞭を打ち、どうにか自分の部屋の扉を開ける。
「(ベッドまで… もう少し… あと… 少し…だ…)」
しかし、あと一歩というところで完全に力尽き、深い眠りへと落ちてしまった。




