表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/9

3話 2/2 パンツ、どうか内密に

「(やばい…! 殺される…!)し…ししょ… 師匠ォ!!!」


ディノが力を振り絞りなんとかセルスを呼ぶことが出来た。


「え、えっと…」


男が困惑していると、セルスが降りてくる。


「あ〜、起きたんだね。 町まで送るよ」


「すみません、自分、何が何だか分からなくて… 気づけばここにいて…」


「大丈夫、気にしなくていい。 君は森で倒れてたんだよ。 それで私がここへ連れてきて様子を見てたんだ。 ただ、それだけさ」


ディノがボーっと眺めているとセルスが男を玄関まで連れていった。


「悪いけどディノ君、少し留守番を頼むよ。 私は彼を送ってくるから」


「あ、はい」


反射的に返事をしてしまった。


「(え…なになに… 普通に対応してたな… あの男、どう見ても昨日俺を殺そうとしてきた変態だよな、え、俺が間違ってる? まぁ、帰ってきたら聞いてみるか… とりあえず魔法書読もうかな…)」


困惑しながらも散らばった魔法書を整理し、台所の机まで持っていき、読み始める。


「(『黒魔法… 黒魔法は黒魔法に選ばれた者だけが真の力を使うことができる。 全てを超えて深淵へと辿り着いた時、歴史に刻まれた英雄達が再びこの地へ顕現する。』 なんだこのフレーズ… てか黒魔法の魔法書って毎回内容の最後にポエムみたいなの書かれてんだよな… このポエムいる?)」


ディノがそんなことを考えながら読んでいると少し違和感を感じる。


「ん?なんか挟まってる」


ページを捲り、挟まれている白い布をゆっくり持ち上げてみると


「(…………パンツ、、、、 しかもこれ、昨日師匠が被ってたのと違うやつだよな… と、言うことはあの人盗んでるの1枚じゃないってことだよな… 王女さん、やっぱりこの人追放だけじゃなくてもう少し厳しく罰した方が良かったんじゃないですかね…)」


「ただいま」


暫くするとセルスが帰ってきた。


「おかえりなさい。 あの、これ…」


ディノが机に置いたパンツを指差すと、セルスが急いで駆け寄って来る。


「おぉ! これ! どこにあったの!?」


セルスが目を輝かせながらパンツを持ち上げて広げる。


「この魔法書に挟まってましたよ…」


「いや〜、まさかそんなとこに忘れていたとは! とても大切なパンツなんだ。 次はしっかりしまわないとね。 見つけてくれてありがとうね!」


嬉しそうにパンツを眺めるセルスを見て、ディノの目がどんどん軽蔑の眼差しへと変わっていく。


「あの、師匠。 師匠が盗んだパンツって1枚…じゃないですよね?」


「ん? あぁ! そりゃもう数え切れないほど盗んでるよ!」


堂々と話すセルスを見てさらにディノの軽蔑の眼差しが強くなる。


「よくそれで追放だけで済みましたね… もしかして、王女様の分しかバレなかったんですか?」


「ん? もちろん魔法で洗いざらい白状させられたよ。 いや〜あの時は生きた心地がしなかったよねぇ。 あと言ってなかったけど、追放だけで済んでないんだよね、実は」


「他に何か罰があったんですか?」


「【魔導師】として国に登録されたんだ」


「魔導師? ですか? 魔法師じゃなくて?」


聞き慣れない言葉にディノが眉をひそめる。


「そう、魔導師。 ざっくり言うと、悪い魔法師って感じかな。 魔導師となると様々な制限がかかるんだ。 例えば、他の国へ行くと即死刑になったり、自分が魔導師というのを隠して仕事をすると即死刑になったり、魔法関連でいざこざ起こしたら即死刑になったり」


「やだ… なにそれ怖い…」


「魔導師って言うのはそれほど危険視されてるってことだね」


「パンツ盗みまくってそこまで行った師匠も怖い…」


「パンツは人を狂わせるんだよ」


「師匠は元々狂ってたんでしょ…」


暫くして、魔法の練習を再開し、1日中ひたすら集中して魔法を覚えていると気づけば夕方になっていた。


「よし、今日はこのくらいにしておこうか」


セルスの声でディノが魔法を撃つのをやめる。


「はぁ… はぁ… 疲れた…」


息を荒げながら地面に座り込む。


「お昼も食べずにずっとやってたからね。 今日は帰ったら早く寝て、ゆっくり休んでね。」



「はい、ありがとうございました。 明日も来て大丈夫ですか?」


「うん、構わないよ。 あ、そうそう。 ここへ来る方法を伝えてなかったよね」


「あ、そういえば魔法で隠してるんでしたっけ」


「うん、今日待ち合わせした場所から来れるよ。 あの辺りに赤い花があるはずだから、最初にそれを探すんだ、赤い花のとこに行くと次に青い花が近くにあるからそこへ行く、次に黄色い花が近くにあるからそこへ行く、するとまた赤い花が近くにあると思うから、これを繰り返す。 赤色、青色、黄色の順番でね。 するとここまで来れるから、覚えておいてね」


「赤色、青色、黄色、ですね。 分かりました」


「じゃあ、また明日ね。 お疲れ様」


「お疲れ様でした〜」


セルスと別れの挨拶をし、魔法書を何冊か借りて帰路につく。


疲れて少しフラフラしながら歩いていると気づけば家に着いていた。


「ただいま」


「あら、おかえり」


「おかえり、ディノ」


温かい母と父の声がディノを迎える。


「ディノ、その本とローブはどうしたんだ?」


「? あっ、(やべ、セルスさんの事をまだ話してないんだった…)」


「えっと… 実は…(下手に誤魔化すとまた心配かけるから正直に話すか…)」


大人しく両親にセルスの事を少しぼやかしながら話す。


「まぁ! そんな凄い人に魔法を教えてもらえるなんて! もしかして昨日帰りが遅かったのもそのお師匠さんに魔法を教えてもらってたからかしら! でも、どうしましょう… 私達お金も無いし… 魔道具や魔法書なんて高価な物を頂いても何も返せないわ…」


「ディノ、そのお師匠さんに1回会ってもいいか?」


「いや〜 師匠は人見知りだから… あ、あと見返りも要らないって言ってたよ! そういうの気にしなくていいってさ! 師匠は大金持ちで暇だから俺の師匠やってくれてるんだ! うん! (暇だからってとこしか合ってないけど、まぁいいか… 俺が大人になったら沢山恩返ししないとな)」


目を泳がせながらなんとか誤魔化す。


その後、なんとか親を説得し部屋に戻る。


「つ、疲れた…」


ベッドに倒れ込み、今日の出来事を思い出す。


「(今日は色々あったな… そういえば、昨日師匠が邪神がどうとか言ってたな… なんなんだろ… あとは…今朝の夢… まぁ、とりあえずご飯とお風呂入って今日は寝よう… 本当に疲れた…)」


目を瞑ると一瞬にして深いに眠りに落ちる。


気がつけばあっという間に朝だった。


「あぁ… もう朝か… よし、今日も行くか!」


こうしてセルスとの魔法の鍛錬の日々が始まり、半年が過ぎた。


「あと3日もすればディノ君も学生だね」


「ですね、半年間本当にお世話になりました。 その、また時間がある時に来てもいいですか?」


「あぁ、いつでも来てくれて構わないよ。 ところでディノ君は学校のことをどのくらい知ってる?」


セルスに聞かれ、気がつく。


「そういえば… 俺学校の事全然知らないです… 父も母もあまり知らないようで…」


「そうなんだ、まず学校は10年制なんだ。 10年で魔法の道を行くか、その他の道を行くかを決められる。 下級1年から5年は基本的には全員同じことを学ぶ。 そして、上級1年から5年で魔法科、普通科へと分かれるんだ。 ただしっ!」


「ただし?」


「下級1年からでも魔法を学ぶことに専念できる科もあるっ!!」


「おぉ! 本当ですか!?」


「入学してすぐの実力試験でいい成績を修めるんだ! そうすれば、特別魔法科の推薦状を貰える! そして、テストに合格すれば晴れて特別魔法科へと入ることができる!」


「それって、凄い事なんですか?」


「勿論! 魔法師隊の隊員達の約8割はここの出身だよ! 君の実力なら間違いなく入れるだろう!」


「マジすか!? ちなみに師匠もそこの出身だったり?」


「ふふ、実は違うんだ。 私は皆が学校に行ってるくらいの歳の時はある人と一緒に旅をしていてね」


「ある人?」


「私の師匠、ヴェル・アーボスさんって人。 その人も元魔法師隊でめちゃめちゃ強かった。 まぁ、この話は長くなるから、また来た時にでも話そうか。 かなり日も暮れてきたしね」


「そうですね、じゃあ改めまして、半年間お世話になりました!」


「うん、学校頑張ってね」


「はい!それではまた!」




----------次の日----------




「ディノ゛も゛お゛お゛ぎぐな゛っだな゛ぁ゛!!!」


父が号泣しながらディノの肩を掴む。


「こらこらお父さん、ディノが行きづらいじゃありませんか」


「う゛ぅ゛… だってぇ゛…」


母に諭され、父がディノの肩から手を離す。


「大丈夫だよお父さん。 また時間ある時に帰ってくるからさ」


「ディノ、旅路に気をつけてね。 ……本当に1人で大丈夫?」


「うん、中央都市まで遠いって言っても俺の魔法で1日もあれば十分行ける距離だし。 1回師匠と下見に近くまで行ってるから道も分かる。 沢山鍛えてもらったから戦闘だって自信あるよ」


「そう、くれぐれも気をつけてね」


「ディノ゛!! 頑張れ゛よ゛ォ゛ォ゛!!」


「うん、じゃあ行ってきます!」


父と母に手を振り旅路につく。




----------1日後----------




「ふぅ、着いた着いた。 距離は大体100キロ前後ってとこかな」


森を抜け、ようやく中央都市が見えてくる。


「前に来たときはここまで近くで見てなかったからなぁ〜 思ってたよりもかなり大きいと都市だな〜」


中央都市の門をくぐり、街に入る。


「おぉ! やっぱり栄えてるなぁ! おっと、街を回る前に入学手続きしないと」


地図を頼りに学校へと向かう。


「おぉ… でっか…」


学校へ着くとあまり大きさに思わず見入ってしまう。

すると、受付の人であろう人が話しかけてくる。


「こんにちは。 入学手続きですか?」


「は、はい! お願いします」


「分かりましたコチラへどうぞ」


入学手続きを終えると今度は寮へと案内される。


「ここがルブロさんの部屋ですよ」


「ありがとうございます」


荷物を置き、部屋を見渡す。


「かなり広いな。 1人部屋だし、これなら問題なく生活できそうだ」


準備が一段落して、しばらく街を回っていると気がつけば日が暮れていた。


外で食事を済ませ、寮に戻り風呂に入ると疲れていたのか眠くなり、早々にベッドで横になる。


「明日から学生か… どんな感じなんだろう…」


期待と少々の不安を抱えながら眠りにつく。




波乱万丈の人生の幕がゆっくりと上がっていることに、この時のディノは知る由もなかった。















評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ