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終わりがわかっていても  作者: 櫻井賢志郎
4/5

4話

「おー!久しぶり!」

浩輔の相変わらずでかい声がうるさいくらいに耳に届いて、僕も簡単に手を振る。

こいつに関してはそんな久しぶりってほどでもない気がしたけど、いつ会ってもこんなテンションのやつだからまあいいかと思いながら、立ち話をして過ごす。


少しして、廉と翔也、優希と美柑が合流する。

今日は僕が無理言って高校の時のメンバーに集まれないかって声をかけていた。

本当はみんな来れたら良かったけどそう簡単には行かなくて僕以外に5人が来てくれた。

雨音には今日集まってる事は伝えてなくて、実はみんなに協力してもらって雨音に後日サプライズをしようと考えていた。


僕たちは集まってすぐにカラオケに行って作戦会議をした。

「ある程度は何やるか決めてるの?」

「いや、まったく思いついてない」

「相変わらずだな!」

美柑に軽く小突かれる。

「でも、とにかく雨音が喜んでくれたら嬉しい」

「そりゃそうだけど、もしかしたら私たちがみんなで集まるのも最後になるかもしれないわけじゃん。ありきたりなサプライズじゃないものにしたいよね」

廉の言葉に少しみんなの顔が暗くなった気がしたけどすぐに浩輔が雰囲気を変えてくれた。

「まあまだどうなるかわかんないけど、せっかく集まれるんだから純粋に楽しまなきゃな!」

「だね!」

みんなもそれに押されてサプライズの案を考え始めた。


「雨音が好きな事ってなんだろうなー」

「高校生の頃はパックの紅茶よく飲んでなかった!?」

優希の一言にみんなが少し呆れる。

「急に大量の紅茶もらってもむしろ迷惑だろ!」

廉の当然のツッコミに優希も潔く納得する。


どんなに考えてもなかなか答えは出てこなくて、出たとしてもどこかパッとしないような内容のものばかりだった。体も動かせば頭も回るかもと言って歌い出した浩輔をきっかけに少しの時間みんながいつものようにふざける時間ができた。

「響け恋の歌〜」

翔也が歌い終わったタイミングで、美柑が笑いながら口にする。

「私たちの歌じゃプレゼントされても反応に困るよね〜」

「確かに、みんな絶妙だよね。ふざけてるけど上手いの浩輔くらいだし」

僕たちはみんな何とも言えないくらいに歌が上手くなくて、かと言ってとびきりの下手くそでもないから聞かされた側はリアクションが難しい事は容易に想像できた。

そう言えば雨音も実は歌がうまくて車の中とか2人でいる時によく色々な歌を口ずさんでたことを思い出す。

でも、みんなの前だと何故かあまり歌おうとしなくて、少し恥ずかしそうにする姿が可愛いなって思った事があった。


ひとしきり歌い終わったところで愛菜と麗美、健二が合流する。

「もう内容決まった?」

3時間も早く集まってるんだから、何か案は出てるでしょ?そう言わんばかりの表情で麗美が聞く。

「いいえ!まったく!」

こちらも当然のように廉が答えて、その場にため息と笑いが混ざる。


「なんか一生で一度の特別なサプライズがいいよね、それでいて私たちらしくて、少しぶっ飛んだやつ」

「それならさこんなのどう?やっぱこんくらいぶっ飛んでた方がサプライズって感じするじゃん?」

愛菜の提案にみんなが一瞬フリーズする。それぞれの頭の中でその光景が再現されて、それぞれのそれが浮かぶ。

「お前まじ天才だわ、それがいい」

翔也の言葉にみんなも頷いてサプライズの内容が決まった。


「でもこれやるなら本気でやろうよ。私、学校の先生に服とか借りれないか頼み込んでみる。」

「俺もバイト先に事情説明して作ってもらえないか聞いてみるわ」

みんなそれぞれが出来ることを分担してサプライズの詳細がどんどん決まっていく。

まさかこんな大掛かりなサプライズをすることになるなんて思ってなかったから僕は何をしたらいいのかさっぱり分からなくて、思わずみんなに聞く。


「僕は何するのがいいんだろ、、」

「気合と根性を見せる準備」

真剣な眼差しで少しカッコつけながら健二が言う。

ほんとにそれでいいのかと思いつつも、確かには心の準備が一番必要だなって思って承諾する。

このサプライズの主役はもちろん雨音だし、雨音のためのサプライズだったけど僕もすごく重要な役を任されてるのが流石の僕でも理解できた。

みんなはそれでもお前なら大丈夫って口にしてくれて何だか少し自信が持てた気がした。

「俺らも結構気合い入れなきゃだよなこれ」

「いや、ほんとそうだよね、私サプライズが成功したら絶対泣いちゃう」

「わかるわー俺も泣くかも」

「いやいや翔也は泣かないでしょ」

「なんでだよ!」

そんなやりとりをしながら準備の内容をみんなで話し合っていく。

みんな忙しいはずなのに嫌な顔は一切しなくて当然のように雨音ためにってたくさん考えて、たくさんの準備を計画してくれた。

この日は解散をすることにしてそれぞれが準備をして当日を迎えることになった。




それから数日が経って、いよいよサプライズ当日になった。

天音を除いた9人は先に集まって、準備をした。

廉が必死にお願いをして借りてくれた高校の教室に盛大な飾り付けをしていく。

「お願いしたら、安物だけどってこれ貸してくれた!」

「俺も店長が特別に作ってくれた!そんな大きいものじゃないけど!」

美柑と浩輔がそう言って大きな荷物を見せてくれる。

それから順調に準備は進んで行って、サプライズの流れの確認をした。


僕がこの後、雨音を車で迎えに行く。

高校に着いたら、僕と雨音はそれぞれ着替えてからもう一度合流して教室の扉を開くことになっていた。

「大丈夫かな、雨音喜んでくれるかな、、」

「わかんないけど、でもきっと大丈夫!それにこのサプライズは私たちの準備よりも和也の振る舞いが一番重要なんだからね!」

愛菜の言葉に身が引き締まる。間違いない、このサプライズで一番重要なのは僕だった。彼氏らしく、雨音が喜ぶ顔を作らなきゃダメだ。


「よし、そろそろ雨音迎えに行ってくる。」

「気合い入れて行ってこい!」

教室を出た僕は、急いで雨音の元へと向かった。

運転をしながら、10人で過ごした今までの日々を思い出す。

10人で行ったテーマパークも、みんなで回った文化祭も、花火も全部が大切な思い出で、いつも笑いが絶えなくて、もちろんその中には雨音の嬉しそうな顔がいくつもあった。


一人一人はアホなやつばっかりで個性の塊だったけど、集まると不思議な化学反応で、誰も欠かすことの出来ないかけがえのない存在になってた。

みんながいたから雨音とも仲良くなれて、みんながいてくれたから今もこうやって雨音と一緒に過ごす事ができてるって僕は心から思ってた。


車の中で勝手に涙が流れそうになったけれど、今はまだ早いんだって言い聞かせながら必死に涙を堪えて、雨音の元へ行く。

雨音とよく一緒に聞いて、2人が好きだった曲がたくさん詰め込まれてるプレイリストを流しながら、車を走らせていって、気が付けば雨音の家の前まで着いていた。


僕はゆっくりと深呼吸をしてから、雨音に電話をかける。

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