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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
MISSION:再び海に行こう
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挨拶をしよう

あらすじ:

 沖合に停泊したシルバーグリフォンからマリンバイクでワワララトの姫巫女の館に向かったジェラードたち一行

 そこには姫巫女と、彼女の侍従である双子が待っていた

「ようこそいらっしゃいました。私、姫巫女様の侍従をしておりますベラリーズと申します。あちらが姫巫女様と、私の姉であり同じく侍従であるベラリーズで……す。」


 キリっとよそ向きの顔で恭しく礼をするベルリーズさん。その言葉が途中で一瞬途切れたのは、紹介しようとした姫巫女様とベラリーズさんがにこやかな笑顔でこっちに手を振っていたからだろう。ちなみに姫巫女様の振った手の反対側には、しっかりと戦闘ヘリのブラックホーネットをデフォルメしたぬいぐるみが抱かれている。


「ありがとうございます。この度、コンラッド王の名代みょうだいとして派遣されましたジェラード・フォン・ミルビット。

 こちらが同じく名代であるサフィメラ姫とルビリア姫です。」


 後はお付きの者、って事でことで公式(・・)には紹介が不要である。


「……と、ラシェルとミスキスはご存じなので、今回追加されたのがこちらのハルカ。基本姫様たちの身の回りの世話をする想定です。」


 ルビィもサフィも「雄牛の角亭」での生活が長くなってきたので、身の回りのことくらいは普通にできるようになっている。もともとあの王家はそーゆーのはきっちりさせるところらしいが。


『ただ、ラシェル姉様。残念なことにドレスによっては一人で着られないものあるのです。』


 とはサフィの弁。まぁ、確かに補助が欲しいときもあるよね。


「そんなわけでまたお世話になります。」

「はい、かしこまりました。」


 とペコリと頭を下げるベルリーズさんだが、あたしたちと、あたしたちの背後、そして更に遠くに視線を移動させる。そしてため息。


「……そして色々説明をお願いいたします。」


 思いっきりびしょ濡れのあたしたち、マリンバイク、そして沖合に停泊しているシルバーグリフォンのことをどうやって説明してよいものやら、ってジェルに丸投げだけどさ。



「なるほど…… アレが黒き星を砕いた”天の光”だったのですか。」


 なんですか、その大層な名前は。

 なんというか、こー色々あって、この世界に現れた自称「邪神」を空間ごと破砕したんだけど、その思念?がこの惑星に「星」を落とす、と予告してきたわけだ。実際に落ちたら惑星が壊れる程ではないが、それでも地表に住む生命体は壊滅的な被害を受けることだろう。

 色んな意味で幸か不幸か、高速戦艦シルバーグリフォンには惑星ステラ破壊バスタークラスの兵器が搭載しており、そしてまぁ、あたしたちも壊し慣れている、と言いますか。そんなわけで、小惑星にも満たない岩塊レベルの「星」なんぞは壊すだけなら全く簡単だった。ただまぁ胡散臭いので原子レベルまでに分解するくらいに壊してきた。で、そこまで「遠く」じゃなかったので、タイミングさえ良ければ地上から見えたはずで。相変わらずだが、一光秒も破壊力が維持できる武器というのは物語の中だけでも勘弁してほしいもので。

 そしてそれが「天の光」と呼ばれているんか。へー、と思っていると、ローター音が聞こえてくる。


〈はーい、荷物持ってきたよ。あと、ディーナも直接会うのは久しぶり~〉


 戦闘ヘリのブラックホーネットが機体に吊り下げたコンテナを砂浜に置くと、自分もその隣に着地する。コンテナにはそれなりに動力が入っていて、自動で開閉したり、ある程度は自走できる便利なものだ。


「ホーネット!」


 喜色満面の姫巫女様が、あたしたちには目もくれず、鋭角的なフォルムのヘリコプターに駆け出していき、更にベルリーズさんが呆れたように顔に手を当てる。同じ顔のベラリーズさんは微笑ましく見ているのが対照的だ。


「ええと、その、姫様が申し訳ございません。」


 心底すまなそうにベルリーズさんが頭を下げるが、こちらの王女様は実に寛容であった。


「構いませんわ。お二人(・・・)の事は多少伺っております。羨ましいですわ。」

「羨ましい、ですか……」


 姫巫女様は腕の中のぬいぐるみが通信機を兼ねた移動ユニットなので、いつでも話せるはずだが、直接話した方が嬉しいらしい。乙女心って難しい。

 と、砂浜で立ち話をしていると、じわじわと暑くなってくる。ただでもここは常夏の国だ。砂浜で反射した太陽光が上から下からあたしたちを攻めたてる。って程でもないが。

 ただまぁ対処もしないでずっと炎天下にいるのはちょっと酷だ。


「申し訳ございません。女の子たちも一度着替えもしたいので、案内をお願いします。」

「あ、そうでした。立ち話もなんなので……」


 チラリと後ろを見たベルリーズさんが、姫巫女様が動かなそうな雰囲気を見て、諦めたように小さく首を振る。


「どうぞ、こちらへ。ご案内いたします。」


 姫巫女様とベラリーズさんをホーネットのところに置いて、あたしたちは姫巫女様用のゲストハウスみたいなところに向かう。ちらっとそっちを見てみたら、光学迷彩の応用なのか周囲の陽光を和らげていようで、ホーネットの周りの空間がちょっと周囲とは違う感じになっていた。グッジョブよ。



 とはいえ、この世界にエアコンなんてものはない。室内に入ったところで直射日光が遮られただけで、根本的な暑さは変わらない。


「…………」


 氷の魔女の二つ名を持つサフィメラ王女様はちょっとアンニュイそうに魔法を使うかどうか悩んでいるようだ。

 使えばそりゃ涼しくなるだろうけど、使い続けるのも大変なんだろうし。

 そういえば、前回は大型トレーラーのグレイエレファントがいて、コンテナ内の設備が使えたので色々楽だったんだが……


「ねぇ、ジェル?」

「……はぁ。」


 面倒くさそうな声を出しながらも、バーチャルディスプレイを広げ始めたので、元々の予定だったのか、あたしの視線での説得が効いたのかは知らんが、どうやらここに色々小細工をするようである。よきかなよきかな。

お読みいただきありがとうございます

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