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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
チーム・グリフォンのいない世界の話
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とある姉妹の話

あらすじ:

 とある国のとあるお城の中で、とある姉妹が……?

「姉様、準備はできました?」

「ええ、と言いたいところですが、自分で用意できるものがないのですよね。」


 金髪と銀髪の少女が悩んでいた。

 場所はとある王都の中心に屹立きつりつする、とある王城。ちなみに二人はコンラッド王国の第一王女サフィメラと第二王女ルビリアだ。王女である二人は基本身の回りのことは侍女なりメイドなり執事が行ってくれる。それでもこの王家の教育方針で、何でもかんでも人任せにはしていないが、それでも市井の同年代の子に比べれば、やっぱり「お姫様」である。


「でも姉様、ジェルさんのところに行ったら、大抵の物は揃うかもしれないの。」

「そう言われるとそうですね。あんまりジェラード様に頼るのもどうかとは思いますが、遠からず色々お願いすることになるでしょうね。」


 異世界の知恵者ジェラード。星をも砕く「力」を持っているが、基本面倒くさがりで、惰眠をこよなく愛する変わり者だが、比較的女性には甘い。というか、いつも隣にいる少女が「お願い」すると不承ふしょう不承ぶしょう重い腰を上げるというのがいつもの光景らしい。こちらの世界でも色々やらかした関係上、お金にはちっとも困っていない。地位や権力にも興味が無いので、何かを頼むなら「お願い(正しい意味の)」をするしかないわけだ。私利私欲に走ったり、利用しようとか思わなければ、案外甘い、らしい。


「ハンブロンに行ったら、姉様も一緒に町を歩くの。」

「でも私たちが町中を歩いたら…… あ、そういうことですね。」


 この世界では金髪・銀髪は珍しい。というか、王族や貴族には多いので、そういう意味で目立つ。ついでに黒髪は純粋に数が少ないのでこれまた目立つ。

 二人の話題にも上がったジェラードは黒髪、そして大抵一緒にいるラシェルは金髪と二人セットで目立つのだが、別に本人たち王族でも貴族でもないのであんまり気にしてないようだが。

 ではこのお姫様二人はどうか、というと、魔法が使えるので身を守るすべがあるといえばあるのだが、そもそも目立ちたくないし、身分がバレたら良からぬことを考えるやからもいることだろう。

 そんなときもまたジェラードで、彼が作った髪や目の色を変える薬を二人とも使ったことがある。


「姉様も知ってたの?」

「ええ、前に一度。シルバ兄様とオークション会場でジェラード様達に会った話はしましたよね? その時に少し。」

「アレ、凄かったの。」

「だからシルバ兄様が、ゴルド兄様に絶対教えないように、ってジェラード様に言ってましたわ。」


 クスクスとサフィメラ姫――サフィが笑うと、その時のやり取りが目に見えるようでルビリア姫――ルビィも同じ顔で笑みを浮かべる。

 ゴルド王子ことゴルディウスはこの国の第一皇子で、次の王に一番近いわけだが、絵に描いたような自由奔放ほんぽうでお目付け役でもある宮廷魔術師のギルバートの目を盗んでは紐の切れた風船のようにあっちこっとフラフラしている。そんな面倒な王子に変装に便利なアイテムを渡したらどうなるか、と考えると、第二王子シルバリアがそう頼むのも仕方がないことだろう。


「……やっぱりジェルさんラシェルがいないと寂しいの。」


 ルビィがポツリと呟く。

 王女である以上、そんなにそんなに王城を出られないが、それでも声を聞こうと思えば聞けるし、行こうと思えば行ける。助けを求めればあっという間に飛んできてくれることだろう。同じ世界にいるならば、だが。

 今彼らはこの世界とは違う世界――といっても全く想像できないのだが――に戻っていてる。それだけで心にポッカリと穴というか、何かを失っている感じがする。前にジェラードが「並行パラレル世界ワールドの同一人物」という話をしていて、ルビィとラシェルがそれかもしれない、と聞いてそんな気がしてきたが、この世界からいなくなって、更にそのことを実感してしまう。


「素敵なお二人ですよね。」


 ジェラードは医者や技術者として、ラシェルに関してはその心の強さに心酔しているし、二人とも妹の恩人だ。


「姉様もジェルさんのことを……?」


 どういう形の感情かは不明だが、ルビィはジェラードに好意を抱いている。それこそラシェルと同じくらいに。


「そうね、男性としても魅力的ですね。」


 サフィの言葉にルビィの表情が色々と変わる。そんな妹の姿に見えないように小さく笑う。


「でもどちらかというと『兄』というか…… ああ『義兄』になるかもしれませんね。なんかそんな感じなのですよね。」

「……!」


 姉の言った言葉の意味に気づいて、ルビィが顔を赤くする。具体的なイメージはわかないのだが、憧れはある。


「一緒に過ごしたらまた気持ちが変わるかもしれませんが、今のところは『家族』みたいになりたいな、とは思いますね。」

「それは楽しそうなの。」


 王族である二人は、それこそ庶民のような生活、いや人生とは程遠い。社会勉強と称してハンブロンの町で領主の補佐の勉強をする、という名目で滞在できるようになる。しばらくはそんな「夢」のような生活が送れるのだ。


「そのためには皆さんがちゃんと戻ってきてくれることを願いましょう。ルビィがそう願ったらラシェル姉様にも届くかもしれません。」

「うん。ルビィは頑張るの!」


 こぶしを握りしめてむん、と表情を引き締めるルビィに、サフィは優しく微笑むのであった。

お読みいただきありがとうございます

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