熱くなろう
あらすじ:
女の子たちはサウナに入る
ここは灼熱地獄だ……
ってボケるのもなんだが、今日はサウナに来ている。これは「雄牛の角亭」の隣にある都市騎士と、コンラッド王国の騎士団の宿舎、そこに併設された大浴場とサウナだ。使う人数が違うので「雄牛の角亭」の大浴場よりもずっと広い。
まぁ逆に広すぎて落ち着かないくらいだが。
この世界にはなかったサウナだが、意外と好評だった。というか、そもそも大浴場自体が大絶賛だった。一応、公衆浴場的なところはこのハンブロンの町にもあるが、水は井戸から汲んで薪を焚くようなもんだから、お湯の量もあんまり多くないし、タイミングが悪いと熱くもなければ綺麗でもないとか。
個人レベルで風呂を持てる人は余程の金持ちじゃなきゃ無理だし、それでもせいぜいバスタブ程度だとか。「雄牛の角亭」って贅沢だったのか。
やっぱり水も問題だよねー 水道が無いので、井戸から汲んでくるとか…… ああ、そうか。魔法で水を出すってこともできるのかな? 温めるのも魔法でできそうだし。
……そんなに魔法を使える人はいないだろうけど、金持ちならってちょっと考えたけど。
まぁ、そんなわけでサウナだ。この辺は基本冷帯にあたるそうで夏でもそこまで暑くならないわけで。そうなると灼熱のサウナは皆未体験だったらしく、最初は恐る恐るだったけど、すぐにその存在に慣れた。
慣れたとはいえ、暑さに耐えられるかどうかはまた別の話で、三人娘+2に関して言えば、リリーとルビィは耐えきれずにすぐに出て行ってしまうが、クールダウンしたら戻ってくるので、それはそれで楽しんでいるようだ。ミスキスはもうちょっと耐えられるみたいだが――というか、汗かいているように見えないんだけど――二人に付き合って、同じタイミングで出入りしている。
サフィはこっそり魔法で涼しくしていたんだけど、あたしの「眼」で見えたんで止めさせた。ちょっと恨めしそうな顔をしたのが珍しくて思わず吹き出してしまって、更に睨まれてしまった。それでもロイヤルなんだから凄いなぁ。
で、一番熱心だったのはアイラで、何度か言ってるが、周りが(あたしも含めて)スレンダーなだけで、アイラは決して太っていない。出るところは出ているし、引っ込んでるところは引っ込んでいる。なかなかのグラマーさんで、少し分けて欲しいくらいで。……いや、あたしは引っ込んでるところは引っ込んでるのよ。もう少しボリュームが欲しいだけで。
まぁ、立ち仕事が多いとはいえ、食生活の変化、そしてつまみ食いの罪が祟ったのか、色々数値が気になるらしい。あたしの感覚だと全然問題ないんだけどね。そこはまぁ、乙女心というべきか。
あ、ちなみに我らが領主さまもサウナをご所望されたのだが、お昼のアルコールが入っていたために、ジェルからのドクターストップがかかった。「いや、それくらい」って言いかけたのを、本気でマジな目だったのでジェニーさんもさすがに口を閉じてた。
ジェル、そういうとこ厳しいからねぇ。
まぁ、倒れられたら診察するのがジェルくらいだから勘弁したいところなんだろうけど。いや、リーナちゃんもある程度は診れるのよ。資格はないけど医者レベルの知識と技術は持ってるんで。でも多分そういうことじゃないだろうし。そんなわけで、ジェニーさんはアルコールが抜けてからってことになる。
「……ラシェルは随分と平気ね。」
「まぁさすがに初めてじゃないし。」
「そうですわね。ラシェル姉様は初めてじゃないのですよね。ズルいです……」
頑張りすぎて息も絶え絶えのアイラと、拗ねた顔の「氷の魔女」ことサフィメラ姫――サフィに左右からチクチク言われる。
ん~ 時間を考えるとそろそろ一度出た方がいいかな?
「はい、一回出る!」
二人の腕を掴んで立たせる。顔色も問題ないし、問題はなさそうだ。サウナに入ったことあるのがあたしとリーナちゃんだけなので、先にジェルに軽くレクチャー受けさせられたのよ。今日はアイラたちに体験させるために店の方はリーナちゃんに任せてあるんで、教えられるのがあたししかいないって、まぁ大浴場やサウナのあちこちに注意書きは書いてあるんで大丈夫だと思う。騎士団はもとより、都市騎士も比較的識字率は高いそうで。
ただまぁ、あたしの左右の女の子たちは騎士たちと体力的には普通のようなので、気をつけねば。
サウナルームを出るときに入れ違いでリリー・ルビィ・ミスキスの三人が入ってくる。すれ違いにミスキスがあたしの方を見て小さく視線を下げたので、こっちの二人は任せてくれってことだろうか。頼りになるなぁ。
外に出ると、まぁ大浴場なんだが生温い空気すら涼しく感じる。さて、ここからのオプションはいくつかあるが、剛の者ここで冷水を浴びて水風呂にドボン、らしいのだが、なかなかにハート(物理)に来るらしいとか。これでもか弱い女の子なので、オプションを提示したうえであたしはかけ湯をしてから、ぬるま湯に浸かって温度を下げ、設置してあるチェアで外気浴をして、またサウナへ戻るを何度か。可能ならほどほど水分の補給もした方がいい。……ってあるな。いたれりつくせり、って奴か。
二人ともあたしと同じように過ごすとこれを三度ほど。そのころには慣れたのか、アイラとサフィに笑顔が戻ってきた。
たまにはこうやってたっぷり汗を流すのも健康的にも精神的にも良いかもしれない。
そして、随分と気に入ったアイラが、ジェルに「雄牛の角亭」にもサウナを作ってくれと(身体を使って)お願いすることになるとは。そして「雄牛の角亭」がまた少し大きくなる未来が待っていた。
お読みいただきありがとうございます
……昨日上げるのをすっかり忘れてました。夜中に仕事をしていたのが原因だと思われるのですが。切ない……(何故に)
ちなみに「タオルを巻いているか否か」は敢えて書きませんでしたw ご想像にお任せしますw




