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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
MISSION:王都を回ろう
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帰路につこう

あらすじ:

 なんかいい雰囲気?になりかけたジェラードとラシェルだが、そうはうまくいかないようで

「いやぁ、助かりました。こんなところでお二人に会えるとは、気まぐれと幸運の神に感謝いたします。」

「いえいえ、こちらこそ食料をいただけて助かりました。もう少しで飢えてしまうところでしたよ。」

「お役に立てて何よりです。」


 王都コンラッドからハンブロンに戻る途中、パンサー2が見つけたのは車軸が壊れて立ち往生していた馬車だ。見捨てる気はさらさら無いが、ちょっとした急接近を邪魔された形になったのがちょっとこー 心残り? みたいな感じになってしまったのだが、それは横に置いて、と。

 馬車に乗っていたのはハンブロンの町にも何回か来ていた商人で、ジェルはともかく何度か見ていて顔は憶えている。ちなみに常時白衣の黒髪黒目の男(ジェル)と、金髪の少女(あたし)の組み合わせは目立つのか、こっちは知らないけど向こうは知ってる、ってパターンが多くて切ない。ジェルのせいにしたいんだけど、この世界、金髪も目立つんだよね…… 何でも貴族とか王族に多いらしくてさー

 幸いというか、基本常時積んでいる箱型汎用作業機械キューブとパンサーにあった資材で応急処置(ヘタしたら元よりも丈夫になるくらい)をすると、何かお礼を、って言われたので、持っていた食料を分けてもらった。向こうは長旅なので多少の余裕はあるし、あたしたちは一食分でいいので、快く応じてくれた。

 向こうは王都に向かう途中だったのでその場で分かれて、邪魔にならないように街道を外れたところで一度パンサー2を止めた。


 貰ったご飯はパンに干し肉とチーズを挟んだ物なのだが、これが見事に固い。キューブの中にコンロ代わりに使えるのがいたので、色々(ジェル)が小細工をした。

 まず干し肉を水につけて柔らかくし、パンも濡らした後に温めて柔らかく。それで戻した干し肉を焼いたのとチーズを挟んで更に焼いて、それなりの味になった。


「ん~ これは元気出ませんな。」


 同感。というか、元々あたしたちの口が肥えているってわけじゃないが、パーフェクトシェフのリーナちゃんのおかげで食事に不満は何も感じなかった。逆に王様が食べるようなものですら味が濃すぎて閉口したくらいだ。

 これはそれこそ「庶民」の味なんだろうが、とにかく固い。干せてカッチカチだ。そして味が素っ気ない。純粋に塩や調味料がお高いからなんだろうけど。

 普通の移動なら王都からハンブロンまで一週間だ。冷蔵庫も無ければ、真空パックも無い常温保存が基本の世界だ。えっと、歴史を紐解けば加熱殺菌したものを、容器に密閉していたそうで。


「……火や水は使える。前に馬車用に作った即席めんでも良いけど、もう少し何か無いですかねぇ。」


 ジェルがブツブツ大きな独り言をボヤいている。パンサー2の自動運転だから安心だが、相当集中しているようだ。よほど「保存食」が相当お気に召さなかったらしい。


「まぁ、レトルトとかは難しいから、フリーズドライ物になっちゃうよねー」

「……ふむ。」


 お、何かジェルの琴線に触れたか?


「フリーズドライには限りませんが、乾燥させたものというのは良いかもしれませんね。後は作る方法ですか……」

「まぁ、この世界にはそういうの作る機械自体ないしねぇ。」

「ラシェル! なるほど良い発想です!」


 おわ!


 急にジェルに抱きしめられた。頭をなでなでされる。

 いや、ちょっと待った。心の準備が……


 ……ま、いいか。


 もしかしてジェル、ちょっと疲れてる?

 そういやぁ、元の世界に戻って、また帰ってきた思ったら息つく暇も無く今日まで至ってるわけで。

 結構ヘビーな日々だわね。


「ねぇ、ジェル。」


 なんか甘やかしてるなーって気もするが、仕方がないので抱きしめ返す。


「ちょっと急ぎすぎよ。こう、やっぱりね『ダラダラしよう』って強い意志を持たないと、そうならないんじゃないかな?」

「随分と矛盾した発言ですな。」


 ただまぁ、ヒトって楽するために一生懸命働くところはあるんだろうね。そもそもあたしの方が何もしてないわけで。あ、でもたまーにすっごい重要なところで色々やってるのよ。結果論だけどさ。


「あ~ ちなみに、」


 さすがに恥ずかしくなってきたし、そもそも「薔薇の下」モードにもしてないので、パンサーにも見られているわけで。拒絶にならないようにやんわりと距離を開ける。


「何が『良い発想』なの?」

「なるほど、」


 ジェルがふむ、と小さく頷く。


「電気機器を作るにしても普及させられるほどできないし、と思ったんですが、せっかくだからこちらの技術――魔道具で作ればいいんじゃないか、と。」


 なぬ?!


「え? 作れるの……?」

「まぁ詳しい人もいますし、それこそパワーソースさえできれば、あとはそれを調整したり伝達する部分は既存の技術でもできるんですよ。」


 確かに、風を出す部分さえ作れれば、送風機は作れるわな。


「魔石とやらがどういう風に使えるかは調べる必要がありますね……

 なんかこう、さっきまではちょっと面倒だなぁって思ってましたが、ラシェルのおかげで楽しくなってきました。」


 おうおう、それは良かったですねぇ。


「さっきの続きは戻ったらゆっくりと、ですな。」


 …………


 ……いや、しないって。



 多分……

MISSION:王都を回ろう

...COMPLETE


お読みいただきありがとうございます

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