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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
MISSION:王都を回ろう
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服とかの話をしよう

あらすじ:

 王都の服屋のパレリの所で話しこむジェラードとラシェル

「まずはこれが大変貴重な情報ってことは理解されてますか?」

「そうですねぇ、確かに貴重な情報かもしれませんが、飽くまでも誰かがいつかは思いつくことです。」


 王都コンラッドの服屋の店長パレリさんが怖いくらい真剣な表情を浮かべている。


「それに…… これはこの世界の技術ではないですよね。」


 彼女の指摘にジェルがふむ、と唸る。


「質問に質問で返して恐縮ですが、異世界からの転移者ってどこまで浸透しているんですか?」

「……実はわたし、祖母が異世界の人って聞いています。祖母の服を見たのがきっかけで店を始めたようなものでして。」


 へぇ、そういう人もいるんだ。

 そりゃいるか。


「お婆様って大変だったの?}


 と、つい聞いてみた。あたしとしてはちょっと頑張ったつもりだが、艶っぽい顔でクププと笑われた。


「そっれがねぇ、大変なのは大変だったらしいんだけどー お爺様と出会ってからは冒険者として一緒にいる内に大恋愛だって!

 一財産築いて今は悠々自適に暮らしてますわ。」


 その口調には誇らしげな響きが感じられた。

 ちょっと安心。


「……異世界人はそんなに多いわけじゃないんですな。」

「まぁ、わたしも多くは知りませんね。オークショナーのマダムくらいでしょうか。」


 お、マダム・バタフライをご存じか。って同じ第三層の商人同士ってとこか?


「おや、私も彼女とは知己ちきを得てますな。」


 とジェルが言うと、これまたパレリさんが笑みを浮かべる。


「えぇえぇ、それこそパトロン様のおかげといえばおかげですわね。」


 話を聞いてみると、(ジェルが)ここで何度か服を頼んだ話を聞いてここに来たらしい。そこでそれこそ、あたしとリーナちゃんの服と下着を見本に見せてから変わった品揃えがマダム・バタフライことチョーコさんにヒットしたそうで、すっかり常連さんになったそうで。


「マダムは謎に包まれた商人ということでしたが、マスクの下は意外と普通の女性で驚きましたわ。」


 服の下は意外とスレンダーでしたが、と残酷な秘密を教えられた。そうは見えなかったが…… かさ増し?! まぁ、多分あたしには言う資格はないような気がするが。


「それにしてもパトロン様はあのグラディン様ともお知り合いとのことで、随分と顔がお広く……」

「好きで知り合ったわけでもないんですがね。」


 と面倒くさそうに肩を竦めるジェル。


「基本、こちらの望みは我々の求める服が入手しやすい環境です。もうちょっと広まれば、私たちの服装も目立たなくなりますし。」


 と手を広げる。あたしはともかく、ジェルはその白衣を脱げば少しは目立たなく……はならないか。こいつ、意外と存在感あるんだよね。気配を消してるときは本気で分からなくなるけど。


「それに関しましてはわたしもお手伝いできそうですわ。あの本を見たら間違いなく新しい服を作り出せますわ。」

「それはそれは。

 まぁ私はどうでもいいので、適当に広めてください。」


 そっけないジェルにパレリさんは口元に指を当てて、ん~と視線を上に向けて唸る。なかなかに色っぽい仕草だ。と、ポン、と手を叩く。


「そういえば、忘れてましたわ。

 パトロン様の服もお作りしたいと思っていましたし、そちらのお嬢様のもいつかは、と。」


 笑みは浮かべているはずなのに、目の奥に怪しい光が見えて、気のせいかもしれないが身体が強張る。


「まずは……」


 パレリさんの姿が消える!


「何?!」


 ジェルの声が聞こえたかと思うと、その背後にパレリさんが回り込んでいた。


「計測させていただきますわ。」


 有無を言わせず、とはこのことか。気づくとジェルが白衣ごと店の奥へと連れていかれていた。


 ……いや、マジか。


 なんかちょー逃げたい気分だが、王都のど真ん中で一人逃げ出したところで、どうにかなるイメージが全くわかない。

 不安で押しつぶされそうになっていると――ってことでもなく、店内の服を眺めたり、持ち込んだファッション雑誌をペラペラめくっていると、どこか憔悴したようなジェルが戻ってきた。

 あたしのそばまで来ると、ペタンと横座りになって、サメザメと泣き真似をする。


「もう、お嫁に行けない……」


 行ける未来予想図あったんかい。

 と、その子芝居で気力を取り戻したのか、スッとジェルが立ち上がると、真剣な表情を浮かべる。


「先に謝っておきます。私にはラシェルを助けるすべがありませんでした。」


 へ? と思う前に、肩に手が置かれる。

 って、そーゆーことかぁ!!


 ジェルですら抵抗できなかったことがあたしでどーこーできるわけがない。抗うこともできずに、あたしも店の奥に引きずり込まれるのであった。



 まぁ厳密にいえば、そこまで「何」があったわけじゃないが、二人揃ってどこか放心というか虚脱気分で店を出る。たんまりの「お土産」も貰ったし、次来るときくらいまでにはあたしたち二人の分の服も用意してくれるとか。うん、センスも縫製技術も文句なしなんだけどね。なんだけどさ……

 ……えっと、あと「洗礼」を受けてないのはリーナちゃんか? 姫様ズはさすがに不敬になりそうだし。と邪悪な考えが頭をよぎる。


「ハンブロンに戻ったら、アイラ達に優しくしようと思います。」


 疲れた声でジェルがボヤく。


 そこまで言わせるとは人生ってままならないなんだね、うん。

お読みいただきありがとうございました

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