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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
MISSION:王都を回ろう

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一夜を過ごそう

あらすじ:

 王都で宿を紹介されたジェラードとラシェル。おそらくは王都でもトップクラスの「ホテル」であった。

 王都でチョーコさんに教えてもらったのは宿屋と呼ぶのが躊躇われるくらいの、まさに「ホテル」であった。まぁ、エレベーター的なものが無いので、外とから見た感じは五階建てくらいだろうか。最上階となると、セキュリティは良いんだろうけど、行き来するだけで疲れそうだ。

 で、あたしたちが案内されたのは三階で個人レベルで使うには最高級クラスの部屋だった。それ以上になると、貴族とか王族とかそういう人たちがお付きの人をわんさかと引きつれた集団とかが使うようなとこらしい。

 お値段もなかなかのものらしいが、先にチョーコさんが払ってくれていたとのこと。まぁ、あたしが自慢することじゃないが、ジェルはちょーお金持ちなので全然困らないくらいの金額って言っておこう。


 ……値段聞いてちょっとビックリしたけどさ。


 晩御飯も予約されてあって、あたしたちが(って主にリーナちゃんなんだけど)がひっそり広めた「異世界の料理」が出されてちょっと驚いた。しかもなかなか洗練されていて、ドレスコードがちょっと気になるくらいだった。って、まぁジェルは白衣を着ているから目立たないが、白衣の下は意外とキッチリしているし、あたしだって年頃の女の子なわけで、こちら基準なら貴族のお忍びくらいの服装はいつもしているので、大丈夫なんだろうけど。

 味もなかなかで、なんというかあたしたちの世界の味も、こちらの世界で受け入れられていると思うと、それはそれで感慨深いところがある。

 小さいながらもお風呂があって――このホテル(って呼んじゃう)は魔法による光や炎を使っていて快適だ――、なかなかにいたれりくせりってやつだ。意味はよく分からないけど。

 お風呂上がりで身体がほこほこしたところに冷たいドリンクでクールダウンして部屋に戻る。


「…………」


 戻ってみるとジェルがベッドに腰掛け、バーチャルディスプレイを広げていつものようにモチャモチャ何かしていた。

 無言であたしもジェルに触れるくらいの位置に腰掛ける。

 そこで初めて気づいたようにピクッと反応するが、気づかないわけがない。あたしが近くに座ったからちょっと驚いたんだろう。


 ……別にいいじゃん。


 焦ってるわけじゃないけど、なんかこー、ね? 三人娘やルビィがジェルとの距離がゆるやか~に近づいてきているのよね。一度元の世界に行って帰ってきたあたりからかな?

 多分だけど、ジェルが「ある日急にいなくなる人」じゃないと理解したのか、急がなくなったようだ。

 確かに、事故とかそういうので亡くなっての別離ならともかく、お互い生きているのに二度と会えない場所にいる、というのはなかなかに辛いことなのだろう。

 まぁ、それでもジェルがちょちょいのちょい、と行き来を(ある程度は)できるようになったみたいで、おそらく通信とかもできるようになったみたいだし。

 一応これからは月一くらいのペースであたしたちの世界に戻って、物を仕入れたりするとかで。少なくとも向こうではあたしたち(チーム・グリフォン)じゃないと解決できないような事件は起きていないようで宇宙は平和だ。

 まぁ、何かあるとしたら、こちらの世界でシルバーグリフォンが故障して、あたしたちの世界に戻れなくなる、ってことかなー その時はその時でこっちの世界でゆっくりするしかないわけで。いつかは直せそうな気はするけどね。


「……シェル、ラシェル、」


 色々考え込んだせいか、ジェルが声をかけているのに気づくのが遅れた。


「何かね?」


 つい尊大に返してしまうが、ジェルはにこりともしないで、あたしの後ろを指さす。


「そっち向いてください。」


 手にブラシとドライヤーがあるので髪を乾かしてくれるようだ。まぁ、確かに髪を乾かさずに寝るのはいかがしたものか、と思っていたけど、ジェルがしてくれるとは…… 純粋に珍しいというか、初めてかも?


 ……そうか。


 何となく分かった(気になっているだけかもしれないけど)んで、何も言わずにジェルに背中を向ける。


「失礼します。」


 温風が髪に触れるのを感じる。小器用なジェルだが、ブラシを動かす手はどこかぎこちない、というか…… さすがのジェルでもまともに見たことないことは分からんだろ。このままやらせておくのもいいのかもしれないが「次」があるかもしれない、と思ったら少しはスキルアップを期待しておきたい。


「ジェル、貸して。」


 後ろに手を出すと、ブラシとドライヤーが渡されたので、左側だけ自分で髪を乾かす。昔から長いので自分で言うのもなんだが手慣れたものだ。


 ……なんか今更だけど、どっからドライヤー出したのかツッコんだ方がいいのかな?


 とか考えている内に、片方終わったので、後ろ手に――つまり顔を見ずに――ブラシとドライヤーを返す。


「…………」


 後ろの気配が動いて、残り半分に温風をかける。一度見たからかさっきよりはマシだし、ブラシの動きも滑らかだ。

 ただただ温風の音だけが二人の間に流れる。こーゆーのも悪くない。なんかこー ちょっとだけ「前進」したんじゃなかろうかって気もする。あたしも、ジェルも。


 夜は更けていく。

お読みいただきありがとうございます

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