表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
MISSION:王都を回ろう
59/131

INTERMISSON-02 執事頭は楽しんでいる

あらすじ:

 マダム・バタフライことチョーコがジェラードにタブレットを頼んだ理由は至極簡単明快なことであった


視点:三人称

 ジェラードとラシェルが屋敷を出た後、仕事に戻る、と周りに言って執務室に戻ったマダム・バタフライことチョーコと、執事頭ことルアン。部屋に入った瞬間、ルアンが後ろ手にドアをロックすると、チョーコが机に着く前に前に回り込んだ。


「チョーコチョーコ、早く早く!」


 今はオフです、って意味なんだろうか、さっきまで着ていた執事服からダボっとした私服に変わっている。

 貼りついたような笑顔ながらも、どこか子供っぽい口調でチョーコに詰め寄った。


「…………」


 言いたいことは色々あったが、自分の板状端末タブレットと一緒に小脇に抱えていた一回り小さいタブレットをルアンに手渡す。

 受け取るや否や、目を輝かせて画面に触れる。慣れた様子で表示を切り替えると、満足した様子で頷くと思ったら、急にジトッとした視線をチョーコに向ける。


「チョーコぉ、僕が欲しがったのバラさないでよぉ。」

「無理無理。絶対無理! 言い訳思いつかなかったし、多分普通にジェラードさんにバレるって! 実際バレてたし……」

「そうだけどさぁ……」


 パパパ、と表示を切り替えて機能を確かめている。基本操作自体はチョーコのやっているのを後ろから見ていてなんとなく、と思ったら、


「……チョーコ、やっぱり分からない。」


 さすがの暗殺者として色んなスキルを身に着けたルアンだとしても、さすがに異世界のテクノロジーは難しいらしい。


「え~ どれどれ……?」


 執務机に身を乗り出すようにタブレットを置くが、チョーコからは反対向きなので説明がしづらいし、これで自分の方に向けたら今度はルアンが分かりづらい。


「ん~ よし。」


 何を思いついたのか、チョーコを椅子から立たせると、疑問符を出したままの彼女の背後に音もなく回り込む。少しかがんで、チョーコの膝の裏あたりに手を伸ばすと、そのままヒョイ、と持ち上げた。


「ひょわ?!」


 愉快な悲鳴を上げながら後ろに倒れそうになるが、すかさずもうルアンがもう片手で支えると、ふわりとチョーコの身体が宙に浮く。


「よいしょ、と。」


 そんなに力が入ってない声だが、そんなに体躯が大きくもないルアンが、同じくらいの身長のチョーコを軽々持ち上げている。

 横抱き、しかも「お姫様抱っこ」の状態になったチョーコはパニック寸前で暴れそうになるが、どこか理性は下手に動くと危ないとは理解していた。そして感情は初めての体験で、なおかつ相手がルアンなら……アリだと。

 ただ、それこそ同じくらいの背丈で、どちらかというと線の細い美少年――というかショタ――系のスピードキャラと思っていたルアンが、こういう力技もできるとはチョーコも予想外だった。

 チョーコ自身も若干の身体強化魔法――彼女は敏捷性の方が得意なのだが――が使えるから不思議でもなんでもないのだが。


「……と、」


 そのままさっきチョーコが座っていた椅子に腰かけると、片手て彼女を支えながら、机に置いてあったタブレットを引き寄せる。


「ほらチョーコ、これで二人とも見やすくない?」

「ひょえ?!」


 それどころじゃなかったチョーコは、急に(でもないのだが)声をかけられて、またも珍妙な声を上げてしまう。多分、顔に触ったら熱を持っていることだろう。


「さっきから変な顔したけどどうしたの?」


 優秀な暗殺者アサシンだったルアンだが、どうやら人の心の機微には詳しくないらしい。おそらく物理特化なのだろう。


(これで甘い言葉をささやかれたら、本気でヤバいかも。)


 スーハ―スーハ―。


 首をかしげるルアンをよそに、チョーコは深呼吸をして心を落ち着かせる。落ち着かないが。


「よし。」

「何が『よし』なの?」

「……気にしないで。じゃあ操作教えるね。」

「うん、お願い。」


 ルアンがいつもの貼りついたような笑顔じゃなくて、ふんわりとした優しい笑顔を浮かべる。そして至近距離のチョーコが首の筋が違えそうになるほど急激に顔を逸らす。


「チョーコ、最近変だよ。」


 というやり取りののち、ルアンの膝に座らせられるという拷問なのかご褒美なのか分からない状況でタブレットの操作を教える。


「あ、なるほど。そういうことか。」

「文字、っていうか、言葉がまだよく分からないんだよね。」

「早くチョーコが読んでいた『まんが』って奴を読みたいなぁ。」


 ……そもそもこうなった理由が、一人寝室でタブレットの漫画を読み漁っていて寝坊したので、執事頭としてルアンに叱られたのが始まりだった。

 理由を聞かれて何の気なしにタブレットとそのデータのことを説明したら、凄く食いついてきて、その日はべったりくっつかれて漫画の翻訳&朗読をさせられた。

 さすがに身と心が持たないので、ルアン用のタブレットも、と言うことになったのだ。


(ルアンなら…… 大丈夫だよね?)


 そういやぁアニメとかもあったけど、それに気づいたらどうなるんだろうか。自分と違って仕事はキッチリするルアンではあるので心配はしないのだが、こういう「文化」って人を変えてしまうかもしれないしなぁ。

 チョーコは自分がそこまで強い人間じゃないので、どうしても不安に感じてしまった。



 後日。


「え? 確かに先は気になるけど、一日五冊と決めてるからね。それにしても読み切れないほどあるからなぁ。あ、でもチョーコは夜更かし注意ね。」


 チョーコが心配するまでもなくルアンは強かった。

お読みいただきありがとうございました


……また昨日上げるの忘れてた(めそめそ)

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ