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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
MISSION:色々回ろう

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ドワーフさんたちに会いに行こう

あらすじ:

 ジェラードとラシェルが向かったのは、ハンブロンの町の醸造所だった

「お、ここって。」

「そうですね。」


 今日はSUVタイプのパンサー2に乗って移動。なんか小さいコンテナが二つくらいだった気がする。

 ハンブロンの町を走ることしばし。見覚えのある建物に到着した。


「醸造所です。」

「おや、ご両人。」


 中年ぐらいの男性がパンサー2に近づいてきた。ここで働くヨハンさんだ。詳細は省くが(きっとどこかにまとまっている)、ヨハンさんは「醸造」や「熟成」の魔法が使える魔法使いだ。具体的には年単位でかかる自然現象を条件付きとはいえ数分程度の短縮することができるので、醸造所では「神の手」と酒造りのドワーフたちに崇められている、とか。ドワーフっていうのは、当然あたしたちの世界にはいなかったのだが、人間よりも小柄だが髭もじゃで、ずんぐりむっくりでおそらく普通に重いと思う。見かけ通りに力強く、見かけに反して器用らしく、大体鉱山か、金属を扱うところ、そして酒造りに携わっていることが多いそうだ。で、種族的に酒好きで酒に強いとか。


「先日も言った気がしますが、改めて。

 どうぞお帰りなさいませ。」


 丁寧に頭を下げるヨハンさんだが、あたし達二人を見て、やわらかい笑みを浮かべる。


「こういう言い方もどうかと思いますが、やはりお二人が揃っていると落ち着きますね。

 さて、本日はどのような用件で?」


 何か言い返そうかと思ったら、さらっと流されたので、ジェルと二人して微妙な顔になりかける。


「……あ、そうそう。我々の世界からのお土産ですね。ここのドワーフの人たち向けなので、ハンスさんには…… あ、これもありましたか。」


 コンテナの中からジェルが瓶詰めを取り出すとそれを手渡す。


「ある種の果実を塩漬けにしたもので、酸味が強く人を選ぶかもしれませんが、これも時間をかけて漬け込んだものです。

 レシピは後でお渡しします。」

「それは…… 楽しみですね。」


 このハンスさん。一時期は有用な魔法が使えない、ということで故郷に帰るつもりだったのだが、ジェルが使い道を見出して現在に至る、という感じだ。

 そのおかげか、もともとの性格なのか、調味料や発酵食品作りに凝るようになってしまった。魔法を使った場合、若干質が落ちるらしいが、それでも数か月とか期間をかけずに「実験」できるのはありがたい。徐々に大量生産が始まっていて、この町の新しい特産物になるかもしれない、って領主様が半分キレ気味で言っていた。新しい仕事が増えたんだろう、と。


「ということは、今日はお酒を、ですか?」

「そうなりますね。我々の世界でも高級品のお酒を見繕ってきたので、ゴールの一つと思ってみてもらえれば。」

「ほぉ。」


 ハンスさんも興味津々だ。そんなに飲まないとは言ってたけど、お酒の味は気になるようだ。


「では皆さんを集めてきますね。」


 どこかウキウキとする後姿が醸造所の中に消えてしばし、どやどやとドワーフの一団が現れてあたしたちが何も言う前にパンサー2のコンテナをよいしょよいしょと醸造所内に運んでいく。……正直、彼らを見分ける方法が分からない。

 え? と思っている間に持って行かれたので、ジェルと顔を見合わせてから色々思い出して改めて醸造所に目を向ける。そこにはハンスさんが申し訳なさそうな顔で手招きしているので、どこか釈然としない物を感じながら、あたしたちも建物の中に向かった。



「なんじゃこの箱は! 何でできているか分からんぞ。」

「しかもどこから開けるんだ? 酒が入っているんだろ?」

「この加工技術、凄いな……」


 集まるための部屋なんだろうか。

 ドワーフたちに合わせて低めで大きなテーブルがあり、その上に持ってきたコンテナ二つが乗っている。簡易とはいえロックがかかっているので、開くわけもない。というか、そもそもいきなり持って行くとは思わなかった。で、あまりにも開かないからって、今度は箱の構造が気になって仕方がないらしい。

 その辺は後で、ってどうにかジェルがなだめて、コンテナを開けた。

 中には硬質プラスチック製の瓶が並んでいて、その中には琥珀色の液体で満たされているのだが、コンテナの容量の割にはあんまり入っていない。一応は精密なもの扱いか?

 コンテナの中には同じ(と思われる)材質のコップも入っていて、人数分(ドワーフさんたち+ハンスさん+あたしたち二人)を取り出すと、そこに指一本分――ワンフィンガーって奴だ――注ぐ。相変わらず謎の器用さを発揮して同じくらいの量で不公平感が無いようだ。というか、この雰囲気だとちょっとの差で喧嘩になりかねない。

 少ないのぉ、とか文句が聞こえるが、気にせずにコップをそれぞれの前に滑らせる。


「まずは香りを感じてみてください。」


 すぐに手を伸ばそうとするドワーフさんたちをジェルが制止する。お互いに顔を見合わせてから、面倒くさいなぁって風でコップに鼻を近づけたところで全員が直立不動になった。


「これは……!」


 ハンスさんも目を見張る。

 ん~ これってウィスキーかなんかだよね? あたしはあんまり飲まないから知らんけどさぁ、ってぇ?!


「これは麦から作った蒸留酒です。」


 ジェルの説明にあちこちから疑問の声が上がる。いや、確かにウィスキーだと思うんだけど、これはおそらく……


「ただし、これは五十年寝かしたもので、大変貴重な物だと思われます。」


 ジェルの種明かしに、皆の口から思い溜息が漏れたのであった。

お読みいただきありがとうございます

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