色々始めよう
あらすじ:
領主のジェニファーだけじゃなく、グラディンやカエデにも用意した服を着てもらった
「「「「わ~」」」」
「まぁ。」
「ほほぉ。」
三人娘と王女ズと領主さまであるジェニーさんが感嘆の声を上げる。
「素敵ですね。」
「似合ってるな。」
「いいじゃねぇか。」
リーナちゃん・ヒューイ・カイルはどこか無難な誉め言葉を。
「「…………」」
あたしとジェルはコメントを控えた。
ついでに目をそらした。こういう時に息が合うのは良いんだか悪いんだか。
「待てぃ! 二人にそうされると儂もさすがに傷つくぞい!」
こう見かけは良いんだ、見かけは。
狸の獣人のグラディンさんはあたしたちの世界で買ってきた服に着替えきた。外見年齢に合わせて「ちょっと隣の頼れるお姉さん」風にコーディネートしてみた。が、中身がアレだと知っていると、ちょっと違和感が。若作りとも違うんだが、細かい動きとか所作とかね、何となく若々しくないんだ。
「まぁ良いわ。どうせ儂がこんな格好したってどうしようもないわい。」
「そんなことないー お婆ちゃん素敵だよ。」
「うん。綺麗なのー」
これまたリリーとルビィに言われて、一瞬ビックリした顔をしながらも、頬が緩む。で、その直後、急に頭を抱えて仰け反った。なかなかの背筋力だ。って何事?!
「ああ、こら狸婆さん、売ったらいくらになるやろうな、ってちょこっと考えてもうたんやな。」
……なるほど、確かに異世界の素材不明かつデザインもこっちには無いものだ。売ったらお高いだろう。でも自分にってプレゼントされた服で、しかもあんなキラキラした目で見られたんだし、それを売ったら、って考えただけでそりゃ罪悪感半端ないんだろうな。って随分と甘いことで。
まぁ、そっちの方がいいんだろうけどさ。
って、そういえば。
「カエデ、その服はどう?」
「こらええな。なんちゅーか、その、すっきりしとるな。」
こー 大きいモノをお持ちの人は、胸元が開いていたり、逆に締まりすぎてもダメ。で、身体にぴったりくっつくのもラインが出て目立ってしまう。あとは立体縫製で変によれたり引きつったようにならないので、すっきりしつつも、ふんわりとした布感で腰回しの細さを強調する――いや、強調せんでも細いんだが――デザインで……も、やっぱり大きいなぁ。へこめ。
じゃなくて。
インナーも特別あつらえの優しくかつしっかりホールドをしてくれるものだ。こっちじゃ再現が難しそうだから結構な数(&デザイン)を用意したのは余談だ。
二人揃って旅装束には向かないが、町歩きとか家でのんびりするにはいいんじゃなかろうか。いや、部屋着してはちょっと豪華か?
「でもすまんな。こういう言い方はなんじゃが、婿殿にはお金を使わしてしまったようじゃのぉ。」
「その辺はお気になさらずに。向こうではお金にちっとも困ってないので。」
「嫌味でもなんでもなく、本気でそう言ってるようじゃな。さすがは婿殿。」
グラディンさんの言葉にもジェルはいつものようにそっけない態度だが、これは事実なのでどうしようもない。宇宙船の部品とか、大きいから高いものもあれば、手のひらサイズで高級車が普通に買えそうな物もある。
……そういやぁジェルに「これ持っててください」って気軽に渡された部品が、その手の物だったことがあって。後で教えてもらって「知らないとそんなもんですよ」って確かに正しいとは思ったが、殴りたい衝動に駆られたのも人としては正しいと思う。
それはともかく。
なんやかんだで、グラディンさんもカエデも喜んでくれたようだ。好みに合うかどうかが不安だったが、うまくいったようだ。まぁ、いくつかネタっぽい服も入れておいたので、それに関しては…… いずれ。
「まぁ、よい。このような戯れもたまには良かろう。儂かて女子じゃ。着飾るのも嫌いじゃないからのぉ。」
「ウチも…… そうやな。やっぱり……」
カエデがその場でくるりと回る。普段はかないスカートがひるがえり、ついでに一部がブルンと揺れる。あれくらいで……!
「着飾るんは楽しんやな。今一つ服の着方が分からんやったが、これやったらウチでも出来そうな気がするわ。」
着こなしはねぇ、分からないと分からないからな。……そういやぁ、持ってきたファッション誌の中にそーゆー「大きい人」向けの無かったっけ。後で探しておこう。
「う~ん…… なんかおかしい。」
「どしたの?」
ファッションショーにはあんまり関心のなかったジェル。バーチャルディスプレイの前でびみょーに渋い顔をしていたので聞いてみた。
「なんで私、こんなに忙しいんですかね?」
さぁ?
そういやぁ、ここの孤児院に量販店で大量に買ってきた服を届けなきゃならないし、王都にもそれなりに行かなきゃならないし、あーあと、両隣の建物も含めて色々作らなきゃならないんだっけ?
大変ねー
「他人事のような顔してますが、王都に行くときは一緒に来てもらいますよ。少なくとも私よりも顔が広いでしょ。」
まぁそりゃね、というか、あたしがついてないと面倒くさがりの虫が騒ぎ出すからなぁ。
しょーがない。それがあたしの役割だと思っておこう。
「愚痴っていても仕方がありません。少しずつでも片付けますか。」
盛大にため息をつきながらも立ち上がる。それでも自分から立つだけマシか?
「ちょっと挨拶がてらに出かけてきます。」
「いってらっしゃーい。」
アイラに見送られてトボトボと出ていくのにあたしもついていく。
出るとき店内をちょっと見たら、ジェニーさんもグラディンさんとカエデも出かける準備をしているようだった。そりゃ、仕事は色々しないとねー
雪は無くなっていたが、まだ外は若干肌寒い。それでも陽光がポカポカとあたしとジェルを照らす。さぁて、何から始めますか、と。
MISSION 異世界での生活を再開しよう
...COMPLETE
お読みいただきありがとうございます
愚痴るようですが、大した内容でもないのに、えらい書くのに時間がかかってしまいました
リアルが結構シビアに忙しくて、雷矢泣いちゃう!(泣けよ)
……そろそろひと段落終わりそうなので、のんびりできそうですが(希望的観測)




