王女たちの秘密について考えよう
あらすじ:
元の世界で調達してきた新しい服に身を包んだ三人娘。続いて王女姉妹が現れる。
二人分の足音が聞こえてくる。
「姉様、出遅れたの。」
「いいえ、主役は最後の登場するものなのですよ。」
なかなかに自信に満ちた声だ。さて、いかほどのものか……? ってあたしは知ってるんだけどね。
「「じゃん!」」
現れた二人に、店内から音が消えた。
というのは大げさだけど、それくらい驚いたのは間違いない。
金髪紅眼のルビィと、銀髪碧眼のサフィの王女姉妹なのだが、何故か二人そろって黒髪に灰眼になっていた。
タネは簡単で、ジェル謹製のヘアスプレーと目薬だ。健康被害もなくお手軽お気楽に色変えができる。イメチェンから変装にまで使えるんだが、よくよく考えなくても悪用されると面倒なやつなわけで。
二人とも姉妹とはいえ、髪や眼の色合いのせいで雰囲気が違うのだが、こうして色を合わせると確かに似ている、というか同じ因子が…… ん? なんか違和感が? なんだろ……?
「その感覚は大事です。意外と単純なことです。ヒントは……」
ジェルが同じテーブルのジェニーさんを見ると、彼女が小さくうなづく。
「王様、ですね。貴族と言い換えてもいい。考えらえる可能性は?」
王様王様…… あ、待てよ。王子王女たちの年齢って確か……
頭の中で、全員の顔を思い返して見比べて…… あ、そうか。単純な話か。
金髪なのがゴルド第一王子とルビィ、銀髪なのがシルバ第二王子とサフィ。そして銅色の髪を持つブロン第三王子。父親は王様で間違いないとして、母親は、と。王様で子供がいないと困るのは世の常だろう。側室なのか第一第二とかあって、順序とかあるかもしれないが、だからと言って仲良くしちゃいけないって理由もない。
そう考えると、ルビィに対してシルバ王子とサフィがどこか壁を作っていたようにも見えたのはそのせいかもしれない。
となると……
「ルビィとサフィってお母さんが違うの?」
「ああ、そうだな。隠しているわけじゃないが表立って公開しているわけでもない。
それこそ、ハナタ、じゃなくて第一王子とルビリア姫が我が王と正妃の子供で、第二王子とサフィメラ姫が第二王妃との子だ。第三王子は第三王妃との子だな。」
第三王妃まで、ってもしかしてそれ以上いるのかもしれないが。というか…… 男子が生まれた順番に、なのかもしれない。
でも兄弟仲はそんなに悪くなさ…… あ、そうか。
ふとジェニーさんを見ると、絵に描いたようなニヤニヤ顔をされておいでだ。
「あのハ…… まぁいいか。あのハナタレ王子は血が半分しか繋がってないからって、遠慮、というか容赦する性格ではないわな。そしてブロン王子は元々変人で我関せずだったのでそうでもなかったが、ルビリア姫は遠慮がちだったり身体が弱く、その辺もあってシルバ王子もサフィメラ姫も距離が掴み切れずに壁を作ってしまった、ってところはあったな。」
そこでジェルを見て、意味ありげににやりと笑う。
「仲良きことは美しき哉。
やはり人は素直が一番だよな。まぁ私の知り合いにももう少し素直になってほしい人がいるが、彼はそこがまた魅力、と思う子も多いようでな。」
「初耳ですな。」
「そりゃあ、初めて言ったからな。」
「……そうですか。」
ん~ まぁ、ジェルは今くらい捻くれている方がいいかな? 仮に素直になったとしたら…… うん、色んな意味で怖いわ。
「またなんかロクでもないことを考えている顔ですね。」
と、ため息をつかれた。
「ジェルさん。」
「ジェラードさん。」
お、いつの間にかに王女姉妹がこちらにやってきていた。ルビィの呼び方がちょっと気になるが、まぁいいや。
「「どうですか?」」
髪と目の色に驚かされたが、服の方はそこいらの町娘の着るようなシンプルな上下だ。まぁ作りとかはちょっと町娘が着られるレベルではないのだが、それはそれで。
普段はワンピースタイプのドレスしか見たことないので、トップとボトムを組み合わせるのはなかなか新鮮だったらしい。でも組み合わせに善し悪しがあると分かると、そりゃもう女の子特有のループに入って大変だった。
とりあえず、ってことで白のブラウスにライトブラウンのスカートのペアルックで強引に決めちゃった。
それでも普段着ない色合いと、姉妹で同じコーデというのが嬉しいらしい。
「お二人ともお似合いですよ。
こういう言い方はアレですが、王女様となるとちょっと近寄りがたいですが、そういう姿ですと親近感を憶えますね。」
あたしの教育の成果か、服を見せに来たら褒めるようになったジェルだが、ちょっと効きすぎるのが難点だ。
現にルビィはこれでもかって程に目をキラキラさせているし、サフィもまんざらじゃないって顔をしているが、頬が少し赤くなっている。
「そちらの皆さんも。どうやらラシェルが大量に用意したようなので、ドンドン着てください。もったいないって死蔵したところで良いことは何一つありませんので。」
どこか疲れたように言うジェルに、はーい、と素直な声が返ってくる。よきかなよきかな。と年上目線で見ていると、ジェニーさんが意味ありげな目をこちらに向けてくる。
「ところでラシェル嬢、期待とか催促ではないのだが…… 君のことだ。きっと私の分も用意してくれていると思うんだが?」
えぇまぁ、それは、ね。
サイズに関しては分かっていたので、それこそ今王都に戻ってるグラディンさんやカエデの分も見つくろってきた。
「まぁ今日は……」
と視線を新しい服に声が弾んでいる五人の女の子の方に向ける。
「あちら優先ってことで。」
「それなら仕方はない。今日は期待だけにしておこう。」
そう言うと、ジェニーさんはいつものように男前な笑みを浮かべるのであった。
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……ゲームする時間がまず消えた(とほほ) 次は寝る時間だったら怖い(ガクブル)




