ファッションショーを見てみよう
あらすじ:
女の子たちで奥に引っ込んで、元の世界で買ってきた服をお披露目する。新しい服があるなら着てみたくなり、見せたくなるのが女心であろう
「お、やっと来たな。」
「おじさんたちに追加のアテをお願いしてもいいかな?」
あたしとリーナちゃんで先に戻ると、客が増えていた。忙しくて、しばらく来られなかったバモンさんとガイザックさんだ。
あたしたちが席を外している間に来てたらしい。
「あ、すぐに用意いたします。
それと博士、申し訳ございません。」
リーナちゃんが厨房にパタパタと走ると、途中で振り返ってジェルに頭を下げる。ジェルは小さく肩を竦めるだけだ。
「ふふっ、話では聞いていたが、実際にジェラード君の手料理がいただけるとは実に幸運だったよ。」
クックックと面白がった笑い方をしているので、相当の無茶ぶりされたんだろう。
「手際もなかなか見事だったよ。リーナ嬢の仕草を彷彿とさせたが、もしかして……」
「はい。最初に料理を教えていただいたのは博士ですから。」
手早く何品も作り上げてきたリーナちゃんが笑顔でワゴンを押しながら現れた。
「ほぉ。」
感心した声を上げるジェニーさんとは正反対にジェルの顔が(分かりづらいが)ドンドン不機嫌そうになる。まぁ半分ポーズなのと照れ隠しなので、あまり気にしなくてもいい。
「ホントに器用なのだな。……ただ、為政者には向かないのだろうな。」
「……面倒じゃないですか。」
とは言うが、面倒は本音だし、更に突き詰めれば為政者は多かれ少なかれ「切り捨て」なきゃならないんだろうから、確かにジェルには厳しいかもしれない。
「ところで、他の人たちは?」
結構な人数で奥に行ったのに、戻ってきたのがあたしとリーナちゃんだけなので、気になったらしい。その気になれば建物内をサーチできるが、室内――それこそ女の子の部屋を覗き見まではしてない。緊急時は知らんが。
「ん? それはもうちょっと待って。」
あたしの返事に、ふぅん、と気のない声を返すジェルだが、ジェニーさんの興味が増したようなので、ご期待にそえるかどうか……
「おっまたせー!」
まずは元気印リリーの登場か。
ボーイッシュというわけじゃないが、男の子のように元気に走り回るリリーは普段着も動きやすいものが気に入ったようだ。
太ももくらいまでの丈のデニムのショートパンツにTシャツだ。可愛らしさをプラスするためにニーハイも追加だ。見かけでは分からないが、実は作業着にも使われる丈夫な生地の物にしている。デザインはシンプルというか、無地のものに。絵ならまだしも、(あたしたちの世界の)文字が入っていると面倒になりそうだと思ったんだが、そうなるとホントに無地ばかりになるわけで。こっちの世界じゃ珍しくないけど、ワンポイントも入らないと地味で地味で……
「ふふ、リリー似合ってる。」
淡々と言いながらも現れたのはミスキスだ。彼女は大きめのミニスカートくらいの丈のロングTシャツに、ボトムは膝下くらいのスパッツだ。上はゆったりとラインを隠し、下は足の細さが際立っている。細いとは言うが、健康的な脚線美だ。
旅には向かないが、町を歩くにはいいくらいかな? こっちの世界じゃどうか分からんけど。でもちょっと人を選ぶなぁ。アスリートタイプの細身じゃないとちょっと、ねぇ。
「え、えっと、これ。どうですか……?」
三番手は我らが店主様のアイラだ。
前にも言った通り、というか、見ている服の九割以上がジェルの量産型白衣をリフォームした店の制服だ。後はパジャマくらいかな? さすがに遠出したときはそれなりに私服着てたけど、お世辞にも綺麗でも華美でもなかったわけで。
そんな彼女の今日のお召し物はシンプルなワンピースだ。一応パステルレッドだけど、やや抑え気味の色だが、普段白ばっかりのアイラはすっかりと見違えた。
「ははっ、華やかな女の子は実に眼福だ。そう思わないかね、ジェラード君。」
「コメントは控えておきましょう。これでも無粋なので、ありきたりの言葉しか言えませんで。」
いやいや、そうじゃないんだよ、そうじゃ。
あの乙女たちはジェルからの言葉を特に待っているんだよ。
あたしのジェニーさん、そしてのんべぇのおっさんたちのニヨニヨとした視線にジェルがジト目になる。が、キラキラとかワクワクとか恐る恐るな視線を感じて、一瞬困った顔をしながらも、三人娘を振り返る。
「リリーはとにかく健康的で活発なのがいいですね。お似合いです。それでもハイソックスが可愛らしいです。」
「えへへー」
「ミスキスは上のゆったり感と下のすっきりとしたラインのコンストラクトがいいですね。……あんまり私に足がどうとか言わせないで欲しいところですが。」
「うれしい……」
「アイラはやはり赤系統が似合いますね。ただラシェルも色々買い込んでいたようですから、色んな姿を見せてくれたら嬉しい……と思う人が多いことでしょう。」
「…………」
それなりに考えたのだろう。いつもの淡々とした口調ながらも、なかなかに突き刺さる言葉に三人娘がそれぞれ頬を赤くしてクネクネと動き出す。
……いいなぁ。
じゃなくて。
「なかなかに罪深い男だね、君は。」
「その内、刺されるんじゃないの~」
「うちの娘にも欲しいなぁ……」
色んな感想が飛んで…… って、バモンさんって奥さんと娘さんがいるって言ってたな。何歳くらいなんだろ?
「ん……? 姫様たちはどうしたんだ?」
ジェニーさんがそう疑問の声を上げたところで、奥から二人分の足音が聞こえてきた。
お読みいただきありがとうございます
泣き言は言いたくないですが、リアルが大変です
……って、ちゃんとゲームしてるな自分w




