お着替えをしよう
あらすじ:
夕食も終わったところで、女の子たちだけで集まることに
やはり賑やかな食事は楽しい。
あたしたちチーム・グリフォンの五人に三人娘にサクさん。領主様に王女ズと賑やかだ。
……そういやぁ、いつも来る飲兵衛のおっさん二人は色々忙しいらく、しばらくは頻繁に来られないらしい。
今晩は平打ちの幅広のパスタにホワイトソースとチーズをかけて焼いたグラタン風だ。
アツアツで美味しゅうございました。
で、片付けも終わって、食後のだらだらおしゃべりタイムが始まったところで、リリーとルビィがアイラの左右から腕をとって立たせる。
「え? リリーに姫様、いったい何?!」
「うふふー ひみつひみつー」
「ひみつなのー」
悪意がないのは分かってるんだろうけど、いきなり連行されて行くのは戸惑いしかない。それでも店の「居住区」側に引きずられていくアイラにミスキスがそっと寄り添い、あたしはサフィとリーナちゃんを手招きで呼んで、一緒に居住区に向かう。
「おや、何が始まるのかな?」
領主であるジェニーさんの声を背に受けて、あたしたちは食堂を出て行った。
「……って、あたしの部屋じゃないですか!」
あたしはジェルと同室で、リーナちゃんはヒューイと同室だ。疚しいことはないのだが、ちょっと他の人を入れづらい。リリーとミスキスは最初に最初に設定した部屋が小さめだったので、大きくしようか? って言ったんだけど、同じ大きさがいいということでやや狭い。ちなみにミスキスの部屋は心配になるほど物がなく、リリーの部屋は誕生日の時に色々貰ったものがあるのと、本人の性格なのかなかなかに乱れている。アイラの雷がしばしば落ちているわけで。
当然だけど姫様ズの部屋というわけにもいかず、となると消去法でほどほど広く整理整頓ができているアイラの部屋、というわけだ。そういやぁ前にパジャマパーティもしたっけね。
「それにこの…… これは何? 袋?」
ああ、リリーとルビィは全く疑問を感じなかったけど、紙袋というか「紙」がなかなかないものだったっけ。
まぁ、いいや。
「ん~と、アイラならこれかなぁ?」
目星をつけておいたワンピースを取り出して、アイラの前に当てる。うん、肩幅も丈もいい感じ。
「ラシェル、だから一体……」
と驚きながらも、目の前の服から目が離せなくなる。なんていうか、色々あってお金が無かったアイラは服もまともに持っていなくて、ジェルの量産型白衣を改造した店の制服を着ていることが多い。まぁ、量産型とはいえ化学繊維製で、汚れにも破損にも強く、洗ってもなかなか生地が悪くならない摩訶不思議性能なのでここでは重宝している。洗い替えも含めて、三人娘は三着ずつ持っているんだが、今のところ着られなくなったってぇのは無い。自己再生してそうで怖いが。
それはさておき、そんなわけでアイラは服の手持ちが少ないくせに、リリーやミスキスの服を作ったり買ってきたりするので始末が悪いというか。彼女に対しては黙って買って無理やり押し付けるのが一番だろう。というか、アイラの分だけ少し多めに買って来たのは秘密だ。
「あたしたちの世界で買って来たんだー 別に奇抜なのは選んでないからバンバン普段使いして欲しいかな。」
「で、でも……」
なかなか崩れないな。でもアイラが受け取れないって言われたところで、こー 色々な事情で他の人が着られない。身長が近いのはサフィなんだけど、あの子はややスレンダーなのでちょっとだぶつきそうで。
仕方ない、最後の切り札を切るか。
「ジェルのお金で買ったんだから、受け取ってもらわないと困るなー」
うん、まぁ集ってるというか、当てにしているのは重々承知も理解もしている。それに行ったお店は品も良ければ金額もいいわけで。それでも一応、前からお得意様だったのよ。たまーにしか買えなかったけどさ。
……そういやぁ、あそこの店長、こっちの世界の服屋のパレリさんと笑い方が同じなんだよな。久しぶりに会ったら全くの別人なんだけど、くぷぷ、って笑い方だけが一緒で。並行世界の同一人物、って奴なんだろうか。
そだそだ。話を戻して。
ジェルはリーナちゃんには甘い。そんなふりしてあたしにも甘い。あたしが昔、女の子に服は必要経費、としっかり叩き込んだのでいるので、その辺には寛容だ。ってぇか、宇宙船を個人で維持できるような奴がお金に困っているわけないよね。女の子の服をちょっとどころかワイルドに買ったところで痛くもかゆくもないわけで。
「ジェラードさんが……」
スポンサーはジェルだけど、選んだのはあたしとミスキスとリーナちゃんだからね。まぁ言わないけど。
「それなら…… 受け取らないのは失礼ですね。」
脳裏にどんなストーリーが描かれたのか不明だが、ちょっと顔を赤らめながらも紙袋から服を取り出しては身体に当てて鏡(あたしたちの世界の物)を見ては幸せそうに笑顔を浮かべてる。……いや、ホント何を夢見てるのやら。
「あら、これは服にしては少し薄着で…… 夜着ですか?」
「あ、そうかも。ラシェルがこんなの着てたの。」
……あぁルビィはあたしの「中」にいた関係でその辺は知ってるか。服だけでなく、パジャマや……
「むぅ、あんまり意味がないかも。」
「あたしもどうなんだろ……」
下着も結構買い込んできた。でもちゃんとつけなさい。小さくてもつけておく大事さは教えたでしょ。
服は後回しにして、まずは女の子の最後の鎧のつけ方を教えることに。この世界にも下着はあるが、未来の技術のものはフィット感や保持感が全然違う!
まぁ、力説はともかく、あたしとリーナちゃんで(ミスキスはもう一度叩き込む)、みんなに下着のつけ方をレクチャーする。
「……凄いピッタリ。なんで?」
大きい側の代表のアイラがあたしに不審げなジト目を向ける。敢えて言おう、冤罪だと。
「合わない下着は身体に悪いですから、フィットして良かったです。」
ぽん、と手を叩いて花の咲いたような笑みを浮かべるリーナちゃんに、アイラが毒気を抜かれたように見つめる。
あ~ うん。悪気も邪気も無いから良いんだが、ハイスペックなリーナちゃんは服の上からでもミリ単位でサイズを見破ることができる。お風呂に一緒に入っているから、それこそシークレットデータも丸裸ってわけだ。
……まぁ、深くは考えないようにしよう。実はジェルも似たようなもんだし。
とりあえず、みんなに下着を着用させたところで、独断と偏見も交えて、買ってきた服を適当に着せていく。
え? 何故かって。
そりゃ、女の子を可愛く着飾らせたら、お披露目しませんとね。
お読みいただきありがとうございます
なんかこー すげー忙しいです。泣きたいw
どこまで誤魔化せるかなー でもまぁすみません、週二のペースはちょっと厳しいようです(謝)




