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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
MISSION:異世界での生活を再開しよう
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色々作り始めよう

あらすじ:

 異世界に戻ってきた翌日。早速ジェラードにお声がかかった

「良く考えなくても私はデザイナーとは程遠いはずなんですがね。」

「そういうのはこちらにも専門家がいるから、君には『箱』を作ってくれればいい。」

「……ん~ でもパンサーがキッチリ作ってますから、手直しする必要があまり感じられませんな。」


 朝食の終わった後で、このハンブロンの町の領主様である我らがジェニーさんと、変態白衣科学者ことジェルがテーブルを囲んでいる。ついでにあたしも。まぁ、あたしは横で聞いているだけなんだけどさ。


「ラシェル嬢なら分かると思うが、ジェラード君はおそらくもう数か所以上改善点を思いついていると思われるんだが。」


 はいはい、正解。さっきからバーチャルディスプレイで図面を眺めているジェルだが、普通の人には分からないレベルで、手や視線が一瞬止まっている。何かイジりたいところがあるんだろうな。


「あ、そうだジェラード。サウナ欲しいな、サウナ。宿舎の方に。」


 どこか出かける格好のカイルが、ドアのところで振り返ると、そんなことを言い出した。


「は?」

「風呂でもシャワーでもいいが、男の汗を流すのはサウナって決まってるからな!」


 それだけ言い残すと、こちらの返事を待たずに出かけていった。


 ……いや、男じゃけでなく、女も汗流しますよ?


「時にジェラード君、今カイル君の言っていた『さうな』とは何かな?」

「む……」


 翻訳魔法が上手く働いていないのか。ということはこの世界には概念自体ないのか?


「蒸し風呂、なら分かりますかね? いや、それも違うか。」

「難しいものだな。でもカイル君が欲しがるということは、それなりに有意義なものなのだろ? 作れそうなのかね?」

「ん~~」


 隣のアパートじみた建物の図面にジェルが指を滑らすと、結構な大きさの建物追加される。元の建物の半分とまではいかないが、三割くらいはあるだろうか?


「随分と大きくなるんだな。」

「そうですねぇ。ここの大浴場よりも大きな施設になるので、これくらいは。」


 ジェルがそこまで言うと、ジェニーさんはふふ、と笑みを浮かべる。


「戻って早々、色々楽しみだよ。」

「ご期待に添えられるかどうか。」


 って、ジェルはサウナあんまり得意じゃないんだよね。元々汗かくの面倒なタイプだし。あたしもそんなに得意じゃないかな? 何度も入って、水風呂に入ってを繰り返すのがいいらしいけど、その感覚は未だに良く分からない。


「まぁ、やってみますか。ただこちらの世界で再現できるレベルにするのは面倒ですので、まずは普通に作ってしまいましょう。」


 つまりはオール電化ってところか。


「……そうなると布類が多めに欲しいですな。布地であれば、加工はこちらでいくらでもできますが。」

「聞いたぞい!」


 狸耳の獣人の女性があたしたちのテーブルに入ってくる。王都で商人をやっているグラディンさんだ。


「婿殿! 布が欲しいと言うたな。なんでわしを頼らん。水臭いのぉ。」


 口調は老人のそれだが、外見は妙齢の美女なので違和感バリバリだが、残念ながらもう見慣れた。元々は老婆の姿をしていたそうなんだけど、一部の狸の獣人が持つといわれる特殊な能力で「化けて」いるらしい。


「どうじゃ。欲しい物があるなら、色々聞くぞ。その代わり、というわけじゃないが、儂の考えている通りなら、グレイを借りても良いくらいじゃないのかえ?」


 グリフォンの艦載機である大型トレーラー、グレイエレファント。当然ながらこの世界の馬車とは比べ物にならないほどの速度と運搬量がある。自動運転で半日もあれば、馬車で一週間かかる王都まで行くことができるという、商人には垂涎ものの性能だ。


「う~ん……」


 おや? 即座に断るかと思ったら、悩んでます?

 あたしのそんな視線に気づいたのか、ジェルが微妙に困ったような顔をする。


「指摘通りでして、ちょっと欲しい木材もあるので、そうなるとですねぇ……」

「そうじゃろそうじゃろ。

 大丈夫じゃよ。婿殿の信頼なんか白金貨でも買えぬからな。この儂がそんな『儲け話』を見逃すわけなかろうて。」


 ウッシッシ、と悪い笑みを浮かべるグラディンさんだが、間違いなくキッチリ用意してくれるのだろう。この婆さん、なんともツンデレさんなわけで。


「分かりました。お願いするとしましょう。欲しい物をピックアップしておきますので、ボラず損せずぐらいの見積もりをお願いします。」

「相変わらず婿殿は甘いのぉ。まぁそこが婿殿の良いところじゃがの。」


 またもウッシッシと悪い笑みを浮かべながら席を立つと、カエデ――もう一人の獣人の商人――の所に戻る。


「狸婆さん! 急になんや!」

「折角来たんじゃからな。ちゃんと商人らしいことをせんとな。」

「せやけど…… その、なんや。」

「狐娘よ、商機でも何でも、自ら動かないと何も手に入らないじゃぞ。」

「それは…… そうやけどな。」


 ジェルが必要なリストを作っているので、会話が途切れたところで、隣の獣人商人ズのやりとりが聞こえてくる。気のせいか、なんか不穏じゃね……?


「こんなもんですかね?」


 腕の端末でプラスチックペーパーを印刷すると、席を立ってグラディンさんの所に渡してくる。


「よし、分かった。数日で戻るからの。ほれ、狐娘、ぬしも一緒に行くぞい!」

「まったく持って急やな。まぁ、そないになりようやから準備はできとるで。

 ほな、ジェラードはんたち、またな!」


 なんとも慌ただしく獣人たちは「雄牛の角亭」を出て行った。

 店内が少し静かになったところで、ジェニーさんがちょっと真剣な表情を浮かべる。

 ジェルが席に戻ってきたタイミングでおもむろに口を開いた。


「いつ言おうと思ってはいたが、遅らせても良いことは無いからな。

 ……さて、ジェラード君。人によって良い知らせか悪い知らせがあるのだがね。」


 と、不安しかないことを言い出すジェニーさんでありましたとさ。

お読みいただきありがとうございます

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