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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
MISSION:異世界に再び降り立とう
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色んな人と話をしよう(その2)

あらすじ:

「雄牛の角亭」に戻ってきたジェラードとラシェルのテーブルに色んな人が話をしにくる。今度はローブ姿の偉丈夫のようだ

「相変わらずの人気ぶりだな。」

「人間関係って煩わしいのですがね。」


 どこまで本気で言ってるのか分からないが、酔っ払いのおっさんを含む何人かの挨拶を受けたところで、コンラッドの宮廷魔術師でもあるギルさんがあたしたちのテーブルに着いた。


「色々言いたいのだろうが、実は俺が絡んでいることはほとんどない。ハンブロン卿の独断というか…… 元より計画、もしくは想定していたのだろうな。」


 二人の意識が「雄牛の角亭」の左右に建った二つの建物に向く。


「……ふぅん。」


 ジェルがバーチャルディスプレイを広げて、左右の建物の構造を確認する。ここではある意味おなじみの光景だが、見たことない幾人かが不思議そうな顔をするのもおなじみの通過儀礼かもしれないけど。


「やはり我らが領主様は慧眼なのですな。」

「どういうことだ。」

「説明は省きますが、お隣の二棟、現在の電気生成量では賄えない量で設計されてますな。」


 その説明にギルさんが天井の照明に目を向けてから、何かに気づいたかのようにジェルの顔を見る。


「なんか言い回しが変だな。……そうか翻訳魔法が切れたのか。ん? でも……?」


 と、今度はあたしの顔を見る。

 ああ、あたしはこっちの世界に戻ってきたら、翻訳魔法が元に戻っていたのよね。黒猫スコッチの言葉も分かったし、魔素マナも見えたし。ルビィとの絡みなんだろうけどね。


「それも早めに解決したいですね。多少は喋れるとはいえ、どうしてもニュアンスを伝えるのが難しいですし、聞く方も時間がかかってしまう。」


 まぁ聞く方は耳につけた通信機の翻訳機能を使っているんだろうけど、さすがに同時通訳というわけにはいかないので、ワンテンポ遅れてしまう。


「俺もその手の魔法については詳しくないからな。とはいえ、召喚魔法の付属とはいえルビリア姫も多分分からないと思う。」

「でしょうねぇ。」


 その口ぶりだと当てがある? 多少は喋れるジェルはともかく、ヒューイに関しては全く話せないのでリーナちゃんを通訳代わりにしている。……いや、通信機の翻訳機能を使えばリーナちゃんいなくても同じくらいには話せるよね?

 ささやかな疑問はともかく、ジェルは途中から面倒くさくなったのか、バーチャルキーボードを広げて文字入力で会話を始めている。

 当然、という言い方も変だが、ジェルは喋るよりもキーで文字を入力する方が速い。今も速いが、本気の本気の時は指が霞んで見えるくらいだったっけ。


「これは良いな。お前と話しているときは聞き逃すと面倒なことがあるから、文字が残ると安心だ。」

「……ふむ、原理は分からんがそういう物を用意していたんだな。」

「まぁ、確かにな。魔素を消費しすぎるのも確かに問題かもしれんな。でも安全なのか?」

「ちょっと待て。そんなもの…… ああ、なるほど、な。釈然とはしないが、分かったと言うしかないか。」


 ジェルが筆談?になったので、ギルさんの相槌だけになっているが、話の感じがなんか物騒になってきた。


「何の話?」

「エネルギー問題が面倒になったので、家庭用反物質ジェネレーターを持ってきました。さすがにグリフォン内で作成するのは難しかったので、研究所にあるストックを。」


 へぇ~ って、ツッコミどころ満載だな。その単語に「家庭用」なんて生温いものがあるんか?

 あ、何言ってるか分からないか。いちおー反物質ジェネレーターって、あたしも原理を良く知らないんだけど、簡単に言うと「質量をエネルギーに変換する」ものだ。膨大なエネルギーを生み出すわけだが、逆に言えば制御を失えば、その膨大なエネルギーが一気に解放されて…… 多分町一個くらい簡単にふっ飛ぶんじゃなかろうか。

 でね、困ったことに、あたしたちの世界でもまだ実用化されてないのよね。シルバーグリフォン号に搭載しているのは知ってるけどさぁ。持ち運びできるサイズってことは無いと信じたい。

 多分ギルさんが心配していたのは、暴走したときなんだろうけど、ジェルの無駄な安全設計だ。多分問題はないんだろう。信じてはいるんだろうが、不安といえば不安だ。


「まぁ、そんなわけで、お隣さんにも電気を分け与えるくらいの余裕はありまして。」


 と肩を竦めながらギルさんと筆談?を続けつつも、あたしに説明しているわけだから相変わらず器用なもんで。


「さすがに自称家庭用とはいえ、据え置きサイズにしかならないので、グレイにどうにか載せられるくらいですからねぇ。」


 一応、この「雄牛の角亭」の地下に設置するので、地下にいるダンジョンコアの人とも話をしなきゃならないのだろう。


「……なぁ、ジェラード。この文字で会話する方法、遠く離れてもできるのか?」

「だろうな。ただそれを許可するかどうかの話だと思っている。なにせ、俺はこの町の領主補佐官だが元の仕事もあるので、行き来が増えると思う。」

「そうか。それは助かる。

 ……すまんが、夕方には城に戻ることになっているので、今日はここで失礼する。」


 慌ただしくギルさんが頭を下げると「雄牛の角亭」の奥に入っていく。あそこには遥か遠くの王都コンラッドまで行くことができる「転移陣」というのがあるらしい。あたしは使ったことないし、ジェルは相性が悪くて二度と使う気はないそうだが。


「相変わらず忙しい方で。」


 うん、そうね、と返そうと思ったが、ギルさんが忙しいのの三割くらいはジェルのせいのような気がしてきた。

 今度リーナちゃんに頼んで、滋養に富んだものでも差し入れてあげよう。


 ドアの向こうに消えたローブの背中を見ながら、そんなことをふと思ってしまった。

お読みいただきありがとうございます

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