宙賊は地上に降りる
あらすじ:
惑星を見つけた宙賊が地上へと降下する
視点:三人称
「ここはどこなんだ?」
「宙域マップが圏外だ。」
「ビーコンの反応が全くない。」
自分たちはどこにいるのだろうか。
無限に広がる宇宙とはいえ、人類の開拓魂は広大な宇宙も少しずつ既知としていった。ありとあらゆる方面にビーコンを設置する無人探査船が「果て」を目指して常に飛んでいる。
そんな宇宙の状況でビーコンが見つからないとなると、機器の故障を疑うべきなのであるが、セルフチェックは何度も行った。それでもビーコンを全く検知できないということは……
「未開拓宙域、なのか?」
宇宙船乗りの伝説や怪談的に扱われる言葉で、人類未到達の宇宙の果ても果てだ。
「星図からも現在位置の特定は不可能、だとさ。」
船内のコンピューターをフル稼働させても、どちらに向かえば文明圏に戻れるのか、全くもって手掛かりがない。
「まずは生き延びることを考えよう。」
誰かが言うとあちこちからも賛同の声が上がる。
宇宙空間でなにより必要なのは酸素だ。これが無ければ人間は三分も生きていられない。次に温度と水、食料と続くが、すぐの問題ではない。
「恒星系に入った。位置関係から人類が生存可能な環境がありそうな惑星は一つ。近づかないと分からないが、水がある可能性が高いようだ。」
レーダーを見ていた男の言葉に、希望が広がる。そういう惑星さえあれば、生き永らえる可能性は高い。
反対する理由もなく、宙賊の船はこの恒星系の奥深く、地球型惑星があると思われる方へと航路を向けた。
「大気構成・温度・水の存在。人類が生存可能な地球型惑星で間違いない!」
観測班の言葉に歓声が上がった。これでしばらくは安泰だ。
「ちょっと待てよ…… 地上に人工物があるぞ。降りないと分からないが、もしかして人が住んでいる星なのか……?」
そんなことがあるだろうか。
現在人がいる惑星は、全て地球発祥の人類が開拓したものだ。そのまま住める星もあれば、大幅な惑星地球化したところもある。資源惑星の軌道上に基地を作って、みたいなパターンもある。惑星の環境で特徴が出る場合もあるが、それでもいわゆる「異星人」とは未だ出会えていない。
そんな前提で人が住んでいると思われる惑星。どんな事情があるのだろうか。もしかしたら同じようにワープの失敗でこの星に流れ着いたのだろうか。
「が、今の今まで通信の一つも、レーダー波による探知も無い。この星はなんなんだ?」
「とりあえず降下艇を出すしかないな。」
この宙賊の宇宙船は大気圏降下能力がない。搭載している戦闘艇も兼ねた小型艇――それでも五十メートルはある――を発進させる。
大気圏には突入できるが、自由に飛び回れるわけではない。戦闘起動なんてもってのほかだが、それでもシールドを備え、対艦用の武装は地上ではあまりにも強力ではある。
眼下の青い星に向かって、大気圏突入時の光跡を残しながら降下していく。色々な思惑や希望、そして不安を乗せて。
降下すると、普通に水と緑にあふれる惑星であった。草原に着陸すると、何人かが宇宙服を着て表に恐る恐る出ていく。
「温度も適切、酸素濃度も問題なし。大気中に有害物質は検知できず……」
意を決して一人が宇宙服のバイザーを開いた。最初は恐る恐る、そして思いきり深呼吸をする。
「……こんなにうまい空気は初めてだ。」
元々が宙賊をやってるような輩だ。そんなにいい環境で育ってもいないかドロップアウトしたりして、また乗っている宇宙船も中古の保証もないような生命維持装置しかないため、船内の空気もどこか澱んでいるような環境。そんな奴らが感じた初めての自然の空気はあまりにも衝撃だった。次々とバイザーを開いて空気を吸ってる。中には泣いているのもいる。
しばらくそうしていたが、一度降下艇に戻って宇宙服を脱ぐと、軽装で表に出てくる。
いくつか偵察用のドローンを飛ばして周囲をサーチする。
「……しばらく先に道のようなものがあるな。」
偶然かもしれないが、実際に「道」があるとするならばそこには文明というか知的生命体が存在することになる。
一応、生まれ育った惑星(コロニー等も含む)から宇宙に出たとき用の形骸化した「未開拓惑星マニュアル」みたいなものがある。大枠としては、未登録の知的生命体のいる惑星には干渉するな、ということになっている。
が、宙賊ごときがそんなことを律義に守るはずもない。
徒歩で行ける距離だったのか、手に手に武器をぶら下げたまま散歩のように歩いていく。
しばらくして「道」が見えてきた。
舗装はされていないが、長年色々なものが通って踏み固められた様子の道。どう見ても人が生活している。
そこに幸か不幸か、荷馬車が遠くからやってくるのが見えた。宙賊たちはお互い顔を見合わせると、ゆっくりと荷馬車の方へ歩いていく。
荷馬車は護衛なのか、剣を下げた男が数人付き添っている。御者は身なりが良い感じなのでそれなりの商人のようだ。
「やぁ、いい天気だねぇ。」
宙賊の一人が作った笑顔で声をかける。
急に現れた一団に護衛らしき人たちが守るように馬車の前に出る。
「…………!」
護衛の一人が剣を抜いて構えながら何事かを叫ぶが、宙賊たちには全く理解できなかった。
仕方ない。
そうお互い顔を見合わせると、手にした武器のトリガーに躊躇いもなく指をかけた。
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