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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
宇宙(そら)からの脅威

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その時あった事

※やや説明回です

※しばらく三人称が続きます


あらすじ:

 シルバーグリフォンが異世界から元々の世界に戻ってきたとき、実は……

 それは一般的には「宙賊」と呼ばれる存在であった。宇宙の星屑の中に居を構え、原型が分からなくなるほどの改造を施した宇宙船で輸送船や客船を襲い金品を強奪したり、誘拐をする悪党ども。銀河連合警察では当然のごとく捕縛対象であり、その犯罪歴により「生死問わず」の賞金首でもある。

 その宙賊は現在、ワープフィールド内に漂っていた。

 ワープフィールドというのは、ある種の「裏道」である。通常空間とは違う空間で、ここを通れば通常空間で光速を超える航行をしたことになる。ただし、ワープフィールド内は不安定である。長時間いたら宇宙船に深刻な影響が出たり、空間の揺り戻しで予想外の場所へ、または永遠の「宇宙の迷子」になることもあるという。

 ワープエンジンとはワープフィールドに出入りするのと、その内部での安定を保つための機関である。

 この宙賊の宇宙船は、ある研究所から奪った試作品のワープエンジンを搭載していて、他の船よりもフィールド内での滞在が安定していた。そのため、ワープフィールド内に「逃げ込む」ことが可能であった。


「GUPのクソどもはどうだ!」

「向こうもこっちは見えねぇよ。こっちも見えねぇけどな!」


 宙賊の船内に怒号が飛び交う。

 通常空間からはワープフィールド内を検知するのは大変困難であり、逆もそうである。

 じゃあ、同じフィールド内ならどうか、というと理論上は可能だが、艦隊がお互いリンクしながらワープインをするような状況ならともかく、別々にワープインした宇宙船同士が出会うのは非常に稀である。ただ軌跡を追うことは一応可能なので、ワープしてしまえば逃げられるというものではないが、ある程度は効果的な手段ではある。

 この宙賊も適当な「獲物」を探している最中に、銀河連合警察の探査ドローンに見つかったために、本隊が来る前に逃走というところだ。


「そろそろワープが限界だ。いったん通常空間に戻ろう。」

「そうだな……って重力変動だと!」


 ワープフィールド内でも異常な値が検知されて、船内に驚愕が走る。


「主機を停止……はできないから、ステルスモードだ!」

「サーチをパッシブに切り替えろ!」


 トーンを抑えた怒号が船内に飛び交う。

 宇宙空間、さらに気密された船内で声を潜めた所で意味はないのだが、反射的にそんな風な態度を取ってしまう。


「未確認物体が……この反応はリープだ!」

「何?!」


 リープ航法。ワープ航法とも違う超光速航行の手段である。空間を歪めてできた隙間であるワープフィールドと違って、リープはその名の通り空間を「跳躍」するのだ。

 ワープよりもエネルギーの消費が高く、一度に「跳べる」距離も短いのだが、移動が短時間で済むのと、航行中の船内も安定することで豪華客船に使われていることが多い。

 どちらの航法でもそのエンジン及び周辺装備は宇宙船の容量を大きくとるため、どちらかしか搭載していない場合が多いというか、ごくごく一部の特殊な宇宙船――それこそどこぞの変態レベルの科学者が作ったくらいの――くらいじゃないと実用レベルで両方搭載はしてない、というかできない。

 そんなわけで、ワープフィールド内でリープ反応が検知されるのはあまりにも異常であった。


「緊急ワープアウトだ!」


 リープによる重力変動に巻き込まれそうになったので、危険を承知でワープフィールドを脱出しようと防御シールドを全開にして出力を上げた。

 激しい振動が宙賊の宇宙船を襲い、ショックで艦内の照明が落ち、宙賊たちもしばらく気絶していたが、一時的に低下した船内の気温に、身を震わせながら次々と目を覚ます。


「一応は無事か……」


 目を覚ました一人が船の状態を確認する。

 いくつか障害は出ていたが、今すぐどうこうなりそうなものはない。ジェネレーターが緊急停止していたので再起動をする。元々が中古の宇宙船を、あちこちから略奪したパーツを無理やり組み合わせているので、常時不調な感じがするが、どうにかこうにか起動に成功する。

 船内の照明が復旧し、暖かくなってきたので安堵の息が漏れる。

 改めて船内のチェック。

 致命的な損傷はないが、近々に大々的な整備が必要ではあろう。それくらいは通常運転の範疇だ。


「後はここがどこかだが……」


 各種センサーを立ち上げて現在位置の確認をする。ワープフィールドから緊急脱出しために想定外の場所にいる可能性がある。

 少なくとも、ブラックホールの超重力の範囲内とか、恒星の引力圏でなかっただけ幸運だ。ただ自分たちの拠点に補給無しで戻れる距離であれば御の字だ。が、


「ここはどこだ?」


 一人が言い出した言葉に周囲がざわめく。

 大半は何を言ってるんだ? って態度だったが、別の一人が別のセンサー類を立ち上げて顔を青ざめさせる。


「……馬鹿な。探知範囲内にビーコンが一つも存在しないぞ。」


 人間が開拓した宇宙空間には、昔で言う灯台代わりの現在位置を教えてくれるビーコンがある一定の距離ごとに設置されていることになっている。ビーコンはまた、超光速通信の中継器としても使われる。

 当然、ある程度管理されているとはいえ、経年劣化や色々な事故で破損して、その後補填されていない場合もある。が、それでも全く探知できないということはない、はずだ。

 センサーの故障は無い。

 更に宇宙ネットワークにも接続できない。

 全くの人類の到達していない未踏の区域に来てしまったのだろうか。


「……少し離れているが、恒星系を発見した。まずはそちらに向かおう。」


 資源でもあれば多少は足しになる。運よく地球型惑星があれば、そこを拠点にできる。何を差し置いてもまずは生き残ることだ。

 宙賊の宇宙船は、その恒星系に向かうことにしたのであった。

お読みいただきありがとうございます

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