次はたらふく食べよう
あらすじ:
ゲームセンターを堪能しまくった一行
そろそろ時間も夕方くらいになってきたので
たっぷり楽しんで、心地よい疲労を感じながらゲームセンターを出る。
『面白かったー!』
嬉しそうに両手を上げるリリー。
パンサーに乗っても興奮冷めやらないようで、今日あったことを何度もリピートしている。
「楽しまれたようで何より。
時間もなかなかになりましたが……」
窓の外を見ると、だいぶ暗くなってきている。道路を走る車もヘッドライトがつき始めてきた。
夕方といえば夕方なのだが、さっきなかなかのボリュームのハニトーをシェアしたとはいえ結構食べたのでそこまで……
『え? ご飯?』
キラン、とリリーの目が輝いた。
……え? マジですか?
「まぁ、そこは想定していましたので。」
何処か楽しげに苦笑するジェルがパンサーに行先を指示する。
『なんか、すみません。』
恐縮するアイラだが、なんというか慣れたを超えてもう日常である。
「時にパンサー、向こうの様子はどうだ?」
〈はい、確認したところ、独自で外食するそうです。……距離も結構あるので合流も難しいかと。〉
「どこまで行ってるんだか……」
車内のコンソールを覗いて溜息をつくジェル。あたしもチラッと見たが、今夜中に帰ってこられるのがどうか疑問すら残る。
「今から行くところは、思いっきり食べても大丈夫ですよ。」
『今日はたくさん動いたからお腹ペコペコかも!』
……今日の記憶が怪しくなってきた。
「さ、見えてきましたよ。って言ったところで分からないかと思いますが。」
と、ジェルの視線の先には……アレはホテルかな? なんか格式高そうなホテルが見えた。そういえばあそこは…… なるほど、そういうことか。
「では、行きますか。」
『『は~い!』』
パンサーを降りて、ゾロソロとそのホテルに入っていく。
そこそこの格式のホテルだから入れるかどうか不安だったが、オールタイム白衣のジェルがオッケーなので、あたしたちは問題なく入ることができた。……まぁ、普段からジェルは外だと腰も低いし語り口調も知的で柔らかいので、第一印象さえクリアできれば、そこまで嫌がられない。
「先にテーブルを取っておいてください。」
受付(前払いなんだろうね)にいるジェルがあたし達三人を先に促す。なんかあるんだろうか?
途切れ途切れに受付のお姉さんの声が聞こえたんだが「え? そんなにですか?!」みたいな声と共に、こちらを見る視線を感じる。
気にしないでおこう。
それよりも、足を進めていると広い空間に出た。たくさんのテーブルに……
『う、わぁぁぁぁ……』
人前なので声は控えめだったが、目を真ん丸に見開いてそれ――壁の一角に用意された料理の山――を見て、驚きの声をあげる。
まぁ、予想はついたと思うが、ディナービュッフェだ。そこそこ高級ホテルなので、料理の質もワンランクかツーランクは上だ。たぶん、値段もそれなりにするのだろうが、そこはまぁジェルだからどうでもよいかと。
そういう感じの店なので、混んで混んで困るほどではない。
早速手ごろな場所のテーブルを見つけると、三人で席についてジェルを待つ。
「お待たせしました。」
遠くから白衣がやってきた。さすがにジェルが来る前に取りに行く訳にもいかなかったリリーが半ば腰を浮かせて、アイラに注意されている。
「ああ、構いませんよ。先に行ってください。私は席を取ってますので。」
『ラシェ姉ぇ、やり方教えて!』
手を引っ張られて、料理の方に引っ張られる。やり方って言っても、まぁ、取り過ぎないとか、人の流れに合わせるとか、手に持てないほどの量を取らないとか、それくらいかな? あ、後アイラもリリーもこっちでは未成年だからアルコールはNGで。
『うん!』
『あと、野菜も食べるのよ。』
『はーい。』
小走りで駆けていくリリー。
さすがにあれもこれも、というわけにはいかないので、回数をこなす方針に決めたようだ。アイラはアイラで色んな料理を楽しもうと目移りしているようだが、普通の女の子の食事量なのでチョイスに悩んでいるようだ。
その間にあたしは皆の分の飲み物を用意して席に一度戻り、ジェルのリクエストを聞いて自分の分と合わせて取ってくる。
ニ三度往復して帰ってきたリリーの皿がテーブルの大半を占める。ちょっと端に席を寄せながら自分たちの分を置いて、アイラも戻ってきて(そしてちょっと呆れて)、四人でテーブルを囲んだ。
それぞれ小さくいただきますの声をあげると、夕飯が始まる。あたしとアイラはさっきのハニトーがまだ残ってるのかちょっと控えめ。ジェルは…… いつも通りか。そしてリリーも別の意味でいつも通りだ。
そういえば、リリーと直接一緒に食べる機会が少ないかったので、じっくり見るのは初めてかもしれない。
リリーは確かに人間離れした食事量だが、こうして見ると決して早食いではないが、なんかあれよあれよと料理が消えていく。
あれだけあった皿が空っぽになると、あたしたちの方を窺ってからリリーが席を立つ。
空いた皿を重ねて食器置き場に戻し、新しい皿を手にし、料理をまた載せて戻ってくる。
なかなかのパフォーマンスショウだが、さすがに食べ過ぎて出禁になるんじゃなかろうか。
アイラと二人して心配そうな顔をしていたのが分かったのか、リリーがっ席を外したタイミングで小さく呟く。
「先にそう言って、十人分くらい払ってきたので。」
……なるほど。
あたしたちは控えめに、リリーはタップリとデザートをいただいて満足したところで研究所に帰宅。
実に充実した平和な一日であった。
……
…………
………………
そう、ここまでは。
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