表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
MISSION:たまに戻ってみよう
144/146

朝は目覚めよう

あらすじ:

 異世界から元の世界に戻ってきた一行。

 時差もあって朝はなかなかに大変そうで……

『おはようございます。』


 久しぶりの一人寝で、直接起こしてくれる人もいなかったので、やや寝坊しながらも目覚める。……いや、ちょっとおかしくね? そんなにあたしってだらしなかったっけ?

 部屋にあるシャワーを浴びて(当然見せられない)、着替える。それからリビングに向かうと、アイラが挨拶をしてきた。


「おはよー。」


 挨拶を返すと、アイラがあたしの背後に視線を向けるが、そこには誰もいない。


『ジェラードさんはまだですか?』


 あー アレは基本夜型だから、朝はあんまり強くなんだよね。というか、元々太陽をバックに爽やかに挨拶してくるイメージがない。


『とりあえずラシェル、食べちゃう?』

「そうね、お願い。」


 と、テーブルを見ると、山のようなパンをリリーがあむあむ食べているリリーがいるだけで、グラディンさんとカエデはいない。


「二人はどうしたの?」

『あ~ 朝食べたら出ちゃいましたね。』


 トーストとサラダ、スクランブルエッグを持ってきたアイラに聞いたら、苦笑交じりにそう返された。

 ついでに執事のセバスチャンも朝から見てないので、案内に連れていかれたようだ。まぁ、お財布も兼ねているしなぁ。

 あたしが人並みの速度で朝食を終えて紅茶をたしなんでいると、リリーが山盛りのパンを平らげたとこだった。


『ごちそうさまでした。』

『はい、お粗末さまでした。』

「こっちもごちそうさま。」

『はい、片づけますね。』


 アイラは一応は旅先のはずなのに、いそいそと家事にいそしんでいる。ワーカホリックなのか、オカン体質なのか。でもちょっと真似できないなぁ。


『ハカセは寝坊?』

「そうねぇ…… リーナちゃんもセバスチャンもいないから、ぼちぼち起こしに行った方がいいかなぁ……」

『あー! それじゃあ、あたしが起こしに行ってくる!』


 元気に挙手をするや否や、ぴゅーって感じでリビングを出ていくと、ジェル用の朝食をある程度まで用意したところで、何故かリリーが戻ってこない。

 はて? なんて思っていると、耳につけている通信機から小さな声が聞こえてくる。


『ラシェルさん、すみませんが私の部屋まで来てもらえませんか?』


 もう一度はて?


 どこか弱々しいというか小声で喋っているような感じなので、更に疑問は深くなる。

 と、一つ可能性が思い当たったので、アイラにちょいちょいと合図して一緒にリビングを出て廊下に出る。

 ジェルの部屋――そういやぁ、こっちだとジェルの部屋なんか行くことなかったな――の前までついて、壁のパネルに触れると特に何事もなくドアが開く。

 中に入ると、すっごい乱雑かと覚悟していたが、ゴミや洗濯もので散らかっている、と言うほどではない。ただまぁ、物は多いし、机周りはまさにアンタッチャブルって感じだ。

 と、部屋の奥にベッドがあるのだが、そこに困った顔をしたような顔のジェルと、その隣の空間に小柄な身体を押し込んだリリーが見えた。


 想定通りの光景。


 なんかリリーが幸せそうに寝息を立てている。やはり時差で大変だったろうし、慣れない異世界で疲れているんだろうなぁ、とも思うんだが…… ハッキリ言うと、リリーだとギリギリよね。アイラだとちょっと……


『ラシェル? なんか変なこと考えてない?』

「いや、犯罪めいてるよね、と。」

『は?』


 ジト目で見られた。


「というわけで、リリーをどうにかしていただけると……」


 ベッドの中でジェルが切なげに囁く。

 しっかりではないが、かけてあるシーツごとしがみつかれていて、動くに動けないようだ。力任せに振りほどくのは簡単だが、それはそれで心苦しいのだろう。


「お腹も空きましたし、トイレも……」


 前者は自業自得だが、後者はさすがに同情の余地はある。


『リリー、』


 それまで黙っていたアイラから低い声が漏れる。寝ているはずのリリーがビクッと震えた。……おっと。


『そんな羨ま……じゃなくて、迷惑なことしちゃダメでしょ。』

『……は~い。』


 もそもそとリリーがベッドから降りると、えへへ、と誤魔化すような笑いを浮かべる。そしてジェルも上半身を起こして、パジャマのボタンに手をかけてから、気づいたかのように身体の前で腕を交差させる。


「さすがに女性の前で着替えは……」


 戯言たわごとをホザくジェルだが、確かにそうなので女の子三人で部屋を出る。アイラはアイラでジェルの朝食の準備にリビングに駆けていくが、あたしたちは食べ終わったのでゆっくりと戻りながら、隣を歩くリリーに話しかける。


「ジェル、寝てたの?」

『ん~ 実は見てない。』


 てへっ、と舌を出すリリー。


『まだ少し眠かったし、折角だからハカセの横で~ って。』


 てへってへっ。


 と、随分と邪悪なことを言うリリー。何とも嬉しそうだ。ちょっと眩しいかも。


「はい、お待たせしました。」


 ゆっくり歩いていたのもあって、素早く着替えてきたらしいジェルに追いつかれる。


「リリーさん。何度も言いますが、女の子が安易にああいうことをしてはいけません。」

『うん、分かってるー』


 ニッコリ笑顔のリリーに、ジェルは小さくため息をつくのであった。

 そういやぁ、トイレ大丈夫?

お読みいただきありがとうございます

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ