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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
MISSION:たまに戻ってみよう
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まずは休もう

あらすじ:

 ジェラードの研究所にたどり着いた一行。ただ、時差の関係で今日は休むことに

『儂は色んなものが見てみたいのぉ。』

『うちは狸婆さんに付き合いたいわ。』

「そうですか……」


 獣人ズがあちこち見て回りたい、と言い出したのだが、ジェルはジェルでそれなりに研究所ですることがあるらしい。さすがに二人だけでは行かせられないし、あたしじゃあちょっと力不足だ。


「博士、僭越せんえつながら、わたくしが案内する、というのはいかがでしょうか?

 些少ではありますが護衛の心得はございますし、案内もそれなりにとは自負しております。」


 と、執事のセバスチャンが恭しく腰を折る。


「いいのか?」


 ジェルの問いにも執事はニッコリ笑みを浮かべるだけだ。


「そんなわけで、彼が案内しますので適当にお願いいたします。カード……お金も渡しておきますのでその辺も適当に。」

『お、いいのかの?』

『いくらが知らんが狸婆さんにそんなに渡して後悔せんとええなぁ。』


 思いがけない言葉にグラディンさんもカエデも悪い笑みを浮かべるが、この二人悪ぶった顔をするけど、しょうもないところでお人よしだし、そもそもジェルの財産を食い潰せるハズもない。

 前に聞いたときは超光速航行や宇宙船のエンジンの基礎技術の特許パテントを持っているらしく、宇宙船が飛べばチャリンチャリンと微々たるお金が入るそうだ。ただ、宇宙にどれだけの飛んでいるのか、ということらしい。


『ハカセー あたしたちはー?』

『ダメよリリー。ジェラードさんも忙しいんですから。』


 リリーとアイラの二人は…… あたしが案内しようかな? 変なところには行かないだろうし、ダッシュパンサーがいればどうにかなるだろ。

 と、ジェルに伝えたら、渋い顔をされたが、それでもこっちですることの優先度がそれなりに高いのか了承してくれた。


「でもまぁ、慣れない旅路でお疲れでしょうから、今日は休んでいただけると助かります。」

『まぁ…… そうじゃな。』


 異世界からこっちの世界に移動したときに、時差が発生している。シルバーグリフォンが速すぎて、補正する間もなく到着しちゃったんで、まぁ八時間ほどズレがある。

 まだ日は高いが、リリーが小さくあくびを漏らすのが見えた。体感的には深夜くらいになるからなぁ。

 それでもこれから寝ると、それはそれでズレは戻らないので、ここから数時間ほど頑張って起きて、ワザと寝坊させて調整しようする。ちょっと荒療治かもしれないが、まぁみんな若いから大丈夫だろう。

 ……最悪、睡眠薬使えばいいんだが。

 こっちにいる間の客室に案内して、眠気がありながらも荷物の整理や着替え。後はデリバリーで軽食を頼んで、最後はシャワーを浴びて落ち着けるハーブティやホットミルクで身体を温めると、もう限界を迎えたリリーが頭をグルグルさせ始める。


『それじゃあ、あたしたちは先に休ませていただきます。』


 アイラがリリーを立たせて、どうにかこうにか客間に連れて行く。


『儂らも寝るかの。』

『そうやな。』


 商人というのは徹夜にも強いのか、先に行った二人よりもしっかりした足取りで客間に向かう。


「私はもう少しやることがありますので。」


 と、ジェルが言い出したので、無言でその腕をとる。


「……ラシェルさん?」


 訝しげな声を出すジェルをそのままジェルの部屋――さすがに場所は知ってる――まで引っ張っていく。


「ですから……」

「一人で寝られる?」

「…………」


 一瞬、周囲の様子か何かを眼鏡越しに見たのだろうか、視線を少し彷徨わせると、あたしの手を振りほどいて、そのまま抱きしめてくる。

 まぁあたしが煽ったというか、誘った部分は認めるが、それでもこうやってもらうのは……何となくじゃなくても悪くない。


「あんまり変な誘惑をしないでください。」


 耳元でささやかれた声は優しげだが、どこか切なく響く。

 いや、分かっている。分かってるんだ。

 ジェルは「関係」が進むことを恐れている。多分、こっちの世界にいるだけだったらこんなことにならなかったんだろうな。ちょっと異世界に行って環境が変わって、そして色々あった。ホントに色々あった。

 ジェルに好意を抱く女の子がたくさん出てきて、そしてあたしも色々考えることがあり、何度も言うがホントに色々あった。

 色々ばかり言ってるけど、ホントにそんな感じで。

 やっぱり…… あたし……

 自惚れじゃないけど、お互いそうなのは何となく分かっている。向こうの世界にいるなら、それはそれでいいんじゃないか、って気はするんだけど、こっちだとねぇ……

 他の女の子たちのこともあるし。

 ジェルの腕の中でモヤモヤしていると、不意にジェルが身体を離してきた。

 一言二言、ジェルが意味の分からない言葉を言うと、廊下の先から同じように意味の分からない言葉が聞こえてくる。

 そっちを見ると、目元をくしゅくしゅしているリリーがいた。


「お手洗いに案内してあげてください。」

「わかった。」


 翻訳機を外しているので言葉は通じないが、まぁトイレの場所を教えるくらいならどうにかなる。リリーの手を取って連れて行く。

 構造は「雄牛の角亭」にあるのと基本一緒なので困ることは無かろう。

 そして出てきたリリーを彼女の部屋まで送る。言葉が通じないのは分かっているので、そこは身振りと表情でお礼を言われると、頭を撫でて応えてあげる。


 さすがにあたしも寝るとするか……


 夜は更けていく。

お読みいただきありがとうございます

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