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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
MISSION:たまに戻ってみよう

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出かける準備をしよう

あらすじ:

 ジェラードが一度自分の世界に行くと伝えて、色々準備を始める

「え~と…… 一度向こうの世界に行ってこようと思うのですが……」


 ある日の「雄牛の角亭」。ディナーが終わった頃合い。元々はある程度予告はしていたので、ジェルの発言にも特に驚きの声は上がらない。

 が、代わりに腕が何本か挙がる。


「この前、儂約束したじゃろ?」

「しとらんやろ? でもせっかくやからウチも行ってみたいんなぁ。」


 タイミングを合わせてやってきていた獣人商人ズが揃って手を上げる。いや、約束しましたっけ? まぁ行ってみたいとは常日頃言っていて、そのために「化ける」能力を確認していたようだが。


「あたしも行って……みたい、かも。」


 いつもとは違っておずおずと手を挙げるリリー。そこでリーナちゃんが声を上げる。


「では後は、ラシェルさんと差し出がましいですが私で六人、ってところですね。」


 異世界に行き来できるシルバーグリフォンのコクピットは六人乗りである。まぁ、百五十メール級の宇宙戦艦なので、乗るだけならいくらでも乗れるが、世界間の壁を超えるときは万全を期してコクピットに乗れるだけにしている。タダでも安全な艦内の中で、あそこが一番安全だから、って事らしい。

 そしてジェルとあたしが行くのは基本固定なので、今回のメンバーは……


「ちょーっと待ったぁ!」


 異論が入った。発言の主は珍しいというか何というか、アイラであった。


「えっと……?」


 これまた珍しく困惑したようにリーナちゃんがアイラを振り返る。


「リーナって、向こうに行ってすることって基本ジェラードさんのお世話よね?」

「……そう言われてみればそんな気がしてきました。後は研究所の掃除をでしょうか。」


 どこか戸惑った感じのリーナちゃんに、アイラがパン、と手を合わせる。


「お願い! あたしに代わりに行かせて!」

「…………」


 急なお願いにリーナが悩むようにあちこちに視線を彷徨わせて、一瞬ヒューイのところで止まったが、まぁあたしじゃないと見落としてたね。あの感じは「おや、どうしたんだい?」「いえ、その、なんでも……」って感じだったな。……もうくっついちまえよ。

 ……なんてロクでもないことを考えていると、リーナちゃんがどうにか自分の中の折り合いをつけたようで、ニッコリ微笑む。


「はい、それではお願いいたします。」

「よしっ!」


 と、アイラが小さくガッツポーズをとる。


「じゃあ、申し訳ないけど、リーナは代理店長ってことで、よろしく!」


 妙にハイテンションになったアイラの放った一言に、今度こそ驚きで硬直するリーナちゃん。


「ね? オーナー、それでいいですよね?」

「……まぁ、どのみちそこまで本気で開けているわけじゃ無いので、必要最低限で。王女様たちのメイド二人と、それこそコアの人にもメイドを頼んで…… 後はミスキス、任せましたよ。」

「心得た。」


 なんか途中で「ちょっとー!」って悲鳴を上げる現店長とか、ふんすと拳に力をこめるミスキス。なんか平和な光景だが、そこに怖い声音が忍び込んでくる。


「そういうことを私を抜きに決めるのはどうかと思うのだがね。」


 我らがハンブロンの領主さまのジェニーさんがどこか悪い笑みを浮かべながらテーブルに肘をついて顔の前で手を組む。


「えっと……」

「あと、形式上ではあるが、貴族が国外――いや、異なる世界、というのはどうしたものか?――とにかく登録地より出る場合には申請が必要なのだがね。

 ああ、いやいや、いいともいいとも。

 ジェラード君はそういう枠に囚われない人物であるが、それに一番振り回されるのは私なのだよな。」


 と、そっと袖で顔を隠すようにするジェニーさん。


「……希望を伺ってもよろしいですか?」

「いやなに、適当な土産と、土産話で十分だよ。」


 出来れば美味い酒があると嬉しいがな、と真の目的を告げることも忘れない。


「でもまぁ、予定は確認しよう。

 おおよそ一週間程度、ということでいいのかね? 緊急時はどうにかなるのか?」

「期間はそんなもので。明日……じゃなくて明後日、いや明日でもいいか。なので、明日にでも出発することにします。

 緊急時は…… ホーネットにでも言ってください。どうにかなるはずです。

 それで思い出しました。

 ファイヤーかサンダー、どちらか一緒に来てくれ。『仕事』が入ったら働いてもらうかもしれないからな。」

《はいはーい、あたし行きまーす!》


 速攻でそんな声が聞こえてくる。

 チーム・グリフォン所属の戦闘機姉妹の姉ファイヤーロックだ。


「後の居残り組は必要なパーツをピックアップしておいてくれ。」


 次々に指示を飛ばすと、ふーっと息を吐くジェル。


「先ほど言いましたように、明後日出発します。皆さん、それなりに準備を。

 とは言いますが、数日分の着替えくらいあれば十分です。向こうで調達できるので。」

「なんじゃ、慌ただしいのぉ!」


 とは言いつつ、元々旅装束であったグラディンさんとカエデは慣れたものだ。


「リリー、あんた準備は大丈夫?」

「い、今からするー!」


 慌てたようにリリーがドタバタ自室に戻っていくと、それでも心配なのかアイラがその後を追っていく。

 とりあえずあたしは特に準備の必要はない。それこそ私物はシルバーグリフォン号にもあるわけで。

 大体の話しも終わったところで、夜も更けたところで解散となった。ジェニーさんだけは徒歩数分の領主館へ帰るが、後は「雄牛の角亭」の自室へと帰っていく。

 あたしもジェルと自室に戻ると、お互い背を向けてパジャマに着替えて、一緒のベッドに入る。


 ……そっか、元の世界に戻ったら、一人で寝るんだよな。当たり前なんだけど…… まぁ、いいや。寝よ寝よ。

 ジェルの腕の中であたしはそっと目を閉じた。

お読みいただきありがとうございます

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