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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
小ネタ集
115/129

伯爵の戦いは続く

あらすじ:

 テンプラに舌鼓を打つフェルナン・フォン・ダーメルク伯爵。そこに帰ってきた人物が

「アイぇ、リー姉ぇ、たっだいまー!」

「戻ったよ。」


 入り口のドアが開くと、外に出ていたリリーとヒューイが入ってくる。が、カウンターに客がいるのに気づいてリリーが頭を下げる。


「あの、その、いらっしゃいませ!」

「はは、実に元気な娘だ。好感が持てる…… はて? どこかで見たような……?」


 と、リリーを見て首をかしげるフェルナン・フォン・ダーメルク。


「おっと、仕事中だね。俺は後ろに下がってるよ。」


 イケメンスマイルを残していなくなったヒューイの背中をリーナがどこか名残惜しそうに目で追うが、すぐにリリーが手にしている物に気づく。


「あら? リリーさん、それは……」

「あ、うん、じゃなくて、はい。森でヒューイさんと野草をつんでき……ました。」


 と、かごに入った様々な草花を見せる。


「そういえば、お昼は食べました?」


 リーナに聞かれて、でもお客様の上手く言葉が出なくて、フルフルと首を振る。


「ヒューイさんもですか?」


 コクコク。


「それでは少しお待ちくださいね。」

「は~い!」


 かごを置いて、リリーが厨房の反対側に入っていく。


「新鮮な野草が手に入りましたので、これをテンプラにしたいと思います。

 ただ、従業員のまかないを同時に作りますので、順番が前後してしまうのはご容赦願います。」


 一言断ってから、それこそ見事な手際で具材の下ごしらえをしては、衣をつけて火の通りやタイミングを考えて熱した油の鍋に投じていく。


「……ふむ、それは鶏肉かね?」

「はい。この料理は衣がもろいので、中から脂が出る肉は不向きですが、脂身が少ないものは美味しくいただけます。」


 ただ、鶏肉は火の通し方が少し面倒ですが、と言いつつも、次々と揚げていく。そしてフェルナンの想定よりも量が多い気がする。

 揚げたてのテンプラは続けて提供されるのだが、脇によけられたテンプラが思った以上に多い気がする。

 最初は野草か、とどこか侮っていたフェルナンも、カラリと揚げることにより苦みが心地よいものになり、野の香りと歯ごたえがなんとも心地よい。


「乱暴な言い方ですが、余程の苦みとか毒がなければ、揚げることで美味しく食べることができます。

でも基本的に柔らかい部分を選んでください。」

「家に戻ったときに色々試してみよう。

 しかし……」


 調理の手が空いたのか、湯気の立つ白い粒――一部の地域で食べられる「米」を調理した物だろう――をボウル状の食器に入れているのだが、食器自体が大きいし、盛りもなかなかのもので、一人分にはちょっと見えない。

 そしてその上に、テンプラをこれでもかと盛り付けて、テンツユよりも濃い色の液体をまんべんなくかける。

 そしてそのまま手を止めずに、同じような物――大きさは二回りくらい小さいが――を作る。


「リリーさん、お待たせしました。」

「わっふー! リー姉ぇ大好きー!」

「はい、ありがとうございます。」


 ニッコリ微笑んで、揚げ鍋の前に戻り、客の様子を見て、次はどうしようか、とちょっと考えてると、コホンと咳払いが聞こえる。


「済まないがリーナ嬢、であったな。今のと同じようなものを頼んでもよろしいかな?」

「……はい、もうお客様はそれなりにお食べになっていますので、軽めのものを用意したいと思います。」


 野菜を細切りにして、ボウルに入れると、そこに水と小麦粉を投入。さっくり混ぜ合わせると、小さな塊を作って油に投入。

 それをいくつか作ったところで、米を調理したものを器に入れ、その上に今作ったテンプラのようなものを乗せて、その上から何かしらのタレをかける。


「お待たせいたしました。

 こちらテンプラの一つであるカキアゲとなります。ライスと一緒にお食べ下さい。

 また、半分ほど食べたところでダシをそそいでお食べ下さい。」

「おお……」


 刻んだ野菜がサクサクとした歯ごたえを生み、甘めのたれと柔らかい米との組み合わせが素晴らしい。そのまま全部食べてしまいたいところだが、もう一つの食べ方も気になる。

 少女から受け取ったダシというものを残り半分のカキアゲと米の中に入れる。ダシからは海の香りが感じられて、そのまま飲んでもやや薄味ながら美味しそうだ。


「ふぅむ……」


 ダシに浸かったことにより柔らかくなりほどけたカキアゲと、ダシを吸った米。それらがスルスルと喉を通っていく。

 結構な量を食べて、お腹もややきつくなってきたが、締めとしてすんなり入って、満足としか言いようがない。


「美味かった。実に美味であった。」

「お粗末さまでした。」


 フェルナンの絶賛にも、リーナは飽くまでも謙虚だ。


「……店主殿、実に料理が素晴らしかった。本日の宿を頼みたいがよろしいか?」

「は、はい! 二人部屋を用意させていただきます。

 ……リリー、もう食べ終わった?」

「は~い!」

「お部屋案内してあげて。」

「は~い!」

「それでは本日は厄介になろうとしよう。

 荷物を置いたら町の散策に行こうと思っている。

 ……夕飯も期待して良いかな?」


 そう言うと、フェルナンは魅力的なウィンクを飛ばすのであった。

お読みいただきありがとうございます


……なんか方向性を見失いつつあるんじゃないかという疑惑がw

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