表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
小ネタ集

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

110/152

姫巫女様の一日(夜)

あらすじ:

 夕飯が済むと、姫巫女にもそれなりの自由時間がある

 戦闘ヘリのブラックホーネットと出かけたはいいものの、夕飯の時間に戻ってこなかったので普通に叱られた。

 その後、夕食を済ませ、夕食後にまた少し勉強があって、今は寝る前の自由時間だ。

 とはいえ、この世界に大した娯楽は無い。そもそも、夜になると真っ暗なので、色んな油脂を使ったランプが必要だ。

 まぁ、この姫巫女の屋敷には己の欲望に忠実な某科学者が魔素マナを電力に変換できるプラントと、海水から真水を作るプラントを作成したので、エアコンや照明が完備されて生活環境が向上してしまった。水回りも充実したので、女性ばかりであるこの屋敷にはありがたいばかりだ。ただまぁ便利になったために一部の人のだらしなさに拍車がかかったんではないか、という懸念があったのかもしれないが定かではない。


「ねぇ、ホーネット?」

〈何?〉


 ベッドにうつぶせで肘をついているという、やや行儀悪い格好で羊皮紙の本を読んでいる姫巫女が、隣に鎮座しているぬいぐるみに話しかける。


「ホーネットの世界、ってどういうとこなの?」

〈ん~ 難しいなぁ。ただ何て言うか、とにかく便利かな? 魔法も魔物もいないけど、それこそお金さえあれば何でも叶うような…… ってそれはこっちでも同じかな。〉

「ホーネットみたいのもたくさんいるの?」

〈僕みたいの…… そうだね。僕よりも速かったり、たくさん人が乗れたりするのはいるかな?〉

「そう、なの?」


 ちょっとガッカリというか、残念そうな顔をする姫巫女。

 それが何を意味するのかは今一つ理解できないぬいぐるみだが、ただ事実は若干違うので、言葉を続ける。


〈二つほど補足があって、まず僕のような空飛ぶ乗り物は、速くじゃなくて、器用に飛ぶように作られているんだ。

 そして、僕みたいにお喋りできたり、色んな事ができるようなのは、多分いないかな?〉

「そうなの?!」


 姫巫女の顔がパーッと明るくなる。

 少なくとも某科学者を含めた彼らがやってきた異世界ではヘリコプター自体はありふれた乗り物だが、機体性能や、女の子相手にドギマギするAI、惑星上のレーダーに欺瞞ぎまんを見せられるほどの電子戦装備を始めとする能力は他に追従を許さない。


〈多分…… 博士が他にも僕と同じのを作ってたら分からないけど。〉

「ふ~ん…… もう一人いるなら、こっちのホーネットはずっといてほしいなぁ……」

〈えっとぉ?〉


 姫巫女がゴロンとベッドの上に仰向けに転がると、ぬいぐるみを抱え上げる。


「結構、本気。」


 人の顔色をうかがうアルゴリズムもデータも無いが、ぬいぐるみの「直感」では彼女の言葉は真実なのだろうと理解した。


〈約束は…… できないよ。〉

「うん、それでもいい。でもホーネットは可能な限り、いてくれるんでしょ?」

〈そうだね。〉


 ぐん、とぬいぐるみの視界が下がり、胸元にかき抱かれる。急な動きで自信は無ったが、彼女は満面の笑顔を浮かべていたような気がした。



『姫様~ お休み前に、シャワー浴びてくださいね~』

「は~い! ……だって。」


 外からかけられた声に姫巫女が身を起こす。ぬいぐるみが彼女の腕から抜け出すと、窓際の充電器のところまでテクテク歩いて?いく。


〈いってらっしゃ~い。〉


 少し仰け反って、手?を小さくピコピコ振るぬいぐるみ。

 自分の夜着や下着の替えを用意して(ぬいぐるみはジェントルにセンサーを窓の外に向ける)出ようとしたときに、ふと気づいて姫巫女が窓際の充電装置に足を向ける。


〈どうかした?〉


 聞かれた言葉にも何も応えずに、さわさわとぬいぐるみの表面を撫でる。某科学者の凝りに凝った設計により、ぬいぐるみの表面は防水防弾防刃バッチリで、万が一の時は盾代わりになる強靭さがある。が、全く汚れないわけじゃない。ただ丸洗いはオッケーなので、楽ではあるが。


「少し汚れてない?」

〈ん? まぁ…… あ、いや大した事ないんじゃないかな……?〉


 なんか嫌な予感がして、センサーの結果を敢えて濁すが、それはどうやらお見通しだったようで姫巫女がにまぁ、と年相応のイタズラめいた笑みを浮かべる。


「よし、洗ってあげる!」

〈へ?〉


 ひょい、と着替えとともにぬいぐるみを小脇に抱えると、スタスタと部屋を出ていく。


〈いや、ちょっと待って! その、あの、それはきっと良くない! おねーさーん! たーすーけーてー!〉


 ……そして今回はとても運が無かったホーネットぬいぐるみであった。



 余談


「ホーネット……」

〈ゴメンナサイ。データを流出しないようにするので精一杯でした。ゴメンナサイ。〉


 ずっとうわ言のようにゴメンナサイを繰り返すぬいぐるみ。不安になるくらいに小刻みに震えているので、叱ろうと思ったベルリーズだが、気の毒すぎて何も言えなくなる。

 落ち着かせるようにドライヤー(某科学者提供)でしっとり濡れている表面を乾かしながらブラシでく。最初はビクビクしていたぬいぐるみだが、徐々に落ち着いたようだ。


「今回はさすがに姫様が悪いですね。」

〈うん…… 僕も言いたくないけど、そう思う……〉


 その姫巫女は、向こうでベラリーズに髪を乾かしてもらっている。


「でも、姫様に悪気はないんですよ。」

〈それは分かってるから辛いんだよね。おねーさんたちの淑女教育に期待します。〉

「期待が重いですね。」

「ホーネットぉ!」


 そんな話をしていると、髪を乾かしてもらった姫巫女が二人の所に飛び込んでくる。


「うわ、綺麗になった上にフッカフカ~」

〈ちょっと、ディーナぁ……〉


 特に止められなかったので、ぬいぐるみを抱え上げると頬ずりする姫巫女。確かに洗って乾かしてブラッシングしたので、すっかりサラサラスベスベの手触りが戻っていた。


「今日も寝るまでお喋りしようね。」

〈夜更かしはダメだよ、もう……〉


 グチグチ言うぬいぐるみを抱えて自室に戻る姫巫女を見送ると、双子の姉妹はどちらともなく笑みを浮かべるのであった。

お読みいただきありがとうございます


あと、あけましておめでとうございます

忙しくて一週飛ばした割には大した話じゃないなーw

姫巫女の話はここでとりあえず終わりで、次の小ネタに向かいます

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ