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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
小ネタ集

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108/152

姫巫女様の一日(昼前)

あらすじ:

 海の国ワワララトの姫巫女様の午前中は勉学に励むのであった

「姫巫女の選定は前の姫巫女が役目を終えたところで、聖なる雷を受けて身体に印が刻まれるとされています。」

〈へぇ~ じゃあ、ディーナにもその「印」があるの?〉

「私はね……」


 と、服の胸元を広げようとして、ホーネット(ぬいぐるみ)と講師役のベルリーズに止められる。


〈そこならいいから!〉

「姫様ダメです!」


 え~ とどこか不満げな姫巫女を置いて、ベルリーズとぬいぐるみが頭を寄せる。


〈ベルおねーさん、手遅れかもしれないけどディーナにもう少し慎みってものをね……〉

「それに関しては返す言葉がありません。でもまだ我々は諦めるわけにはいきません。」


 悲壮な顔で返すベルリーズに、ぬいぐるみが後ろを振り返ろうとぐねりと曲がりそうになるが、そういう可動域は意外と狭かったのか途中で止める。


〈今に始まった話じゃない?〉

「ここ、私たちと姫様しかいませんので人の目を気にしないのと、姉さんがちょっと、その……」

〈ああ……〉


 姉妹であるベルリーズとベラリーズが姫巫女の付き人ではあるが、双子ながらも性格はかなり違う。見た目ほんわか癒し系の姉のベラリーズだが、実は脳筋の武闘派で基本だらしない。妹のベルリーズは武人のような鋭い目つきの割には家事万能で、今のように姫巫女の勉強の講師ができるほどの才媛である。が、高所恐怖症らしく根本のところでホーネットとは分かり合えないのかもしれない。

 そしてベラリーズのだらしなさは、年頃の少女に見せるには少々目の毒だ。本人の名誉?の為に詳細は秘すが、ホーネットぬいぐるみがこの館に常駐することになってからは、センサーを背けたくなる(実態に背けた)行為は何度も目撃している。


「あー なんか二人仲良くない?!」

「どうでしょう?」

〈どうなんだろ?〉

「もぉ!」


 同じタイミングで振り返ったので、更に姫巫女が頬を膨らます。


〈まぁまぁ、〉


 もちょもちょとぬいぐるみがテーブルの上を移動して、ぽん、と姫巫女の膝に飛び乗る。


〈僕はいつでもディーナの一番の味方のつもりだよ。〉

「!」


 本人?としては何気なく、当たり前のように言ったつもりなんだろうけど、逆にその素っ気なさが姫巫女の頬を紅潮させる。


「あ、あったりまえでしょ……」

〈ん? ディーナどうかした?〉


 恥ずかしそうに、それでもどこか嬉しそうにぬいぐるみに顔を埋めるので、ぬいぐるみ本人?も抗議のつもりか足をもちゃもちゃさせるが、あんまり効果はなさそうだ。

 そしてベルリーズが二人から見えないように小さくため息をつく。

 自分だって十代半ばくらいからずっと姫巫女付きをしていて経験は無いのだが「なんてお子様なんだろ」とついつい思ってしまった。



 まぁ、本来「姫巫女の勉強」というのはだいたい歴史とか儀式の仕方とか退屈なものと相場が決まっている。

 確かに今まではすぐに飽きてしまって、教える側もなかなか疲弊していたのだが、ぬいぐるみ(ホーネット)が同席するようになってからは少し変わった。ホーネットもこういう勉強は経験が無かったのか、一緒に聞いてて色々姫巫女やベルリーズに質問したり、姫巫女の集中が切れそうになったら声をかけたりしているのと、姫巫女は「彼」の前ではいい格好したいのか、真面目に聞くようになっているので、ベルリーズとしてはありがたい話だ。

 時折休憩を挟みながら昼くらいまで勉強は続く。


「ベルちゃ~ん、そろそろお昼~」


 太陽が南天しそうな時間――つまりは昼だ――になったときに、二人と一つ?がいる部屋のドアが開くと、ベルリーズと同じ顔ながらも、まったく別人のようにだらしないベラリーズが顔を出した。

 こうなったのも、某科学者が滞在に不便と電気を通したり真水の生成装置を設置して、姫巫女の屋敷をすっかり便利にしたらベラリーズの仕事がすっかり減ったことにある。

 それこそ今までは屋敷内の明かりの管理や水を汲んで運んだりしていたのだが、その辺の仕事が無くなったので大分暇になったようだ。とはいえ、一般の家事能力は壊滅的なのでそういうこともさせられない、となかなかの不良物件に。


〈ベラおねーさんがこうなったのは僕たちのせいか……〉

「そうですね。色々配慮していただけたのは感謝いたしますが、まさかあんな怪物を生み出してしまうとは……」

「ちょっと~?」


 ジト目で二人?を睨むベラリーズだが、それでも自己鍛錬の合間に屋敷の周りの不審者の警戒(それはぬいぐるみも行っている)をしているのは周知の事実なので、その口調は軽い。

 とはいえ、温水シャワーが設置されて、ことあるごとに使っているので、そろそろふやけてしまうんじゃないかと心配はされている。


「でもまぁ良い時間ですね。お昼にしましょうか。」

「わ~い。」

「もう、姫様も……」


 苦笑しながらも、笑顔が増えた姫巫女に、ベルリーズだけじゃなくベラリーズも心の中で感謝していた。


「ご飯♪ ご飯♪」


 御年十二歳なので正しい食事は健全な成長に必要ではあるが、年相応の幼さが出るようになったのは姫巫女としてはどうなんだろうか。

 それでもベルリーズ個人としては……


「姫様、すぐ用意しますのでお待ちくださいね。」


 女の子は笑顔の方が良いと思うのであった。

お読みいただきありがとうございます


多分、午後と夜で終わると思います。多分……

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>御年十二歳 106話で十三歳とありましたが、どちらでしょう?
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