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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
小ネタ集

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105/152

TKG

あらすじ:

 夕食後に「雄牛の角亭」に戻ってきたジェラードが頼んだものは……?


視点:三人称

※基本この章は三人称視点となります

「ただいま戻りました。」

「博士、おかえりなさいませ。」


 夕食には遅い時間に王都コンラッドに行っていたジェラードが帰ってきた。王都と、この「雄牛の角亭」の間には、転移魔法で行き来できる「転送陣」というものがあるのだが、ジェラードが一度転送に失敗したので、それ以降一度も使っていない。

 そんなわけで、戦闘ヘリのブラックホーネットで片道一時間だったわけだが、出るのが遅かったのだろう。中途半端な時間の帰還となったようだ。


「夕飯は済まされました?」


 リーナがハーブティを置きながら聞くと、ジェラードが首を振る。


「いや、いつものように逃げ帰ってきたんで、食べれず仕舞いでな。」

「まぁ。それでは何か用意いたしますね。」

「ん~ 少し遅いし、向こうでも細々食べていたんで軽くで良いんだが…… あ、卵はあるかい?」

「はい…… 分かりました。アレですね。」

「ああ、ソレで頼む。」


 謎めいた会話に聞こえるが、リーナはちゃんと理解したらしく、厨房に入っていく。


「あ~ アレ?」

「ええ、ソレです。」


 同じテーブルにいたラシェルがちょっと嫌そうな顔をする。


「あたしちょっと苦手なんだよね。」

「皆さんそういうから肩身が狭いですね。こちらでも衛生上の関係で無いですし。」

「え? ハカセ、何々?」


 ジェラードが戻ってきてから周囲をふよふよしていたリリーが食べ物の話と分かったようで興味津々の顔になる。


「ん~ こちらでは禁忌きんき――ダメと言われているものでしょうからねぇ。」

「へぇ…… 何だろ?」


 どうせすぐ出てくることだろうから、と敢えて詮索はしないようだ。


(ええ?! ちょっと待ってこれって!)


 厨房からわずかに焦ったようなアイラの声が聞こえてくるが、すぐにワゴンを押してきたリーナの後から現れる。


「お待たせいたしました。」


 と、ジェラードの前にお盆を置いてから、ライスが入ったお椀に、小鉢に入った卵を、そして他に色々小鉢に入ったものが並べられる。


「え……?」


 食欲魔人になりかけているリリーも表情を強張らせる。


「分かってますよ。」


 ジェラードが卵を割って小鉢に落とすと、箸でかき回す。


「この世界では生の卵は危険だから食べないことになってますね。」

「そうですね。それでも珍味と言うか、一部の好事家が病気を恐れずにチャレンジしているとか聞いたことが。」


 アイラが補足する。


「説明は省きますが、清潔に処理できれば生でも安全です。ただ癖が強いので、人を選ぶところはあるんですけどね。」


 溶いた卵をライスにかけると、小鉢の一つから漬物を乗せて、一緒に掻っ込む。

 いわゆる卵かけごはん、って奴だ。

 どこか引かれ気味になっているが、今回に限っては約二名ほど猛烈に反応する人がいた。


「ジェラードさん!」

「ジェラード様!」


 王都でオークショナーや情報屋をやっているマダム・バタフライことチョーコと、コンラッド王国第二王女の守護騎士団である第八騎士団所属の隠密メイドのハルカだ。

 二人とも、チーム・グリフォンとは違う時代ではあるが、異世界からの転移者で二十一世紀初頭の日本出身なので卵かけごはんはソウルフードに近い。


「「生卵食べられるんですか?!」」

「……こ、ここ(雄牛の角亭)なら大丈夫ですよ。」


 二人の詰め寄る勢いにさすがのジェラードもどこか怯えた表情を見せるが、リーナの「ではお二人の分も用意いたしますね」の言葉に覇気が失せ、すとんとジェラードとラシェルのいたテーブルに着く。


「お待たせいたしました。」


 同じようにライスと小鉢に入った卵、更に小さな瓶に小鉢に何か黒い紙状のものが……


「「海苔?!」」

「あと塩辛もあります。」

「……あたし、今こっちの世界に来て一番感動しているかもしれない。」

「私もです……」


 チョーコとハルカが感極まったように天井を見上げる。もしかしたら涙がこぼれるのを堪えているのかもしれない。


「「いただきます。」」


 ずっと天井を見ていてもしょうがないので、手を合わせてから箸を手に取る。


「チョーコさんはご飯に直接落として醤油派なんですね。」

「ハルカはよく溶いて醤油派かぁ。」


 そして完成して卵かけごはんを前に一瞬戸惑いを見せるが、意を決して茶碗を持ち上げた。一口二口食べたところで、手が止まり、一度茶碗を戻す。


「「…………」」


 そこからは無言で、どこか無表情に小鉢の漬物とか塩辛を入れては食べて、海苔で巻いては食べてを繰り返す。元々夕食後ということで量は多くなかったので、程なく食べ終わる。


「「……ごちそうさまでした。」」


 はぁ、とどこか恍惚とした表情になってチョーコとハルカが脱力したように椅子にもたれかかる。


「美味しかった……」

「はい……」

「満足いただけたようで何よりです。」


 笑顔のリーナが食器を片付けていく。

 それをジーっと見ていたアイラ・リリー・ミスキスの三人娘が、頭を突き合わせてひそひそ話し合っているし、ルビリア・サフィメラの王女姉妹も無言で目で語り合っている。


 そこにリーナの口から優しい、そして悪魔のような提案が囁かれた。


「皆さんも食べてみますか?」

およみいただきありがとうございます


ちなみに自分はジェラードのように溶いた卵に醤油を入れないで食べます

牛丼の時はちょっぴり醤油を入れる派ですがw

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― 新着の感想 ―
“よく混ぜて火が通った卵”以外は食べない派です。(単に好みの話)
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