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異世界行ってもチーム・グリフォン!2  作者: 財油 雷矢
MISSION:再び海に行こう

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色々考えこもう

あらすじ:

 姫巫女の屋敷に戻ってきた一行だが、ジェラードは身動きできない状態にされていた

 

「だから反省はしてますって。」

「じゃあ、ペナルティなの。」

「…………」


 姫巫女ちゃんの屋敷に戻ってきたんだけど、ソファに座ったジェルの左右をルビィとハルカで挟んで、動けないように腕をホールドしている。

 ルビィはルビィで嬉しそうに頭をジェルの肩に乗せている。ハルカは多少慣れてきたのか、前ほど動揺はしていないが、あちこちからの視線が気になっているようで、どこか「無」になっている。


 ……はぁ、なんかため息が出る。


「ラシェル姉様、」


 プラスチックペーパーにペンを走らせながら、サフィがあたしに声をかけてくる。


「今回のことは大変申し訳なく思っています。ジェラード様の厚意がここまでこじれたのは、我が国も自分のことのように反省すべきです。

 その、ルビィはあれでもジェラード様を慰める、というか元気づけてるつもりなんです。」


 そう言われて、もう一度そっちを見ると、なんかこー 目的と手段が入れ替わっているような気がしないでもない。


 後で思い返すと、なんでそんなことしたんだろ、と思ったんだけど、なんとなーくが頭をよぎったんだろうか。

 あ、うん、ホントにどうしてか自分でも分かってないんだけど、ハルカにちょっとどいてもらって、ジェルの隣に腰を下ろす。

 この時点でジェルがあれ? って顔をするんだが、気にせずにジェルの腕を取って反対側のルビィと同じようにもたれかかる。


「……ラシェルさん?」


 競うわけじゃないが、それでもルビィ相手なら色々勝ってると思うんで、少しは癒されて欲しい。って、それなりに恥ずかしいのよ、これでも。


 う~ん、今回はなんなんだろうね。

 来た時はまぁ軽い気持ちだったし、大したことは起きないと思っていた。ただまぁわざわざシルバーグリフォンで行ったり、そもそも装甲車のランドタイガーを連れてきたってことは、そもそも水路工事をやるつもりだったんだろな。……そっか、ワワララト王とのお話し次第、ってとこだったのかな?

 で、特に問題なかったようなので、勝手に始めたってとこだよね。そもそもジェルにしては人の生活や生命に関わる真水の確保に手を貸さない理由がない。

 それで争いが起きるって訳でもなさそうだったわけで。でもそれが今回、妙な期待を生んでしまったって事だろうか。

 まぁ、敢えて触れなかったが、ワワララト王のスカウトは凄かった。それでも言葉を選んでいたのだろうが、だが熱が入ってきたのかディスるギリギリまでになってきた。

 異様な空気を察してサフィがロイヤルスマイルで会話に入り込むが、別の国の王女様であることも忘れたかのように話し続けたので、とうとうジェルが静かにキレたわけで。

 あの時は本気でヤバかった。

 女の子のぬくもりで、とは言わないが、気を逸らすことができて良かった。あのままだったらジェルが暴れかねなかったかもしれない。……どう暴れるかはイメージできないけど、大体ろくなことにはならない気しかしない。

 逆に考えれば、いかにコンラッド王国がジェルに対して気を使っていたかが良く分かった。それこそあたしたちがいるハンブロンの町の領主さまのジェニーさんのおかげなのかもしれない。


『彼を縛ろうとしない方がいい。住みやすい環境さえ整えておけば動くことは無いし、放っておくだけで十分だよ。』


 ってくらいは王様に言ってたのかもしれないし、それが聞いてもらえるほどジェニーさんの立場が高かったのかもしれない。もう何度もそう思っているが、あたしたちが流れ着いたのがジェニーさんが領主を務めるハンブロンの町であったのは幸運だったんだろうな。

 その代わり、と言ってはなんだが、あっちこっちで女の子を助けまくって、国を救って、ついでに世界の危機までどうにかしてしまったわけだ。……う~ん、ほんとあたしは何もしてないけど、大体最前線で見ているんで相変わらず凄い経験をさせてもらったわけで。

 やっぱりジェルってすごいよね。

 いや、うん、分かっているんだ分かっては。

 そして、それこそ色んな女の子がジェルに好意を隠そうともしないので困惑している。そりゃあたしだって……


 色々考えていると、急に頭頂部に激痛が走った。


 なにごと?!


 って、思ったら、こともあろうか清らかな乙女のつむじをジェルがグリグリしていた。


「何すんのよ!」

「説明が入用ですか?」


 ジトっとした目で見られるので、現状を確認する。グリグリは止まっている。ふむ、どうやらあたしはジェルの腕をしっかりとつかんで、というか抱き着いているような状況。そのまま頭をジェルの肩に乗せて……って、あれ? 片手が空いていた、って反対側にはルビィがいなかったっけ?


「もう夕食なので、皆さん食堂です。」


 ……なぬ?


 あたしの顔を見て、聞きたいことを察してくれたようで教えてくれたが、どうも計算が合わない。それが正しいとしたら、あたしは相当な時間ぼーっと考え事をしていたようだ。

 ジェルの様子を見る限りは、そこまで置いてきぼりを喰らっていないので、今から行けば普通に間に合うだろう。

 と、いうことは、今ここにいるのはあたしとジェルだけか。


 誰も…… 見てないかな?


 一瞬食堂の方に目を向けて、こっちを伺っている人はいないようで。

 立ち上がる振りをして、抱き着いている形の腕を引く。ジェルはこういう時はあんまり動きに逆らわないのでちょっと近づいたところで……


「!」


 ……ちょっと触れるくらいのキスをしてみた。あ、いかん、これは思ったよりも恥ずかしいわ。軽い気持ちでするんじゃなかった。さすがのジェルもいきなりのことに固まっている。まぁ、誰にも見られてないから……


 と、思っていた時期もありました。

 どうやら食事中はチャージしているようで、部屋の片隅に置いてあった戦闘ヘリのブラックホーネットを模したぬいぐるみが、まるで視線を逸らすかのようにもちゃもちゃと向きを変えるのが見えた。


 うん、後で壊そう。

お読みいただきありがとうございます

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