世界を跳び越えてみよう
え~と、こぼれ話が思ったよりもネタ切れで、書き始めることに。
ただ、別のを並行して書くので、更新がのんびりになるか、不定期になります。
……頑張ります。
あらすじ:
異世界の星を旅立った高速戦艦シルバー・グリフォン。元の世界に帰る手がかりを見つけたので、世界を跳び越えてみようとする。
「さて、これから行うことを説明します。」
高速戦艦シルバーグリフォンのコクピットでジェルが説明を始める。
で、あたしはラシェル=ピュティア、十八歳。大学生兼、GUPのA級捜査補佐官。その辺のくだりはどこかにまとまっているはず。
まぁ、できるだけダイジェストで説明しよう。あたしたち銀河連合警察A級捜査官のチーム・グリフォン。メンバーは追って説明するけど、いつものように?宇宙の平和のための任務を片付けて帰っている最中に魔法陣を潜り抜けて異世界に。異世界のお姫様が召喚術師で、その子に喚ばれて、どうやらあたしがそれに応えちゃったらしい。
まぁ異世界に来たはいいんだけど、いきなり宇宙空間から大気圏内に移動した上に、山に突っ込んでシルバーグリフォンは岩の中に埋まってしまったわけで。……うん、シールドを張ったとはいえ無傷なのは色々解せないが、それは仕方がない。
発掘にも時間がかかるってことで、山から抜け出して近くの町へ。その町がハンブロンで、そこの「雄牛の角亭」にしばらく厄介になることに。さっそく、巨大な牛の魔獣?を捻り倒して、ド阿呆な貴族を撃退し、ボンボンの集まりの騎士団と喧嘩して、といつも通りの大暴れ。お姫様も含めてあっちこっち女の子を助けて、最後は「邪神」とやらを倒して、邪神がこの世界に落とそうとした星もぶっ飛ばして世界を救ってきた。
その際にシルバーグリフォンも山から発掘できたのと、さすがに力を見せすぎたので、ほとぼりが冷めるまで雲隠れするついでに、元の世界に戻ってみよう、と。
「で、聞いてましたかラシェル。」
「いや、ちょっと考え事を。」
「素直でよろしい。」
あたしの前の席でこちらを振り返ったジェル――ジェラード=ミルビット――は仕方がありませんねぇ、ともう一度説明を始める。
「簡単に言うと、ワープ中にリープをかけます。」
補足すると、両方とも超光速航行と呼ばれるものなんだけど、ワープは「空間を捻じ曲げる」でリープは「空間を跳び越える」で実際の移動距離も縮めているわけで。それ以上の詳しい原理は知らん。
で、ワープの最中は空間の「隙間」というべきワープフィールド内を航行するわけだが、見たことはないが過酷なところらしいが、その「隙間」が他の世界と繋がっているそうだ。ホントかいな。それだったらすでに……
あ、そっか。普通の宇宙船はワープかリープ、どちらかしか搭載していない、というかできない。超光速機関は、宇宙船の結構な割合の場所を占める。しかも船の質量に応じたエネルギーも必要で、設計がなかなか大変らしい。
そこでシルバーグリフォンなんだが、超光速機関が搭載できる最低限のサイズの百五十メートル級なのだが、ワープとリープ両方できる上に、反物質ジェネレーターってほぼ無限にエネルギーが得られる愉快なものを積んでいる。自称宇宙一の科学者のジェルの設計というか発明なんだけどさ。つまり、理論上可能だとしても、実際にできるのがシルバーグリフォンだけなんだろうな。
「まずは空ワープをして、ワープフィールド内で『向こうの世界』に飛ばしたマーカーを探します。」
「俺の出番か。」
「その通りです。」
ジェルの呟きに、メインパイロット席のヒューイ=ストリングが呟くと、ジェルがそれに合わせる。
あたしも話でしか聞いたことないんだけど、ワープフィールド内って基本的に電磁波による探査がほとんど利かないらしい。が、熟練のパイロットは何故かそこを見通せるらしい。で、ヒューイはチーム・グリフォンが誇るエースパイロットだ。彼の腕と目がピンチを救ったことな何度もある。
「ついでに、という言い方もアレですが、ラシェルも見ててください。もしかしたら何か見えるかもしれませんし。」
あ~ 情報多いなぁ。異世界に喚ばれたときに、例のお姫様との絡みで、何故かあたしだけ動物の言葉が分かったり、魔法が見えたりするようになったわけで。なかなかこれが重宝したわけよ。
「バックアップはリーナと…… ミスキスもできる範囲でお願いします。」
「はい。」
「りょー。」
家事万能の超絶美少女のアイリーナ=コーシャルダン――リーナちゃんと、異世界の少女ミスキスが返事をする。
「まずはやってみましょう。
グリフォン、ワープ。」
〈了解。ワープドライブ始動。空間歪曲率増加。
臨界を超えます。……ワープ・イン!〉
メインスクリーンに映っていた星空が灰褐色のどろどろとした感じの風景に変わる。何度見ても慣れないが、ジェルに言わせるとこのワープフィールド内の光景は人によって見え方が違うという。
そして異世界で散々お世話になった「眼」に切り替えると…… おおっ?! あのどろどろした感じのは変わらないのだが、そこにマーカーのように赤いラインが見える。この赤色は魔力や魔素の光か。
そしてそのラインは……
「!」
一方向に流れて収束しているように見える。もしかしてもしかすると……?
自分のコンソールからメインスクリーンにちょいちょいと線を描く。
「ジェル!」
「……ヒューイ!」
「ああ、行けそうな気がする。」
あたしの呼びかけだけで二人とも分かってくれたらしいが、まさかこのまま……?」
「グリフォン! リープ準備。準備でき次第跳ぶぞ。」
〈了解。リープドライブ暖気状態より始動。七秒後に臨界に達します!〉
メインスクリーン内の風景が揺れ始め、それに合わせてコクピットにもわずかに振動が伝わってくる。
〈三、二、一……〉
「全身座って何かに掴まれ。リープだ!」
〈臨界突破しました! リープ・イン!〉
ドン、と後ろから突かれるような感覚とともに、目の前の風景が激変……はしない。あんまり変わっていない気がするが、あたしの「眼」にはさっきまで見えた赤い光は見えなくなっていた。
……って?
〈リープ・アウト。ワープフィールド内の状況が芳しくないので、緊急ワープ・アウトします。衝撃に備えてください。〉
直後、さっきほどではないが横殴りのような振動がコクピットに走る。
〈あ痛っ。〉
「どうした?」
〈横っ面のあたりに何か当たりました。さっき飛ばしたマーカーです。損傷は……〉
ん? グリフォンが不意に言葉を切ったけど……
〈位置計測用のガイドビーコンの受信を確認しました。研究所にアクセス中…… アクセス成功! 時間経過のズレは数秒程度です。アジャストします!〉
興奮したようなグリフォンの声に、あたしの前の白い背中から緊張が抜ける。
「一発目で成功するとは、やはりラシェルの運のおかげですかね?」
「成功、って……」
え? もしかして?
「はい。どうにか我々の世界の宇宙に戻ってこられたようです。そして、」
ジェルがあたしの右側の席を振り返る。
「ようこそ異世界へ。」
その言葉を言われたミスキスが不思議そうに首を傾げた。
……あれ?
お読みいただきありがとうございます
前書きにも書きましたが、どこまでペースを上げられるかは不安ですので、今まで以上に気長にお待ちいただけるようお願いいたします