テムザからの手紙
「報告。ラナゼアで起きた理外者による殺人について、か」
城に届いた手紙を読み上げるフランダル。
外は相変わらず雪が降っているが、フランダルは窓辺の椅子でキースの淹れたコーヒーを飲んでいた。
「ジャックを送って正解だったってことだな」
一通り手紙を読み終えたフランダルは独り言をつぶやく。
報告書には、ラナゼアには新たな領主を置くことや、ゼルヴェについての警告を促す文、さらには、一連の騒動に巻き込まれたミリアやエーデンについて記されていた。
ラナゼアはイルドラにとっても重要な場所だ。その事実はクルータノとの緊張が続く限り、変わらないだろう。イルドラを治めるテムザにとって、当分の間は悩みの種となるかもしれない。
ゼルヴェの件は、今後も動向を見ていくくらいしか手立てがないだろう。しかし、フランダルとしてもいずれは解決しなければならない問題の一つだ。今回、ゼルヴェは大きな事件を起こすことなく事態が収束したわけだが、何かを企んでいることは間違いない。
ミリアやエーデンは失ったものこそ大きいものの、またいつもの暮らしを取り戻しつつあるのだという。彼らが平穏な毎日を送ることこそが、この世界にとって真に必要なものなのだ。
二人について言えば、エリックはむしろミリアを助けた側であるわけで、第三者から見れば殺す必要はなかったと思われるかもしれない。
だが、エリックが現れずにラナゼアが依然としてヘイレスの横暴に振り回されていたとしても、それが世界のあるべき姿の一つなのだとフランダルは思っている。
理の番人は正義を貫く者ではない。世界の理を守る者であらねばならないのだ。
「今後も期待してるぜ、花冠のテムザさんよ」
窓の外には、濃紺の花が蕾を膨らませていた。




