終幕
数日後、城へと戻ったフランダルのもとにドグから報告があった。
「あの後、フェベムはライムとともにホロウトーナメントに出場したそうです」
「へえ、それで結果は?」
「初戦敗退だったそうです」
これにはフランダルも笑った。飲みかけた紅茶を吹き出しそうになったほどだ。
「なんだ、最初から望みなんてなかったんじゃん」
「でも、他国とはいろいろと交流できたみたいですよ」
「なるほどねぇ。フェベムちゃんの狙いは最初からそれだったのかもな」
「あと、カサンドラの件ですが」
「ああ、どうなったんだ」
「フェベムが国に帰ってから、一対一の決闘をしたそうです」
「なに? それで、どっちが勝ったんだ?」
「フェベムです」
「まあ、それはそうか。腐っても魔王だもんな」
「決闘の日は国中が大盛り上がりでした。やっぱりあの国はそういう荒っぽいことが好きなんですね」
「でした…って、お前、観に行ってたのか」
「そりゃだって、ラダンカは僕の担当ですから」
「で、カサンドラはどうなったんだ?」
「えっと、フェベムと和解して、また側近として働くことにしたみたいです」
「フェベムは許したのか。あいつも丸くなっちまったなあ。ま、カサンドラも自分の仇を計画に利用するくらいだから、どっちもどっちか」
「どういう意味ですか?」
「カサンドラは幼い時に一族を皆殺しにされてるんだよ。その相手が俺の親戚のゼルヴェだったわけだが、今回ライムを殺そうとしたときにゼルヴェの私兵を呼び寄せてるんだ。わざわざ仇敵のところに足を運んでな。そういう意味じゃ、お互い目的を達成するために手段を選ばないってとこが似てると思わないか?」
「利害の一致ってことですね」
「そうだな。フェベムも当面の間は、カサンドラに利用価値を見出したんだろ。そんなに冷酷じゃないと思いたいがね」
「それじゃ、万事解決ということでいいんでしょうか」
「とりあえずは、な。ライムのことは引き続き監視していかなきゃならないし、お前の仕事は増えたけどな」
「望むところです。それに、あのライムって人、結構気が合うような気がするんです」
「なに、お前、話したの?」
「はい。城内に潜伏中に、少し」
「なーにやってんだよ」
フランダルは呆れ顔だったが、ドグの表情は清々しかった。
それを見たフランダルは手をひらひらと振った。
「ま、いいさ。これからも引き続き頼むな、ドグ」
「はい」
ドグが部屋から去ったあとも、フランダルはしばらく窓の外を見ていた。
――ドグもずっと一人だったからな。いい友達ができたってとこか。
そんなことを思って、一人でに笑うフランダルであった。
◇ ◇ ◇
「理外の者など、久々に聞いた話だな」
長い白髪をなびかせながら、色白の男はフッと微笑んだ。
ロウソクの明かりで仄かに照らされた室内で、静かにワインの香りを愉しむ。
「理外者は私の専門ではないが・・・。なるほど、面白そうな話だ。従弟は元気にしているようだな…」
男は手の平を上にして、そこにフッと息を吹きかけた。すると、口から吐かれた青白い炎が手の上で踊りだす。
やがて炎はゆらゆらと形を変えながら、ある人物の顔を映し出した。
「フランダル…。久々に、このゼルヴェが挨拶をしてやろう」
ゼルヴェは炎を握りつぶすと、室内のロウソクの明かりが一斉に消え、彼の気配も闇に紛れて消えたのだった。
ラダンカのお話はここでひとまず終わりになります。
今後は場所を変えて、各地で活躍している理の番人を紹介しながら進めていくつもりです。
もちろん、フランダルやドグ、そしてフェベムたちも登場する予定ですので、楽しみにしていてください!




