ライムの選択
「さて、あいつが帰ってくる前に、さっさと話を済ませるとするか」
茂みになかに隠れていたフランダルは、葉っぱを払いながらそう言った。
「ライム。決意は固まったか?」
「僕は――」
ライムはそう言って、力強くフェベムを見た。
「僕はフェベムさんについていきます。僕には、助けてもらった恩があるから。竜化の力は使いません。自分の力で、人と魔物とを繋ぐ架け橋になりたいです」
「ライム…」
フェベムが目に涙を浮かべる。
「いい答えだ、ライム。お前がそう決めたなら、俺たちはこれ以上何も言わない。自分の道を進むといいさ」
フランダルは明るい口調で言った。
「さ、退散するぞ、ドグ。仕事は終わりだ」
踵を返して去ろうとしたフランダルを、フェベムは呼び止めた。
「待つのじゃ」
「なんだ?」
「なぜライムの隠れていた部屋がわかったのじゃ? あの部屋はわしやジュード、それにカサンドラしか知らぬはずじゃが」
「なんだ、そんなことか」
フランダルは口元に笑みを湛えた。
「簡単な話だ。俺のいるスレイド城と構造が似ていたからだよ。もし自分が何かを隠すならどこかって考えたんだ。それをドグに伝えた。もしかして、設計者は同じ人物なのかもな」
「――そうか。まあ、遅かれ早かれ、いずれは気が付かれていたのであろう。にしても、じゃ。よもやカサンドラの恨みがあそこまでとは。思いもせなんだ」
「部下の胸中を見誤ったな。ジュードもそれを心配していたよ」
「なに!? ジュードと話したのか?」
「ああ。あんたらが出発した、少し後でな。カサンドラが胸に一物抱えていたことは、ずいぶんと前から何となく察していたみたいだぜ。後のことをよろしくとかって頼まれちまったけど、これでよかったのかねぇ」
「あやつ…、素知らぬ振りして余計なことを…」
「ま、おかげでカサンドラちゃんの暴挙を止められたんだ。その点は、よかったんじゃないか?」
「ぬう…。ジュードとはまた帰って離さねばな。カサンドラについては、こちらでなんとかする。いらぬ心配をかけたようじゃ。すまなかったの」
「あらあら、最初の態度とは打って変わって、ずいぶんとしおらしいじゃないの」
「黙れ。わしとてお主らに心を許したわけではない。じゃが、今回のことで学んだこともたくさんある。それは、胸に留め置かねばならぬと思っておるだけじゃ」
「さて、それじゃ、後はお好きにどうぞ。こっちもちっとばかし介入しすぎたんでね。ここらでさっさと退散することにするよ」
「うむ」
フランダルはドグとともに、森の中へと姿を消していった。
「理の王…。なんだか不思議な存在ですね…」
ライムが言うと、フェベムは鼻を鳴らした。
「ふん、まったく、ろくでもない連中じゃ。好き勝手に場を荒らしおって」
その言葉とは裏腹に、フェベムの表情は明るかった。




