招雷のドグ・ラクラ
「まずは目障りな貴様から始末してやるッ!!」
言うが早いか、カサンドラはまるで地を這うようにしてフランダルに向かってきた。
片手に暗殺用の短剣を握りしめた彼女は、這っているのか浮いているのか、いずれにせよものすごいスピードで向かってくる。
が、フランダルは微動だにしない。それどころか、口元に笑みを浮かべて余裕さえ感じられる。
カサンドラがフランダルと接触する寸前、突如として辺りに雷鳴が轟いた。眩いばかりの光とともにフランダルの前に現れたのは、巨大な石の剣を背負ったドグだった。
ドグは出現と同時にカサンドラの短剣を持っている手首を握り、動きを封じ込めた。
「あの人は――」
フェベムの傍らでライムが呟く。
「知っておるのか?」
「ええと、城の中で会いました。僕のいる部屋に来て、少し話したんです」
「なんじゃと…?」
城の中で会った、だと…? とすれば、ライムの存在は最初からあちらに筒抜けで、どこで何をしているかまでフランダルは知っていたということか。
「珍しい魔物だなとは思ったんですが、違ったんですね…」
「ライムが気が付かないのは仕方がないとはいえ、あやつの潜入にわしまで気が付かんとは…。不甲斐ないものじゃ」
そんな二人の会話をよそに、カサンドラとドグは激しくぶつかり合う。
「おいおい、そんなに怒らなくても、俺たちはあんたの夢まで潰すつもりはないぜ?」
取っ組み合うドグの後ろからフランダルが言う。
「黙れ! 貴様ら全員、皆殺しにしてやる!」
パッとドグから距離をとったカサンドラは、大きく息を吸った。
「離れて。ここじゃ守り切れない」
ドグがすかさずフランダルに伝える。
次にカサンドラが吐いた息は、高熱の熱線となってドグに向かってきた。
背負っていた分厚い石の剣でそれを受け止めるドグ。
熱線が途切れた隙を見計らって、ドグは自身の体を稲妻へと変化させて空高く飛翔した。
「よく見ておくがよい。あれが招雷のドグ・ラクラの異名持つ男の妙技じゃ」
フェベムは空を見上げたままライムに言う。
空中で一度姿を人へと変えたドグは、狙いを定めると再び稲妻へと変わってカサンドラに突っ込んだ。
凄まじい轟音とともに、ドグが落雷する。
衝撃でカサンドラは吹き飛ばされ、木へと激しく体を打ち付けた。
「クッ…。これが理外の者と呼ばれる異能力者の力か…」
呻きながらも体勢を立て直したカサンドラは、森の闇へと姿を消した。




