イルドラの南端、トルネリアの入り口
翌朝、早々に目覚めたフェベムとライムは、トルネリア目指してイルドラの西端を南下していた。
イルドラはラダンカと比べれば自然豊かだ。眺めのいい丘陵が延々と続き、青い空とのコントラストが美しい。トルネリアは打って変わって国土の大半を森林と湖が占めている。イルドラから南に下っていき、地平線にこんもりとした黒い塊が見えたら、トルネリアが近づいてきた証拠だ。
今回、イルドラの東方面に用はないが、そこは西側と違って広大な湿地が広がっている。泥と水溜まりでまともに歩くことすらままならないような、住みにくい土地だ。年中灼熱地獄のラダンカと比べれば、マシな方だろうが。
吹き抜ける風を肌に感じながら、二人は歩みを進めていた。日差しも風が心地よい程度には暖かい。
やがて見えてきた前方の黒い塊を見て、フェベムは安堵した。
「あれじゃ! ようやく見えたの。トルネリアの目印じゃ」
前もってジュードに教えられた通りだ。
「このまま進めば、日暮れまでには森の端っこに着けそうですね」
ライムも嬉しそうだ。
大したトラブルもなく、ライムの言った通り二人は日が落ちきる前に森の入り口に到着した。
「森に入れば、すぐに湖に行き着くはずじゃ。トルネリアのほとんどは湖じゃからの。あとは、その湖沿いに歩いていけば、目的地に着くじゃろう」
「その、まだ聞いてなかったですけど、トーナメントはどんな場所で行われるんですか?」
「ああ、そういえば言ってなかったの。トーナメント開催国は持ち回りなんじゃが、トルネリアはタリアステン宮殿という場所で行われる。湖に面した綺麗な宮殿でのう。トーナメント中は夜中明かりが灯され、それはそれは美しいのじゃ」
「行ったことがあるんですか?」
「大昔に、一度だけの。まだ人と魔物が争いあっておらなんだ時代じゃ」
「へえ・・・」
ライムは何か言いたげだったが、ついに口を開くことはなかった。
森に入ってから暗くなってしまうと、道はおろか方角すらわからなくなってしまうということで、二人は森の端で野営することにした。
「国境警備隊が来ても、昨日のようなゼルヴェの手先でなければ大丈夫であろう。ここらであやつら
が大きな顔をしてうろつけるとは思えんからの」
それがフェベムの見解だった。
一日歩き詰めで疲労困憊の二人は、道中で採った野菜や虫などで食事を済ませ、早々と床に就いた。




