スタームルガー・シングルシックス
ロックアイスがカランと音を立ててグラスの中で回った。
汗ばんだ指がトリガーをゆっくりと、それでいて力強く引き絞る。
リボルバーがゆっくりと回転し、撃鉄が微かにきしみながら後ろに倒れていく。
そのきしみが、こめかみにあてがった鉄の筒から伝わってくる。
男たちは固唾をのみ俺を見守る。
カチ...
打金はただただむなしく虚空をたたいた。
俺はそれをゆっくりと下ろし、テーブルの真ん中に置いた。
向かいの男は震える手でそれを握るとゆっくりと自分の頭に銃口を向けた。
男はゆっくりと引き金を引いた。
これが6発目。これが最後。
撃鉄は弾のけつを思いっきりたたき、雷管がはじけた。
男は脳みそを床にぶちまけながら力なく倒れた。
俺はテーブルに置かれた財布にゆっくりと手を伸ばした。
中には多少の小銭が入っている。
俺はそれをマスターに放り投げ、ロックグラスを手に持ったままバーを出た。
何もない荒野の街。
干からびた風が泣くでも喜ぶでもなく無感情に砂埃をたてる。
ただそれでもこの風と同じ匂いが、焦げた樽の匂いが染みついたバーボンは格別だ。
小麦色のグラスを俺は空に掲げた。
今日はあの男に乾杯だ。
名すら知らないさっきの男に。
たかがグラス一杯の酒のために命を張り合ったあの男に。